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「頼むから別れてくれよ! ほかの男作れよ! もう顔も見たくねぇんだよ!」 と土下座して頼んでも別れてくれないから引っ越したケースだってあるのに、 よもや昔の女のもとを訪ねて廻るだなんて金積まれたってできない。ただでさえ、 いまだ過去のトラウマがもとで乗ると悪寒の走る地下鉄があるというのに(某N屋市のT舞線)。 別れた女に会ったって、殺されるか、シカトされるか、その母親に鉄拳制裁されるかがオチだ。 ただ、生まれて初めて交際した高校のクラスメートの女とは、数年前の同窓会で再会した。 てっきり、典型的な田舎のオバサン予備軍になっているものとばかり思っていたのに、 いつの間にか結婚してバツイチになってそこから立ち直っていい仕事を見つけて、 スーツ姿も品のある洗練された女性になって歯並びは相変わらずよかった。 「アドレスは?(マヌケな愛想笑いで)」「・・・ゴメンね、今、彼氏いるから・・・」だと。 映画が始まったと思ったら5分もない短篇だった。やっぱり人生は、映画のようにはいかない。 だから人は映画を観て、映画のような恋や人生のおかしみに頬を緩ませ涙するわけだけど、 ジム・ジャームッシュの最新作 『ブロークン・フラワーズ』 の主人公の中年男の人生はでも、 まるで“映画のよう”でいて、これが“映画のよう”になかなかいかない……。 署名もないような手紙の内容を真に受けて旅を始めるなんていくらなんでもおかしい、だとか、 息子がもうすぐ19歳で、別れてから妊娠に“気づいた”とわざわざ手紙に書いてあるんだから、 そこから計算すればもっと簡単に“女”を特定できるハズなんじゃないの、だとか、 ジャームッシュの映画にそんなケチをつけるなんて、それこそ野暮のヤボテンだ。 オープニングの郵便配達夫がポストの回収をしているシーンからこれはもうジャームッシュ節。 あんななんでもないシーンにワクワクしてしまうのが、良くも悪くも“ジャームッシュ・ブランド”。 というわけでこの 『ブロークン・フラワーズ』 は、ジャームッシュ好きには馳走みたいな1本だ。 多くの女たちと気ままな恋を楽しんできた中年男のドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)は、 ある日、「あなたの息子がもうすぐ19歳になります」と書かれた匿名の手紙を受け取る。 困惑したドンは、隣に住む陽気な友人ウィンストン(ジェフリー・ライト)に促され、 手紙の主を探すために、アメリカ大陸横断の旅に出るのだが……。 上にも書いたとおり、冒頭から全篇一分の隙もなくこれ“ジム・ジャームッシュ”。 テンションは終始低めで主人公の“自分探し”の旅もけっきょく盛り上がらずじまいだけど、 なんでもないようなセリフやアイテムに“粋”を感じていつの間にやらノせられる。 マニアにしか気づかれないようなネタを散りばめても決して“いちげんさんお断り”とは言わず、 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』 の頃のようにもうトンがっちゃいない代わりに、 ヘタに人生を説かない語り口に“枯れ木”の味わいをそこはかと感じさせてうまい。 いわゆる一般に“ロード・ムービー”と言えば、それは、 結末へ向けて主人公が様々なものを拾ってはドラマがクレッシェンドしてゆくのが定石だけど、 ドンの息子探しの旅は、最初の方こそ昔の女と再会したついでにヤっちまったり、 果てはその娘にも色目を使われ“親子ドンブリ”を想像したり(多分)と艶っぽいが、 あとはもう何も起こらず、自分がただの苔むす石である現実にしだいに途方に暮れてゆく。 “自分探し”の旅は“自分失くし”の旅とうまいこと言ったのは「みうらじゅん」だが、 要はジャームッシュが狙ったのもそれで、今作はつまり“逆”ロード・ムービーってことなのだ。 ジャンキーになり果てたかつての女の取り巻きにパンチを喰らわされ、 息子の幻影を見たか見知らぬ少年にあつかましくしてあまつさえ変態扱いされるドンの姿は、 しかしスッカラカンなだけ虚飾がなくそのみっともなさはたまらなく愛しく目に映る。 けっきょくかつて彼のカラダを通り過ぎていった女たちもきっと彼のそこを見抜いて愛したのだ。 “LEON”とは正反対をゆくトホホなジャージ姿に漂う哀愁こそ“男の香水”。憧れるなぁ〜。 まさに“円熟”という言葉がぴったりハマるビル・マーレイの至芸は言うまでもなく、 豪華すぎる女優陣の決して“出すぎない”競演は、それだけで入場料金に見合う価値がある。 なかでも特筆は、近年ピカイチの芝居を見せるシャロン・ストーンの見事すぎる熟女の色香だ。 なんでもアメリカではあの 『氷の微笑』 の続篇が今さらながら作られ、 しかもストーンが続投して(だよね?)案の定、大コケだったらしいけど、 そのとても40代後半とは思えない“NIKITA”不要のセクシーぶりには、 必ずや客席の団塊世代のオジ様たちも「まだまだ俺も!」と勇気を奮い立たせるに違いない。 そんなわけで、これを観てほしいのは石田純一と言いたいところだが、 そこを抑えてやはりここはセレブの匂いがまるでしない安達有里さん! どうかストーンを見習って50歳を過ぎたらまた脱いじゃってくださいね! 写真集は買いませんけど、「週刊現代」だったら買いますから!(ウソ) [ 新宿武蔵野館、シネマライズ、シネ・リーブル池袋 ほかにて公開中 ] |
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ブロークン・フラワーズ
ゆったりと流れるように淡々と物語が展開され、70年代風のエチオピア音楽をBGMに、オフビートな雰囲気と独特な心地よさがある作品です。 虚無感と哀愁漂う主人公ドン・ジョンストンを演じているビル・マーレイの、静かで味わい深い演技は見所です。 ...続きを見る |
シアフレ.blog 2006/05/22 17:46 |
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コメントありがとうございました。 |
かんすけ@シアフレ.blog 2006/05/22 20:57 |
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