瓶詰めの映画地獄 2009

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help リーダーに追加 RSS 地味だけど心洗われる“ご当地映画”のススメ! 『うん、何〈なん〉?』

<<   作成日時 : 2008/12/02 01:30   >>

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いつだったか呑んだ時に、“郷土愛”と近い感覚でプロ野球は中日ファンだ、みたいな話をしたら、
東京でできた友人に「アナタに郷土愛って言葉は似合わない」なんて言われてしまったんだけど、
そうかな?とは思いつつやっぱりボクなる人間を形成したのは岐阜県の飛騨って土地なワケだし、
それを果たして郷土愛と呼ぶかどーかはともかくやはりボクは自分を東京の人間だとは思わない。
室生犀星の詩「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの 帰るところにあるまじや」
この詩を甘い感傷とともにかみしめる心地好さこそボクが今生きている原動力のような気がするし、
最近ついにコチラで初めて同じ岐阜県出身て子と出逢い勝手に運命だと思い込んでいるんだけど、
その子に惹かれる中にはやはり郷里が近いから(誕生日も)ってこともあるんじゃないかと…恥ずい。

ボクの故郷は岐阜県高山市。岐阜の高山というよりは“飛騨高山”といった方が通りはいいんだが、
御多分に漏れず近年の市町村合併で実は高山市は現在、日本でイチバン面積が広いって市らしく、
なんと香川県よりデカいらしいんだけどしかし人口は前と大して変わらず森林面積が実に93%という、
「北欧か!」とチョット懐かしい感じでツッコミたくなるような今はそんな(どんな?)市になってるみたい。
諸事情で今は帰る実家が名古屋近辺に移ってしまったので郷土愛とか言うワリにはなかなか帰れず、
しかし今年の盆に高校の同窓会があったため、カレコレ4年半ぶりぐらいに故郷の地を踏んだんだけど、
数年前に朝の連ドラの舞台になった影響もあってか今や観光地としてはすっかりメジャー化したようで、
びっくりするほど外国人観光客も多かったし、まるで自分の故郷じゃないような感じでチョイ寂しかった。

まぁ故郷は遠きにとか言ってるヤツに故郷の変貌をとやかく言う資格はないんだが、連ドラはともかく、
そういや高山が舞台の映画なんてあったかな?と考えてみたんだけどこれがなかなか思い付かない。
確か、『風の絨毯』 というイラン映画の舞台がそのハズだけどまぁ観てないし(郷土愛なんてウソです)、
『郡上一揆』(神山征二郎監督)という映画でも郡上って美濃地方なものの撮影は高山でもされたらしく、
昔から剣道をやっている地元の友人がエキストラで出てたりするんだけどそれくらいしか思い付かない。
自分がもしも映画監督だったら高山を舞台に何か撮りたいな…なんて想像したことも実はあるんだけど、
とりあえず“ご当地映画”という話なので大まかに岐阜県を舞台にした映画と言えば想い出すのはそう!
ご存知だろうか…? 『薄れゆく記憶のなかで』 という長良川が舞台のそれはそれは素晴らしい映画を!

この映画、撮ったのは名匠・篠田正浩監督の実子・篠田和幸監督で、映画の知識などまるでないまま、
ただ「撮りたい」という情熱だけで創られた、監督・演者すべて素人という作品なんだけど(1992年製作)、
美しい自然を背景に青春の甘さや残酷が未熟ながらも瑞々しく描かれたホントに胸詰まるような一篇で、
20歳の頃に観たのかな? 当時は名古屋の大学へ通っていたんだけど死ぬほど感動したのを憶えてる。
その頃は大林宣彦の“尾道3部作”などをはじめに洋邦問わずヤタラ青春映画ばかりを追いかけていて、
そして青春映画の名作というのはやはり地方を舞台にしたものに多いとその頃から思っているんだけど、
しかしまぁそれは自分自身が地方出身者だから余計にそう肩入れするという部分もあるのかもしれない。
とにかく大学生の頃は青春映画をよく観てたし尾道3部作を追いかけて尾道まで行ったモンだった(回想)。

で、話はようやく本題へと移ってこれから書く映画は島根県のとある地方都市を舞台にした青春映画―。
ただまぁボクもマコト失礼な話きっと多くの人と同様(?)島根県と鳥取県の位置関係が時にボンヤリだし、
島根と聞いても正直、ピンと思い浮かぶような名産だとか場所がないというのが本音じゃあるんだけども、
しかし、島根と言えば唯一、今回の映画とはまた別に、パッと思い浮かぶ映画が実はもう1本だけあって、
それは今公開中の 『私は貝になりたい』 のロケ地にもなっている西ノ島町が舞台の 『青の瞬間〈とき〉』。
これは草野陽花という監督が25歳の時に撮った映画なんだけど(2001年製作)、これがまた素晴らしくて、
もどかしい恋愛とか地方特有の鬱屈とかそんな青春のモロモロがすごく繊細に描かれているんだけども、
その甘さにまたゾロ、ボクはメロメロになって、スクリーンへ突っ込んでいきそうになるぐらい感動したんだ。

