瓶詰めの映画地獄 〜断罪!断罪!また断罪!!〜

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 樹里がジュリーに♪憎み切れなぃ〜クソ親父〜ぃ♪ 『幸福のスイッチ』

<<   作成日時 : 2006/10/24 08:30   >>

トラックバック 7 / コメント 5

画像

よくよく思い出せば、
思い出さなくてもボクの親父は電気屋だった……。
もともと故郷の税務署に勤めていた親父は、
訳あって自分の兄(ボクの伯父)の商売を手伝うようになり、
その後紆余曲折を経て人から家電小売業を受け継ぎ小さい店を始めた。
でも、嫌々始めなければならなかったというだけあって、
ボクの親父はまったくと言ってよぃほど商売というものに向いてはおらず、
それでも小さい頃はよく親父につぃてアンテナ修理とかに出かけた記憶があるけれど、
小学校の高学年になる頃には店の状況はどんどん悪くなる一方で、
仕方なく、店を改装してみるも焼け石に水だった。
マメに御用聞きに地域を廻るワケでもなければ、次々と出てくる新製品に対しても無頓着で、
古臭くデカぃだけのステレオはいつまでも売れないまま置きっ放しだし、
その店はソニー製品専門店だったんだけどベータが敗残してからも、
VHSのビデオデッキを入荷することもなく、
店には親父が死ぬまでベータのデッキ1台しか置いてなかった。電気屋だってのに……。
しかも自分が呑む酒には金を惜しまないクセにドが付くほどケチだった親父は、
こともあろうに電気代がもったぃないと店の明かりを煌々と点けたりなど絶対せずに、
親父は毎日ほとんど店から一歩も出ないのでいぃかもしれなぃけど、
学校から帰ってくると店はとても陰気な雰囲気がして(電気屋なのに……)、
ボクはそれがとにかく恥ずかしくてたまらず、よく学校から帰ってきては、
店じゅうの明かりをめぃいっぱぃ点けそのことでも親父とケンカばかりしていた。

だから、家業を継ぐなんて発想はこれっぽっちもなかったし、
とにかく早く卒業して実家を出たくて出たくて仕方なかった。

もしもどんなにガンコでも、親父がもう少しくらぃ商売熱心な人だったら、
自分の10代もチョット変わっていたかもしれないな・・・と、
この映画を観ながら心の片隅でボンヤリ考えていたしだぃ……。

しかし、こんな風に自分の想い出に浸っていると、
感傷的な暗い映画でも観たかコイツと思われそうだけど、
トンデモナイ! この上野樹里と沢田研二の“Wジュリー”主演の 『幸福のスイッチ』 は、
和歌山県の小さな町を舞台に誰にも観やすく前向きで嘘のなぃドラマがストレートに胸を打つ、
マジでもっと大騒ぎされてもいぃハズの、日本映画、2006年屈指の大々傑作だ!
運よく評判を耳にしなかったら観ずにすませてしまうとこだった……。あぶないあぶない。

画像

 東京で働くイラストレーターの怜(上野)は、
 営業と意見が合わずいきなり会社を辞めてしまう。
 そんな時、妹の香(中村静香)から姉の瞳(本上まなみ)が入院したと手紙が届く。
 しかし実家に戻ってみると、実は入院したのは姉ではなく、
 ソリの合わない父(沢田)の方だった。
 怜は瞳に頼まれてしぶしぶ家業の電気店を手伝うことになるが……。

とにかく店の客ばかりを大切にして家族のことを少しも振り返らないと頑固な父親に楯突ぃて、
イラストレーターになるために上京した怜は三人姉妹の真ん中。
でも、夢見たイラストレーターとしての仕事は理想とはほど遠く、
勤め先の営業にイラストのダメ出しを喰らったことに腹を立てタンカを切って辞めてしまう。
職場の同僚でもあるやさしい彼氏になだめられても曲がったヘソは真っ直ぐにはならず、
イライラは募る一方ですぐに家賃にも日々の食事にも窮し顔つきは険しくなるばっかり。
だけど怜は、本当は自分の絵の才能を過信しているワケでも自信家なワケでもない。
自分に自信がなぃのを見透かされてプライドが傷つくのが怖ぃからいつも周りを睨んでるだけ。
自分でもそれをわかっているのに、それをどうにも前向きに発散できない焦燥とイラ立ち……。
そんな時、策士の三女・香の手紙にまんまと騙され田舎に戻った怜は嫌々店を手伝うハメに。

