瓶詰めの映画地獄 〜断罪!断罪!また断罪!!〜

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help リーダーに追加 RSS 今、ポルノが女にウケる理由〈ワケ〉

<<   作成日時 : 2006/05/25 19:30   >>

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身なりのいい女が夜の街を歩いている。
仕事帰りだろうか。駅の改札を抜けて、女は電車に乗る。
開閉ドアの窓から外を眺めている彼女の表情はどこか楽しげだ。男、か?
先に待ち受ける“女の悦び”に、彼女は心ときめかせているようにも見える。
やがて、彼女の目的地らしい駅に電車が到着する。開いたドア上部の文字盤の駅名は……、
“東中野”。改札を出た彼女は、とある駅前ビルの地下へと降りてゆく……。

実はコレ、我ら中野区民が誇る優良ミニシアター、ポレポレ東中野で今レイト公開されている、
「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE Vol.1」という企画上映の劇場予告篇。
演じているのは、フライヤーのモデル同様、女優の佐々木ユメカ。
上映される作品を1コマも流さずに企画の核心を突いていてシンプルだけど妙に納得の予告。
今や「ピンク映画」は、仕事帰りに女性が一人でフラッと観れるような“ファッション”て意味だ。

今、「愛の寓話」(東京学参刊)という、
1971年から1988年までつづいた、「日活ロマンポルノ」の歴史を、
関係者の多彩なインタビューを交えながら総括した本を読んでいるんだけど、
写真も豊富にポルノを1本も観たことがないという人でも読みやすくなっていて非常に面白い。
装丁なんかも書店で女の人が手に取りやすいようシックな感じに凝っている。
ボクもこの壮大な“プログラム・ピクチャー”の歴史については全然詳しくないから、
ビデオ・DVD鑑賞や劇場鑑賞に併せて興味主体で読み始めたワケなんだけれど、
今、女性に密かにかつてのポルノやピンク映画が人気というのは、どうやら本当のことらしい。
確かに、ポレポレや、後述するラピュタ阿佐ヶ谷やシネマアートン下北沢などの劇場へ行くと、
一人、もしくは友だち同士、もしくは彼氏を連れて観に来ている女の人って多いし、
かかるのがピンク映画だからといって、劇場の雰囲気は一般のソレと変わりない。
まぁそりゃ専門館じゃないから、男にしても“映画が好きで”来ている人が多いからだろうけど、
とにかくかつてコレだけは“男の世界”だったというポルノが女性に人気という背景には、
やはり有り体とは言え、“女がたくましくなった”という現代事情が要因としてあると思う。

70年代に入り、どうして大手映画会社の「日活」が、ロマンポルノに路線変更したかと言えば、
それは当然、東京オリンピック、そして大阪万博を経て家庭用テレビが爆発的に普及し、
その煽りを喰って“娯楽”としての「映画」の需要が激減していった影響なんだけど、
じゃあどうしてそこでセックス映画なのかと言えば、やっぱり映画が“男の娯楽”だったからだ。
今どきこんなことを言い切ったらそれこそフェミニストにブッ飛ばされそうな気がするが、
だってそうなんだモン、仕方がない。それ以外に明確な理由があるなら教えてほしい。

とにかくある一側面で映画はそうやって活路を見出し文化としての体裁を保ってゆくんだけど、
それが今度は80年代になって、ビデオの普及とともにAV(アダルトビデオ)が誕生して、
やがてポルノの存在意義は薄れてゆき、世にバブルの華も咲き、女の人は強くなっていった。
70年代前半生まれのボクなんかはもう“映画はビデオで見る”という時代の走りの世代だし、
性への興味はAVで充たしてゆくのが当然で、もちろん当時ポルノなんて見たことはなかった。

