瓶詰めの映画地獄 〜断罪!断罪!また断罪!!〜

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help リーダーに追加 RSS “80年代バンド・ブーム”世代(じゃなくても)大必見! 『リンダリンダリンダ』!

<<   作成日時 : 2005/08/09 20:58   >>

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画像基本的にボクは何かにつけて未練がましい男なので、
いわゆる“たら・れば”、
「もしもあの時にああしていたら…」だとか、
「もしもあの頃に戻ることができれば…」なんてことを、
それこそ呪詛のように思い描いては
退屈な時間を塗り潰すことがよくあるんだけど、
高校時代にひとつだけ悔いが残っているとしたらボクは、
(というより30何年ひたすら悔いしか残ってないけど)
バンドがやりたかった…。
ちなみにこれだけアホみたいに映画を観ているボクだけど、
自分で映画を撮りたいと思ったことは、
実は生まれてこの方一度もない。
準備とかいろいろメンド臭そうだし、人間関係にも相当気を遣いそうだし、
何よりボクは惚れっぽくその場その場で必ず誰かのことを好きになるので、きっと
スタッフと言わず女優と言わず恋慕してひとりで勝手にギクシャクして憔悴するのは目に見えている。
ボクみたいなタイプは、今のようにひとりで何かを書くといった作業の方が限りなく性に合っているんだ(多分)。
観て、文句つける。映画はこれに限る。

で、話は戻って
ボクが高校時代を過ごした80年代のドン詰まりは空前の“バンド・ブーム”が日本中を席巻していた。
ボクの暮らしていた人口6万5千人の岐阜の片田舎にも当然その波は怒涛のように押し寄せてきて、
右を向けば“BOOWY”(真ん中の“O”に斜め線)、左を向けば“ザ・ブルー・ハーツ”といった具合に、
誰もがこぞってそれこそ雨後のタケノコのようにバンドを組んで遊んでいたんだけど、
ただ、その頃から若干ヒネクレていたボクにとって何より不幸だったのは、右を向いても左を向いても、
ホントにみんなBOOWYとブルー・ハーツのどっちかしかやりたがらないという、
二者択一ぐらいしか選択肢を持とうとしない片田舎的凡庸性がブームに適用されてしまっていたこと…。
(まぁそのふたつ以外をやってるヤツもいるにはいたけど…ギリギリ“BUCK-TICK”とか?)
もちろんボクだって、BOOWYもブルー・ハーツもカッコいいと思って当時耳にしてはいたんだけど、
そのあまりにストレートなカッコよさが逆にボクにとってはどこか馴染めなくて、
結果その両者にばかり傾倒してゆく周りの同級生たちとも、しだいに温度差が開いていった、というわけ。
じゃあ、その頃のボクはいったい何を聴いていたのかというと、
これが何を隠そう、大槻ケンヂが演っていた、「筋肉少女帯」という名のバンド!
このバンドの名前を口に出すと、たいていの人は
「日本印度化計画」とか、せいぜい「元祖高木ブー伝説」ぐらいしか認知していないのがフツーなんだけど、
“筋少”(略して)は、そんなインパクトだけでポッと出の色ものバンドなんかでは断じてなかった。例えば、
当時ボクがそれこそCDが溶けるかというぐらい何100回となく繰り返し聴いていたある曲の歌詞は、こんなだ。

 僕は立ち止まった 国境の橋の上で
 振り向いたなら負けさ 生ける亡者の街を
 愛していた君も 時に嫌いな君も
 降るように舞う蝶々の 紫の毒に殺られた
 リックサックに仔猫を詰めて 夜明け前に家を出た
 鉄橋の上 妙に静かで 歩み出すと震えたから