そんな彼女の、彼女なりの“若さ”というイラ立ちの、
象徴というカタチで父・誠一郎との確執が描かれてゆくけれど、
映画はそれ以上、怜の心情を説明したりはせずに、
姉や妹とのやりとりや、修理先の人々とのささやかなふれ合いのなかで、
凍った大地がゆっくりゆっくりと春の陽射しに解けてゆくように、
彼女が何かに気づいてゆく様子をコメディ・タッチのドラマのなか追いかけてゆく……。
だからと言って、当然“父親譲り”の怜の頑固さがすぐに変わるワケじゃなぃんだけれど、
そこには怜の、自分だけが知っていて、そのせぃで長年苦しんできたと思い込んでいる、
誠一郎の普段の頑固な父親とは少し違うある“顔”が関係していた。

というのがこの映画の肝なんだけど、
とにかく、その肝の部分の描き方というかドラマ運びがバツグンに巧い。
よくある話だけど、そのよくある話を三人姉妹三様のキャラを大切にしながら描いているので、
説得力があり、「うんうん」と(男のボクでも)頷いてしまうことしきり。
やがて怜は、けっきょくその理由も自分でハッキリとわかってはいないんだけど、
自分の頑なな心が少しずつほぐれてゆくのを心地好く感じながら、
いかに幸せかということにようやく目を向けて、前向きに一歩を踏み出す気力を漲らせてゆく。
どうして自分は無意味にイライラしてばかりいたのか、それがどうしてほぐれたのか、
それをオルゴールのエピソードでスキッとまとめる手腕が実に鮮やかで清々しくカワイイ。

とにかく、CMからドラマから映画まで引っ張りダコの人気者、上野樹里が、
普段の明るい雰囲気を抑えて、いつも不機嫌な怜という女のコを超が付く自然体で演じ、
やがて世代を超えて、ガンバっているすべての女性の共感を得ること間違いナシの大好演!
もちろん、新製品を売ることより採算度外視で売ってからのアフターケアにこそ商魂を懸ける、
頑固一徹の職人親父を演じたジュリーも超が付くぐらぃ素晴らしく、
相変わらず張りのある声のなかにも年輪を感じさせて、男の深みと哀愁を渋く見せてくれる!
そしてなにより、ここでもまた、『紙屋悦子の青春』 につづき本上まなみ、本上まなみである。
なんと彼女は、なんと彼女は笑顔の素敵な、笑顔の素敵な女性なんだろう!!!
「こんな嫁さん、ほしぃなぁ〜」と男は全員ノックアウト必至鉄板無条件降伏は必定だ!

こんな地味だけど素敵な映画を撮ったのは、本作が長篇初監督となる安田真奈監督。
大傑作、『猫目小僧』 の脚本を書ぃた人と言えばそのレベルの高さは折り紙付きだし、
『かもめ食堂』 の荻上直子監督と併せ今後積極的に応援したぃ新たな才能の誕生だ。

確かに、タイトルはあまりに地味でインパクトに欠けるし、
お涙頂戴も大恋愛もなければ物語は至って生真面目そのもので、
まるで新喜劇のようなテイストは昨今の主流には馴染まないかもしれない。
だけど、新喜劇テイストとは言えその視線は大人の女性そのものだし、
途中途中、ほんのり涙が滲むような心温まるエピソードは満載で、
なによりこういう奇をてらわない物語をただひたすら丁寧に紡ぎ上げる前向きさが素晴らしぃ!
安田監督はボクの2コ上だけど、ボクは同世代の監督にこういう映画を撮ってもらぃたぃんだ!

冒頭で、ブリブリと怒りながら会社を辞めてく大人気ない怜を見ながら、
そう言えばボクも、サラリーマンだった20代前半の頃は必要以上に突っ張っていて、
半ばタンカを切るように辞表を出して内心「あぁ〜やっちゃった…」なんて思ってたなぁ……と、
そんなことも思い出し、少し照れ臭くなってしまった……。

とにかく! 昨年の大傑作 『帰郷』 にも並ぶ真の日本映画好きなら絶対必見の珠玉の逸品!

『フラガール』 もいぃと思うけど、これもゼッタイに観て損はなぃゾ!