しかし、“ビデオ文化の波及によるサブカルチャーの細分化”という80年代を経過して、
初頭にバブル崩壊が起こった90年代は、あらゆる価値観が多様化する時代になった。
ユーザーを求めてAVがどんどん過激になってゆく一方で、
一部の「ピンク映画」が「一般映画」として認知されるようになったのだ。
そうして今も活躍しているのが、瀬々敬久監督などのいわゆる“ピンク四天王”であり、
かつてロマンポルノの枠のなかで、映画が斜陽になっても夢を捨てずに腕を磨き続け、
どんどんメジャーになっていったのが、周防正行監督や森田芳光監督、黒沢清監督ってワケ。
その流れは今もつづいていて、昨今のピンク映画流行りもその延長と見ていいだろう。

なんか全然、「ポルノが女にウケる理由」になってないな。
かなり端折って書いてきたけど、とにかく時代に伴い映像メディアが過激化・多様化するなか、
見渡せば、巷には当たり前のように“ヘア・ヌード”が溢れるようなうれしい時代になり、
インターネットの普及でHな映像を見るのにビデオ屋へ出かける時代でさえもなくなり、
今やボクらは、セックスというものにさして重みや後ろめたさを感じなくなってきている。
時代の性に対するアプローチが軽いから初体験の低年齢化だって促進される(クソッ)。

ところがだ。時代はめぐる、時代は回帰する。
最近、映画のみならずに「昭和」がブームで、
それは要するに、“失われつつあるものを大切にしていこう”という考えを、
ある種の“ファッション”として転化したものだとボクは思っているんだけど、
それとある意味同じように、軽々しくなってしまったセックスというものに対する“趣”を、
軽さは現代人のステイタスとしてそのままに、
手堅く高尚なものにできないかという無意識下の活動によってフィーチャーされつつあるのが、
セックスが、実は“表現芸術”として成立しているポルノやピンク映画じゃないかって思うワケ。

なんでも最近は、
素人の一般女性が何万円も金を出して“自分”のヘア・ヌード写真集を作るのだという。
まさかと思っていた“叶美香”が裸になり、よもやと思っていた“安達有里”まで脱ぐ時代……。
人前で裸になるということに関する“年齢ボーダー”が崩壊し、
今や一見、地味な女性の下着姿こそが繁華街のビルの外壁を飾る時代。
ただ技巧派の男優たちに潮を吹かされて、次から次へと女優が消費されてゆくAVなどよりも、
セックスの“快感”や“自由”や“解放感”、もしくはそれにまつわる“孤独”や“束縛感”などが、
確かな演出による演技としてスクリーンに刻まれた、そして刻まれ続けているポルノの方が、
ボクら男より現代をたくましく生きている今どき女性のステイタスにはマッチしてるってことだ。

もう少しだけ付け加えれば、
今や“勝ち組・負け組”という価値観の安易な二極化が進み、
いわゆる“勝ち組”的な女性たちの享楽的な男遊びがそのまま“ホスト”ブームをも加速させ、
まるでそうであることが女として“格上”とされているような風潮さえ感じるんだけど、
そうした流れに対する、一部の女性たちの生理的反旗としてピンク映画流行りを捉えるのは、
いくらなんでもボクの考えすぎなんだろうか。
またはそういう風潮を横目で見つつもセックスに関して充足感を覚えた経験の乏しい女性の、
ある種の“癒し”として映画が機能しているというのはどうか。
本来“男のもの”であるポルノを楽しめるという軽い超越感を、
その充足感の代償とするという意味なんだけど……。

「ポルノが女に…」なんて大風呂敷広げただけなので自分で書いてて説得力を感じないけど、
ただ最後にひとつ、上記の時代回帰の風潮を踏まえ、
ボクは向こう何年かのうちにおそらく女のコの“処女ブーム”が来るんじゃないかと思っている。
これはけっこうマジな予言。

そういうワケで、日活ロマンポルノやピンク映画の一部人気を象徴するかのように、
(“ピンク”とか“ポルノ”とか言ってるけど、要はピンクを日活ではポルノと称していたってこと)
今、都内各所のミニシアターでは、日活ポルノ回顧展を含め、
かなりバラエティーに富んだ垂涎の特集上映が組まれていて、いずれも賑わいを見せている。

