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先日も、汗を拭いつつアテネ・フランセまで「ファスビンダー」を観に行ってきた。 『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(’71/72)を観るのは今回で二度目なんだけど、 やっぱり観終わった後にはドッと疲労感が押し寄せるイヤ〜な傑作だった……。 ただでさえ、舞台を窮屈な室内に限定し、女性ばっかりという少人数のキャストで、 登場人物をイチイチ狭い厳格なフレームに押し込め、そして語られる内容と言えば、 1人の性格悪い服飾デザイナーの女を中心に愛に関する抑圧や依存について……。 気の滅入るようなそれでいて時にグサッと胸を射抜くような会話劇の果てに訪れる、 一抹の温かな人間味さえ否定してムギュッと踏み潰すなんとも殺伐としたラスト―。 立見こそ出なかったものの、ド平日にもかかわらずほぼ満席の場内はやや息苦しくて、 その上映画の重圧をガッツリ2時間浴び続け、帰りの電車じゃ久々に爆睡してしまった。 ただ、最近このテのコアな企画に出かけると毎回(でもないが)感じることがあり、それは、 映画に対しなんでも“笑えばいい”と思ってるような人が増えているんではないか、と……。 『ペトラ〜』 なんて、“声を上げてまで”笑う箇所なんかないハズなのに、我先に笑うことが、 さも“映画を楽しんでいるイチバンの証”だとでも言わんばかりの人が毎回必ず何人かいる。 そりゃ映画の楽しみ方は人それぞれだからそれをとやかく言う資格など本当はないんだけど、 しかしそういう過剰反応は、ケータイや私語以上に他の人の鑑賞の妨げになるからやめてくれ。 お互いアテネ・フランセに通うような“同胞”なのに、上映後になんか怒鳴ってる人とかいるしサ、 はぁ…こういう企画上映って、静かなる共同体感覚が生まれるハズなんだけど最近は違うのね。 先週ドイツ文化会館ホールへ 『キュスタース小母さんの昇天』(’75)を観に行った時もヘンだった。 1人の笑い声が連鎖するみたくラストは場内大爆笑(!?)。そんな本質の映画かぁ?・・・まぁいいや。 とにかく、『ペトラ〜』 はファスビンダーのサディスト魂が炸裂する“M”の人必見の傑作なんだけど、 なんでそんな話を今ここでしてるかと言うと、ペトラもよく考えたら“屋敷女”だなぁ〜と(それだけ?)。 というワケで、タイトルだけじゃただのDVDスルーで上等なB級映画にしか思えないこの 『屋敷女』。 ところがドッコイ、これこそ笑ってる余裕などない驚くほどのす〜げぇ残酷ショッカーだった…つー話。 クリスマス・イブの夜、出産を翌日に控えた妊婦サラ(アリソン・パラディ)の家に、 黒い服を着た長い髪の見知らぬ女(ベアトリス・ダル)がいつの間にか忍び込み、 女はサラが呼んだ警察も、何も知らずに訪れた客も、次々と容赦なく殺してゆく。 大きなハサミを手に物凄い形相で襲いかかってくるいまだ正体不明の女を前に、 理不尽な恐怖と深い絶望に包まれたサラはとうとう陣痛を起こしてしまうが……。 会場は久々の渋谷ライズ]。とにかく冒頭しばらくは、なんか画面が暗くてヤケに観にくいなぁ…と、 映画の色調にスクリーンの明度を合わせていないのか、それをすごくストレスに感じていたんだけど、 おそらくボクの想像が正しければ、それはいわゆる上映側の“自主規制”なんではないのかって……。 昨今、とかく映画においても“表現”に対する規制アレコレがヤタラに厳しい状況がつづいているので、 画面をワザと暗く絞って規制をかけているつもりなのかなぁ…と途中から勝手にガテンしていたのだ。 というしだいで、途中から、と書いた通り、途中まではなんていうことのない映画だと思っていたのが、 核心の展開に入るやいなやいきなり、それこそ目が点になるぐらいショッキングなシーンの雨アラレ! 90分もないコンパクトな映画だけど、まるでひと晩中つづくかのような強烈な悪夢を体感させてくれる。 なんとなし想像できるだけで、明確な理由もわからないまま始まる1人の妊婦を襲う血の惨劇……。 スラッシャー映画の基本よろしく、ハサミだなんだと各種“尖り物”系アイテムの使い方もバッチリな、 観た人全員が先端恐怖症に陥るに違いないとにかくイタくてエグ〜いシーンが休む暇なし連続して、 殺人鬼が女なら、襲われる方も女性しかも臨月を迎えた妊婦ということで生理的衝撃度もマックス! 暗視カメラでボクの顔を捉えていたならきっと鳩が豆鉄砲喰ったような顔のまま硬直してたであろう、 情け容赦のない展開と針の振り切れた残酷描写がサディスティックにこれでもか!と繰り広げられ、 その凄さたるやたとえば、かの“ホラーの巨人”ダリオ・アルジェントが牧歌的とさえ思えてくるぐらい。 ついにフランス映画もここまで来たか…と、ぜひ! “おフランス”好きの人には観てほしい1本だったり。 謎の殺人鬼女の正体は後半で明らかになるんだけれど、しかし、ボクが勝手に想像していたのは、 事故で亡くなるサラの旦那が生前に一度だけ手を出した女が実は“危険な情事”系のパラノイアで、 そんで、サラの子供を自分の子供と思い込んで云々、みたいな感じかと思っていたのでチョット残念。 まぁ別に残念じゃないけどその方がより現代的恐怖(しかも男にとって)は増していたんじゃないかなと。 とにかくそんな、ジェイソンをはじめ男の殺人鬼の方がまだ話せばわかるんじゃないかと思えるような、 問答無用の女殺人鬼を 『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』 で恋妄想に生きる世界中の女の子らを、 “ベティ・ブルー・シンドローム”へ走らせたベアトリス・ダルが、夢に見そーな迫力で熱演狂演大怪演! 彼女をキャスティングした時点でこの企画は成功だったと言えるような存在感で映画を底上げしている。 監督は、ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロという2人組(またしてもアレクサンドル!)。 フランス映画だけあって妙に質感がしっとりしているから、余計に生理的不快感も倍増するんだよね。 「心臓の弱い方、妊娠中の方は鑑賞をご遠慮下さい」って妊娠してるような人が観るワケねぇーだろ! という感じなんだけどとにかくゴア度が強烈だから観るなら相応の覚悟だけはしといた方がいいだろう。 究極に後味の悪いこれまたイヤ〜な結末だけどしかしこの刺激は映画にとって実は大切なことなんだ。 …とは言え、いくらアルジェントにハーシェル・ゴードン・ルイスのホラーが「クール」だからと言って……、 ジュノはゼッタイにこんな映画観ちゃダメだからね! [ ライズ](渋谷) にて公開中 ] |
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