テアトル新宿 にて公開中 ]

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(7件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
幸福のスイッチ-和歌山県田辺市のロケ地観光ガイド
 和歌山を想うみかん畑のあたたかい実の色が本作で表現される家族のカタチをよりいっ... ...続きを見る
ロケ地ドットコム
2006/10/26 22:49
【劇場鑑賞130】幸福のスイッチ(しあわせのスイッチ)
小さな電器屋イネデン。儲かってはいないけれど修理はうまい。 ...続きを見る
ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!...
2006/11/27 23:19
「幸福のスイッチ」試写会レビュー ベベチオがんばれ(笑)
幸福のスイッチ。あらためて映画を思い返すと、数々の幸福のスイッチが、オンになったんやなぁ〜と感じられる。そんな映画かな。 ...続きを見る
長江将史〜てれすどん2号 まだ見ぬ未来へ
2006/11/28 18:51
『幸福のスイッチ』は、メード・イン関西なのだ。
樹里とジュリーが、田辺でダバタ゛! ...続きを見る
TATSUYAのシネマコンプレックス
2006/12/03 00:44
幸せ(しあわせ)のスイッチ
幸せ(しあわせ)のスイッチ公開中ストーリー ☆☆☆☆☆映画の作り方☆☆☆☆総合評 ...続きを見る
シネマ de ぽん!
2006/12/10 11:36
幸福のスイッチ
幸福のスイッチ  ...続きを見る
めそのたわごと
2006/12/29 23:28
ええ仕事したな。~「幸福のスイッチ」~
自分がいくら書いても、 クライアントの要望どおりじゃなきゃ通らない、 間に入って交渉する身にもなってくれって言われても プライドが邪魔して譲れない。 ・・・かくして入社1年でけんかして会社やめた。 でも世間はそんなあたしに優しくなかった。 そんな折お父ちゃんが.. ...続きを見る
ペパーミントの魔術師
2007/01/08 11:18

コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
安田真奈さんは自主映画は何本も撮っていて、ぴあフェスティバルをはじめ、数々の映画祭で何度も受賞している自主映画界きっての実力派です。何本もの映画の脚本やテレビ作品を通過し、いよいよ自ら監督デビュー。栗本さんのこの評によるとその関西コメディが炸裂しているようですね。僕も見なきゃ。
kusukusu
2006/10/25 10:44
というか、犬童一心氏や塩田明彦氏も、自主映画時代の映画を見てうわー、うまいなあ、この人、そのまま(助監督を経ずに)プロの監督になってもそれなりのものが撮れるんだろうなあと思っていたら、実際にそうだったんですが、安田真奈氏もそういうおひとりになる気がするな。まだ『幸福のスイッチ』、見ていませんが。栗本さんはだいぶ壷だったようで・・。

逆に、黒沢清や井口昇みたいに、自主映画を見てわけがわからない、こういう人がプロの映画を撮ったらどうなってしまうんだろうと思っていたら、やっぱりプロの世界でもわけがわからないことをやり続けていて(笑)、にもかかわらずしっかり進化していたりする人達・・に個人的にひかれるところもあるにはありますが。
kusukusu
2006/10/25 10:58
安田監督は自主映画界きっての実力派でしたか!!!
それはそれは存じませんでした・・・(恥)。
でもこの監督の場合、
映画的な実力以上にOLをしていたという社会経験が、
作家としてのベースになっているような気がします。
やっぱり映画の知識やテクニックだけじゃ、
真にいぃ映画は撮れないんじゃないですかね・・・?
とにかく場外ホームラン級の傑作だと思いますよ。

黒沢清や井口昇など、
映画でセックスを撮ってる人はやはり下地が強ぃですよね。
まだまだ果てなく進化し続けることでしょうこの2人は。
犬童一心はその昔、『二人が喋ってる。』 を観ただけだし、
塩田明彦も 『カナリア』 1本しか知りませんが、
邦画もバラエティに富んでていぃんじゃないでしょうか。
栗本 東樹
2006/10/28 20:08
初めまして、達也です。
『幸福のスイッチ』いい映画でした。
父が田辺出身なので、
方言やロケーションがとっても懐かしかったです。
上野樹里ちゃんの映画は3本ほど連続で
観たのですが、この映画の彼女はとっても
自然体でいい感じです。
小説では高校時代を描いている様なので、
ぜひとも『高校時代』の続編を観たいものです。

P.S トラバさせてくださいね。
TATSUYA
2006/12/03 00:44
>達也さん
はじめまして。TBそしてコメント、
どうもありがとうございました。

身近な町が舞台の映画だったんですね。
おそらく市街地から外れたところばかりだったと思うんですけど、
なんとなく、魚の美味しそうな町だなぁと思いました。
上野樹里はホントに自然体というより、
最初パッと見、彼女だと気づかなかったです。
小説版も読みやすそうで興味をソソられますね。
栗本 東樹
2006/12/03 12:27