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渋谷ピカデリーで 『アレキサンダー』、 つづけて隣のシネセゾンで 『エメラルド・カウボーイ』 を観る。 たまたま劇場同士が隣り合わせで、 公開日もいっしょだったというだけで、 一見はなんのつながりもない2作品のような感じだが、 これが“伝説”というキーワードを想起してみると、 はからずも両者には興味深い共通点が見えてくる。 つまり、前者は歴史上の“伝説”的人物が主人公の映画で、 後者は生き様そのものがもはや“伝説”であり、 しかも今現在もその伝説をリアルに生きているというモノ凄い男が主人公、という点だ。 そして両者のなかで2人の“伝説の男”は、途轍もなく人間臭い人物として熱く描かれている。 鬼才オリバー・ストーン監督の最新作 『アレキサンダー』 は、 『グラディエーター』 『パトリオット』 『トロイ』 『キング・アーサー』 とつづく、 様式美溢れる史実映画の潮流のなかで企画されたであろう1本とは言え、 英雄的主人公の内面に肉薄する、 という点で明らかにほかと一線を画した骨太な歴史ドラマだ。 弱冠20歳でマケドニアの王となり、 その後たったの10年かそこらで世界征服を果たしたこの稀代の若き英雄を、 ストーンは母親の偏愛に弄ばれ、苛酷な運命に弄ばれ、 そして生涯トラウマに弄ばれ続けた、“屈折した征服者”として肉厚に描いてゆく。 映画に限らず歴史もののなによりの醍醐味は、 いかなる解釈をも許容するその時間的な懐の深さだ。 そしてその時間的な懐の深さは、我々の想像力の中枢を絶え間なく刺激し、 それが映像や文章と直結したとき、はじめて途轍もない娯楽的快感をもたらしてくれる。 歴史上で“英雄”と謳われた名高い人物のそのほとんどは“征服者”である―。 というストーン流の歴史観はある意味正論だとボクは思う。 つまりそれは、戦争はいかなる大儀があっても、 けっきょくは侵略でしかないという極論的政治概念にも結びつく。 ストーンが飽くことなく東方に向かって侵略遠征を進めてゆくアレキサンダーの跡を、 身も心も疲弊させながら従ってゆく何万という古(いにしえ)の兵士たちの姿に、 今現在も中東イラクで終わりの見えない任務に就き、 疲弊し切っているだろうアメリカ兵たちの姿をダブらせて描いているのは明らかだ。 これまで、『JFK』 や 『ニクソン』 といった現代史劇で、 真偽の行方や解釈の方法に焦点が集まるために批判されがちだったストーンの強引さは、 今回のような映画にこそ発揮されるべき類稀なバイタリティ。 総製作費200億円というゴリ押し感からくる、 セット撮影の即物的安っぽさはどうしても否めないものの、 反対に数ヵ国にわたって行われたロケーションによる数々の大戦闘シーンは、 『ロード・オブ・ザ・リング』 3部作をも凌駕する壮大さで思わず息を呑む。 また、幸か不幸か一見役不足としか思えないコリン・ファレルの中途半端な存在感も、 人間としては最期まで未熟だったアレキサンダーを彫り下げる要素としてうまく機能している。 一方、『エメラルド・カウボーイ』 は、 1970年代に単身南米のコロンビアに渡り、 現在では鉱山、輸出会社、警備会社を経営して、 世界のエメラルド・ビジネス界のトップに君臨する男、 “南米で成功した最も有名な日本人”、 早田英志氏の半生を描いた風変わりなドキュメンタリー。 ただドキュメンタリーといっても、 早田氏の若い頃をコロンビア(?)の俳優(多分)が演じ、 1994年から今現在までの早田氏を氏本人が演じるというユニークな構成になっているので、 どちらかと言えばこれは実録ドラマの範疇に入る作品だ。 クレジットを見ればわかるとおり、 “製作総指揮・監督・脚本・主演:早田英志”となっているので、 予備知識がないとかの大神源太(確か)を思い出して、 大金持ちが自己顕示欲を発散させただけの勘違い系俺様映画かと思ってしまうが、 それは、映画製作の途中でハリウッドから招いたスタッフが南米怖ろしと逃げてしまったため。 映画自体に鼻につくような傲慢さは微塵も感じなかった。 ただ面白いのは、若き早田氏を演じているのが南米人という中途半端さどころか、 演出から演技から何から何までが素人丸出しで、 とても1本の映画としてまともに観ることなどできない壮大な失敗作であるにもかかわらず、 ラストには不思議と心地好い映画的快感をもたらしてくれるところだ。 その理由はおそらく、個人的なことだが、 これを観る少し前に、氏がゲスト出演したラジオ番組で映画の裏話を聴いていたから。 訥々と、しかし熱っぽくこれまでの激動の半生を語って聞かせる早田氏には、 成功した者の奢りなどこれっぽっちもなく、 そこにはただ、いつまでも夢を追いつづける純粋無垢な“冒険者”の姿だけがあった。 劇中で、危険な仕事と平穏な家庭との両立がうまくいかずに焦りを隠せない早田氏に、 ボクは前に観たアレキサンダーの苦悩を重ねて見たりもしたのだが、 家族、仲間、そしてコロンビアのエメラルド・ゾーンを心から愛してやまない氏の人生には、 悲愴感のカケラもない、それこそエメラルドの如き豊潤な輝きを感じボクは心底羨ましかった。 生い立ちのトラウマから逃れるために冒険をつづけた古代の英雄と、 夢を追って今なお飽くなき冒険をつづける現代の英雄……。 アレキサンダーと早田英志。 人生とは謎だ。 |
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