まずは画像上の映画、いまおかしんじ監督の傑作 『たまもの』 を含む8本をラインナップした、
ポレポレ東中野の「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE Vol.1」。
ボクもとりあえずAプログラムの 『団地の奥さん、同窓会へ行く』(2004年/サトウトシキ監督)、
そして 『草叢』(2005年/堀禎一監督 原題:『不倫団地 悲しいイロやねん』)の2作品を鑑賞。
いずれも傑作だけど、とくに2本目の 『草叢』 は女性は観なきゃ損というほどの名作だと思う。
本家 『電車男』 が“描けなかった”部分を見せるという 『悶絶!!電車男』 も観逃せない予感だ。

シネマアートン下北沢の「神代辰巳特集 Vol.2 〜映画館は濡れた〜」と並行して、
ぜひとも通いたいのが、ラピュタ阿佐ヶ谷の「生と死と、エロスの輪舞 田中登の官能美学」!
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もう何本かは上映済みだけど、『(秘)女郎責め地獄』(1973)の様式美漂う女の情念の世界や、
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『実録・阿部定』(1975)の宮下順子の今なお凄ぇ色香をビデオでもいいから体感してほしい!
これはもうロマンポルノの枠組みを超えた屈指の愛の名作だ!
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今後上映予定の、故・室田日出男の名演が素晴らしい 『人妻集団暴行致死事件』(1978)は、
ベルギーの名匠・ダルデンヌ兄弟がややローペースで描き続けているテーマを、
強烈な凄惨劇のなかに見事に描き切っていて驚かせてくれる。

一方、渋谷の円山町に新しくできた名画専門館、シネマヴェーラ渋谷で開催されているのが、
「笑うポルノ ヌケるコメディ」という企画名そのままの脱力企画。
でも、そのつもりで観た牧口雄二監督の 『玉割り人ゆき』(1975)。コレ大傑作!
笑いの要素はないんだけれど、昭和初期の情緒が漂うなかに、
社会の底辺に生きるしかなかった男と女のロマンが炸裂するエロくてカッコよくて最高の1本。
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正直これは、先日三百人劇場の「田坂具隆の世界」で観た 『陽のあたる坂道』(1958)と並び、
間違いなく本年度、ブッチ切りのベスト1! 今年観たどんな映画よりも感動の大名作だった!

思うに、「ポルノ」というのは“青春の鬱屈”の体現なんだと思う。
夢はあるけど明日は見えず、出口のない迷路をグルグル廻り続けるような青春という“性春”。
そんな、ドロドロとした鬱屈に対する“癒し”として機能したのが、
(昔は)“映画館の暗闇”と“女の裸”の相乗効果だったんじゃないだろうか……。
だとすると、渋谷や下北や阿佐ヶ谷のシャレた映画館で女性が単身ポルノを観るというのは、
もしかしたら、“ポルノをめぐる環境”としては少し違和感があるのかもしれない。
だけどこの先、ポルノが男のソレじゃなく、
仕事も人生も一生懸命なんだけど何か充たされない、っていう、
現代の女性の“癒し”として機能してゆくのだとするならば……、

いよいよボクら“男の居場所”は、映画館にさえなくなる、ってことなのかなぁ〜。

「生と死と、エロスの輪舞 田中登の官能美学」
ラピュタ阿佐ヶ谷 にて6月23日(金)まで開催 ]
「神代辰巳特集 Vol.2 〜映画館は濡れた〜」
シネマアートン下北沢 にて6月9日(金)まで開催 ]
「笑うポルノ ヌケるコメディ 日活ロマン・ポルノvs東映ピンキーバイオレンス」
シネマヴェーラ渋谷 にて6月2日(金)まで開催 ]
「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE Vol.1」
ポレポレ東中野 にて6月2日(金)まで開催 ]

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
『玉割り人ゆき』は東映好きの栗本さんにはやっぱり最高でしょうか。つーか、見てなかったんですか?
なんてえらそうにいう僕も、実は今回、上映するもう一本の牧口雄二監督作品『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』、実は未見なのですが。よくやってくれたと感謝。牧口監督作品をまとめて上映してほしいですねー。

田中登は『発禁本「美人乱舞」より 責める!』が好きなのですが、今回は上映されない模様。

kusukusu
2006/05/26 00:34