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ふぅ。実は話が青春映画になると、これまたボクは本当にしつこいので今度こそこれぐらいにしておいて、
とにかく今回の映画、島根県塩津町の岬、そしてそこにある全校生徒10数人という小さな分校を舞台に、
いつか沖を渡る真っ白なフェリーに乗ってみたいと願う子供たちと彼らを取り巻く教師をはじめに大人たち、
それぞれの心の成長と温かなふれあいを生真面目ながらも実直に描いてまたまた本当に素晴らしかった、
『白い船』 の錦織(にしこり!)良成監督最新作、そして前回同様に島根県の全面バックアップ態勢のモト、
雲南市という街で撮影された、『うん、何〈なん〉?』 は(ダジャレ!?)、これまた島根の美しい自然を背景に、
ご当地ならではの習慣や伝統行事等を四季の移ろいを切り取った映像の中にさりげなく織り込みながら、
ごくありふれた青春の機微を繊細かつ丹念に描いた何度も同じ語彙で恥ずいけど本当に珠玉の大名篇!

主人公は高校3年生の鉄郎(橋爪遼)。彼は卒業したら、地元を出てゆくかいかないかで常々悩んでいる。
病気の母親だって心配だし、なにより気になるのは幼馴染・多賀子(柳沢なな)に対する秘めた想い……。
ほんと〜にこれといった大きな出来事とか事件、ハッと驚くほど特別な映画的何かが起こるワケじゃない、
今の時代じゃ少し地味すぎるような青春模様を奇をてらうことなくただじっくりと描いているだけなんだけど、
それが実に瑞々しくて、切なくて、甘くて、しかも笑えて 『薄れゆく〜』 『青の〜』 同様ヤラれた!って感じ。
普遍的な地方と都会の関係とか、今ドキの10代の気質なども時代遅れとならずにしっかり描かれているし、
そんな青春模様の中に、脈々と受け継がれてゆく生と死が綾なす人間の営みも上品に織り込まれていて、
ここまで人の営みを真っすぐに見据え丹念に描いた映画なんて、その存在こそが奇蹟と思えるくらい……。

確かにチョッピリ説教臭い部分もあるし、なにより直球すぎてコチラが照れるような場面も多いんだけれど、
主演2人の“青さ”加減がいいし、2人を取り巻く教師、友だち、親、街の人々、脇へと至るまでみんないい。
とくに“ヤマタのオロチ”は実在したと力説する熱血先生と生徒らのやりとりなんて思わず吹き出してしまう。
『白い船』 からすべての面において格段に進歩していると思うし、ムダもないし、観ていて本当に心地好い。
最近の映画みたくゴチャゴチャと情報過多じゃなければ、セリフでダラッダラと人物の心を説明したりもせず、
鉄郎と多賀子が夕立でズブ濡れのまま(やっぱ青春はズブ濡れだよね!)自転車2ケツして帰る場面なんて、
マジで近年屈指の映画的名場面なんじゃなかろうか? あ〜俺も高校の時に自転車2ケツしたかったな〜!
多賀子役の柳沢なながまたチョ〜可愛かったしもう本人以上に多賀子のブログが読みたいと思ったくらい!



そんなワケでぜひぜひ観てほしい、錦織監督“島根3部作”の第2弾として創られた本作(第3弾も楽しみ!)。
上映館は渋谷―。渋谷といえば、この映画とはマコト正反対にいっつも人、人、人でゴッタ返しているけども、
しかしおそらく、いや間違いなく我先にと歩いている人のほとんどはボクと同じ地方出身者なんだろうな……。
故郷を素晴らしい!と何も声高に言う必要なんてないとは思うけど、しかし自分のルーツをひた隠ししてまで、
カツカツな都会暮らしをつづけるぐらいならトットと故郷へ帰った方がいいんじゃないかとそんな気がする……。
地方出身者だからこそ味わえる東京ってのがあるんだしそれを否定するってすげぇ損してると思うんだけど?
とにかくそんな“ご当地映画”。万人におススメだけど中でも地方から来てヒザ抱えて生きてるような人には、
『薄れゆく記憶のなかで』 『青の瞬間』、そしてこの 『うん、何?』 を観て心洗われてほしい! 絶対、泣くよ!

シアター・イメージフォーラム(渋谷) にて公開中 ]

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