青春期のストレートな感情とも違う、かと言ってビジュアル系の幼稚な夢心地とも違う、
そんな大槻ケンヂが誰にも真似のできない独特の高音ヴォーカルでシャウトする歌詞の世界に、
当時、バカ話のできる友人は何人かいても、どこかで心を開き切ることができず、
家にも、学校の教室にも、もちろん町の片隅にも安らげる場所を見出せないまま、
朝まで深夜ラジオを聴いているか、それとも
ひと言も口を利いたことのないクラスの女子をネタにオナニーばかりしているかのどっちかだったボクは、
まるで自分の心にポッカリ空いている穴の奥を見ているような気がして(それがボクの、“十七歳の風景”)、
周りの同級生がやれギターだ、やれベースだ、やれドラムだと騒いでいるのを横目に、
しだいに筋少を始めその頃のバンドたちの紡ぎ出す“歌詞”の世界に執着を見せるようになっていった。
その頃ボクが筋少以外でよく聴いていたのは、
人間椅子、LA-PPISCH(レピッシュ)、ユニコーン、エレファント・カシマシ、BO GUMBOS(ボ・ガンボス)、
あと忘れたけど(“]”や“たま”なんかは、さほど好きじゃなかった)、
そうしてボクはみんなが楽器を始めるように歌詞というか「詩」、みたいなものをやたらと書き始めて、
そしてその頃はそれなりに真っ白なノートを埋めてゆく自分のことばの綴り具合を見て、
「も、もしかしたら俺は、中原中也の生まれ変わりなのかもしれない…」
なんてバカなことを考えては自己陶酔していたものなんだけど、それから数年後、
若かりし10代を振り返ってみようとそのノートを読み返して、しかし瞬間お湯が沸くほど頬を赤らめて以来、
今日に至るまで、一度もそのノートを開いたことはない…。まぁそんなもんだ。

とにかく、あの頃活躍していたバンドたちの曲の歌詞は、
今現在一線で歌っているミュージシャンたちのどんな歌詞より
もっともっと強烈で個性的でパワーとそして何よりリビドーに充ちていた。
上記の文章を読むと、まるでボクはこの映画のネタになっているブルー・ハーツは全然好きじゃなかった、
みたいな感じに受け取れるけど、もちろんそんなことはない。
ヒロトが彼独特の前屈姿勢で朗々と歌っていたこの曲は、ボクたちの世代の、永遠の青春歌だ。
「青空」。

 生まれた所や 皮膚や 目の色で
 いったいこの僕の 何がわかるというのだろう
 運転手さんそのバスに 僕も乗っけてくれないか
 行き先なら どこでもいい
 こんなはずじゃなかっただろう 歴史が僕を問い詰める
 眩しいほど 青い空の真下で

この曲は、間違いなくあの頃に10代を過ごしたボクたち世代の誇りだし、
そしてこの曲を10代の頃に聴けたボクは、少しだけほかの世代よりも、幸せだと思っている。

とまぁ30歳も過ぎると回顧話もどんどん長くなって、
案の定ボクが10代の頃を振り返るとこんな感じで陰気臭くなってしまうんだけど(でもみんなそうじゃない?)、
そんなロックとオナニーしか語ることのないシケた高校時代を送っていたボクみたいな男でも、
あの頃の心の機微に胸がキュンとして(この“胸キュン”ていう死語も、思い返せば80年代語)、
からだの芯が熱くなって、そして最後は涙が溢れて止まらなくなるこの夏いちばんのおススメ映画がこの、
『リンダリンダリンダ』!

高校生活最後の文化祭の直前に、
ちょっとした人間関係の行き違いでバンド崩壊のピンチに陥った女子高生3人が、
韓国人留学生のソン(ペ・ドゥナ)をヴォーカルに迎え入れて練習を始める。
やがて、急場凌ぎで選んだ「THE BLUE HEARTS」のコピーに励む4人の間に、
たどたどしくも固い絆が芽生え始めて…。
何よりこの映画が素晴らしいのは、
一見ブルー・ハーツの名曲「リンダリンダ」をキーワードに
観客それぞれの“かつての青春”をフラッシュバックさせるかのような体をとりながら、
服装もことば遣いもユルいけど、しかし実際はいつの時代と変わることなく
それなりに必死で悩んで毎日を一生懸命過ごしている今どきの10代のリアルな青春を描いて、
単なる懐古趣味やそれに伴うヘタな感傷(要するに、ボクの文章みたいな)だけでは終わらない、
本当の意味で普遍的な青春像を目指して作られていること。
つまり、この映画にとって「リンダリンダ」のメロディはひとつの重要な映画的“効果”だけど、
だからと言って映画がこの曲に対して必要以上に感情移入するということが決してないのだ。
そこに生まれる爽快さがあるからこそ、本作の持つ映画的感情は、誰の胸にもやさしく沁み込んでゆく。
こういういい意味で軽量級の青春映画は、フツーにあるようでいて実は意外と少ない。
そしてもちろん、この映画の最大のポイントは、
ひょんなきっかけでバンドのヴォーカルを務めることになった“韓流”留学生ソンを演じたペ・ドゥナの存在。
愛らしく超天然で、その一挙手一投足がおかしくてたまらない彼女の、
事態をどこか外から見ているような視線とフワフワとした曖昧な立ち位置が、
時に観る者をグイグイと引っ張り、時に登場人物たちの心情と一定の距離を置かせて、
絶妙なバランスと安定感(矛盾した言い方だけど)でもってドラマを見守らせる“場”を提供してくれる。
ドゥナが主演の韓国映画をボクは1本も観たことがないけど(ほえる犬が、ナントカだっけ?)、
彼女の年齢相応の真の魅力と“間”の才能を最大限に発揮させたのは、
もしかしたら本作が初めてなんじゃないだろうか…?
そしてラスト近くに訪れる、この映画最大の肝。
ソンとギターの恵(香椎由宇)が洗面台の前で顔を洗いながら、
お互いのことばの意味に首を傾げつつも気持ちを通い合わせる場面…。
この場面にそこはかとなく漂うもどかしさと気恥ずかしくもこみ上げる感情こそ青春の機微じゃないか!
『リアリズムの宿』 や 『くりいむレモン』 などの俊英、山下敦弘監督、コレまさに天才の仕事ぶり。
これまで山下監督のことをとくに気にしたことはなく、
上記の2本も本作を観るというんで初めて観たアレだったんだけど( 『くりいむレモン』 もいい!)、
青春ドラマとしてもライトなスポ根ドラマとしても、
これは 『ウォーターボーイズ』 や 『スウィングガールズ』 より断然完成度は上だし、
脚本家としても演出家としても、山下監督はクドカンよりも遥かにレベルが上である。

