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help リーダーに追加 RSS 足立正生の、パラダイス・ナウ… 『幽閉者〈テロリスト〉』

<<   作成日時 : 2007/02/16 23:30   >>

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キミは、足立正生を知っているか・・・!?
とは言うものの、ボクとて多くの観客と同じように、
この伝説の映画作家に関してはほぼ初耳みたいなモンで、
早口で、3回つづけてゼッタイ言えない、
『略称 連続射殺魔』(’69)をギリギリ知っているという程度、
そのフィルモグラフィーについても人生遍歴についてもまるで明るくないんだけど、
わかりやすく言えば、『世界最速のインディアン』 が、
老いてなお夢を失わない男の飽くなき挑戦のドラマだとすれば、
この、足立正生監督、35年ぶりという最新作、『幽閉者〈テロリスト〉』 は、
老いて今、“再び”闘いを始めた男の、その序章とも言うべき映画だ。

日本が高度成長真っ只中の60年代。
大島渚や唐十郎らとともに前衛作家として時代を駆け抜け、
’72年にはパレスチナゲリラに共鳴し現地で若松孝二と組んで極左映画を撮影。
その後、’74年に単独パレスチナに渡り、重信房子らの日本赤軍に合流。
’97年にレバノンで逮捕され、2000年に強制送還となった監督は、
それまでの期間、そして自身の人生を総括し、
この混迷の時代にリスタートするため、本作を撮った―。
ボクがダラダラと生きてきた35年もの長い間、
この人はずっと、何かと闘い続けてきたのだ。それだけで凄ぇ・・・。

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 空港襲撃作戦のメンバーの“M”(田口トモロヲ)は自爆攻撃を決行するが、
 手榴弾の不発により1人だけ生き残ってしまう。
 やがてテロリストとして捕えられた彼を待っていたのは、
 悪夢のような拷問に、豚の飼育と呼称される人体実験の数々。
 拷問が繰り返されるなか、少年時代の記憶が甦る彼の前に革命家の幻影が現れ、
 しだいにMの頭は混乱してゆく……。俺は一体何者かと―。

田口トモロヲ演じる主人公“M”のモデルになっているのは、
’72年に、日本赤軍としてパレスチナの旅客ターミナルを襲撃した、
“リッダ空港事件”の主犯のひとり―岡本公三……。

マジメな話、ボクを含めてそのヘンの政治的経緯に詳しく、もしくは興味がなければ、
スクリーンと客席との間に大きな隔たりを感じてしまうのは確かだし、
2時間弱の長尺がほぼ、拘束される主人公のまるで禅問答みたいな独白と、
幻想と現実が入れ替わり立ち替わり切り替わって織り成される回想シーンという、
ある意味、観る者にも主人公と同様の精神的な苦痛を強いる構成の物語は、
過分にヘビーで集中力がついつい途切れがちになってしまうのも致し方ない。
おそらく、往年の前衛作家にとっては手に馴染まなかっただろう、
デジタル・ヴィデオ撮影の奥行きの足りない映像が、
本作の映画的魅力を欠いてしまっているのもまた事実。

だけど、少年時代に何ひとつまともにできなかったそのコンプレックスを克服すべく、
理想に燃えて政治的活動に身を費やすもそこでもただ1人取り残され、
挙句に拘束され、拷問を受け、そして幻覚に悩まされて、
自分の実存に苦しむ男の姿にオーバーラップして、やがて浮かび上がるのは、
一見、自由に見えながらも、溢れすぎる情報や欲望に足下をすくわれ、
結果、他人を信用できず窮屈になるばかりの閉塞的な社会に生きる現代人の憐れな姿。

たとえば、Mの苦しむ姿は、
都会の繁華街で所在なげに彷徨っているところを拾われ、
“金”という甘い夢をエサに、けっきょくはガンジがらめにされて世間からは害悪と見られ、
やがては使い捨てられてゆく振り込め詐欺の手先になった少年たちの悲劇にも重なる。

これは何も、1人のテロリストの苦痛を描いているだけの映画じゃないんだと思う。
足立監督が描いているのはきっと、35年の間に世の中をこんなにダメにしてしまった、
異形の大人たちの犠牲になって現代社会に、
多感な15歳が孤独を感じている割合が世界でいちばん高い狂った社会に、
閉塞感を抱いている若者たちの物語なんじゃないだろうか…?
もちろん、この映画から感じられる苦痛は監督が自身に向けた自戒でもあるのだろうし、
しかし同時にそれは、今までを総括し、
これよりまた再び、よりよい世界(パラダイス)を目指して手を取り合おうという、
監督の若者たちへと向けたエールでありメッセージだと思うのだ。
(足立監督は、若松孝二監督の近作 『17歳の風景』 に脚本協力というカタチで参加している)

拘束されるテロリストの独白や狂気が閉塞的な社会に生きる現代人の心の迷いを映す力作。

これは、足立監督の、“パラダイス・ナウ”なのだ―。

ユーロスペース(渋谷) にて公開中 ]

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タイトル (本文) ブログ名/日時
中東までの距離〜『パレスチナ・ナウ/戦争・映画・人間』
 四方田犬彦氏が映画史家として自らの映画体験を総括し、とりわけイスラエルと パレスチナ映画について分析、考察、パレスチナ問題の複雑さを我々に提示してく れる一冊。我々とは、中東近代史、パレスチナ人とユダヤ人をめぐる& ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2007/02/21 18:17

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
栗本さま、こんにちは。この映画ご覧になったのですね!
最近読んだ本にこの映画のことが紹介されており、貴記事を興味深く読ませていただきました。
関連記事ですがTBさせて下さい。
もうすぐ『パラダイス・ナウ』も公開されますが、観に行かれるのでしょうか。
もし観られたら、是非レビューをエントリして下さいませね。
ではでは。
真紅
2007/02/21 18:30
>真紅さん、こんばんは。
真紅さんは勉強熱心な方ですね。
確かこの映画の上映に併せるカタチで、
四方田犬彦氏のトークイベントもあったと思います。
同じ映画に関するTBはもちろんのこと、
関連記事でもジャンジャンTBしてください!
『パラダイス・ナウ』 は観に行くつもりです。
ただ、パレスチナ問題は難しくて・・・(苦笑)。
栗本 東樹
2007/02/21 20:25