映画の大団円、
キアロスタミの隠れた名作 『トラベラー』 を彷彿とさせるホロ苦くなりそうな展開を一瞬見せながら、
カーブの緩い紆余曲折の末に4人が体育館のステージに立ち、
そしてソンが「リンダリンダ」の冒頭のフレーズを歌い出したとき、
ボクは、恥ずかしながら溢れ出る涙でスクリーンが見えなくなってしまった…。
決して輝かしいわけでも勇ましいわけでもない彼女たち4人の姿を見ながら、
誇れるものなど何ひとつなかったけど、「俺の高校3年間も、あれはあれでよかったよな…」と、
胸が詰まるのを抑えることができなかった…。

本作は普遍的な青春像云々と書きながら、
もしかするとこれは個人個人の10代体験によって大きく感想が変わってくる映画なのかもしれない。
しかし! そんなこともうどうだっていい!

とにかく! 世代を問わず大必見! 2005年夏、すべてを抑えて特・大・級の傑作!
『リンダリンダリンダ』! 絶対に、ゼッタイに観逃すな!

ここ最近は、カラオケなんて年に1回行くか行かないかぐらいだけど、
もしも今度行くことがあったら、生まれて初めて、「リンダリンダ」を歌ってみようかな、
そう思っている。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
『リンダ リンダ リンダ』〜子猫の胎動〜
『リンダ リンダ リンダ』 &nbsp; 公式サイト &nbsp; 監督:山下敦弘出演:ペ・ドゥナ 前田亜季 香椎由宇 関根史織 &nbsp; 【あらすじ】高校生活最後の文化祭の直前になってバンドメンバーの萠が指を骨折してしまい、代役を立てる立てない、演奏をするしないのもん ...続きを見る
Swing des Spoutniks
2005/08/13 08:36

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 こんばんは、この映画は学校の掲示板にも紹介されてたので観たいと思っていた作品でした。この映画も同じ10代の友だちと観てきましたが、思っていた以上に感動しました。これは彼ら彼女らも同じのようで、かなり満足興奮していました。
 僕はバンドには全く興味は無かったですが、とても観ていて気持ちのよい映画でした。あと、いい曲だなぁって。。
 公開時期も夏休みでよかったと思います。今年の学園祭では彼女達のような体験が、この映画を観た同年代の人達にできたらなぁって帰りに思いました。とにかく観てない方は観に行ってください。では、また。
トン
2005/08/11 22:05
3歳と6歳の愛する姪っ子以外平成生まれの知り合いがいないので、
こういうリアルな10代の反応を知ることができてとてもうれしいです。
「リンダリンダ」の歌詞に10代の心情を投影させる、
みたいなありがちな“ウザったさ”のなかったところが、
この映画のいちばんのミソだと思いました。
口コミを含めて、ロング・ラン上映は確実でしょう。
栗本 東樹
2005/08/12 02:25