|
だいたい毎年12月の第3か第4週末になると、いわゆる“正月映画”と称し、とくに東京なんかだと、 そんなに封切ったって観れるワケねぇーべ!というほどバカみたいに大量の新作映画が公開され、 だけどコチラは根っからの映画好きだから1、2本に絞る甲斐性もなくアレも観たいしコレも観たいと、 時間の調整と正月を見越した予算の組み立て(補正予算案?)に頭を悩ますことになるワケだけど、 そこでまたボクみたいな地方出身者の場合は仕事納めがすむと1週間前後地元へ帰ることになり、 そうするとアチコチへ出かけることになって逆に映画など呑気に観ているようなヒマはなくなるから、 要は公開されたその週に観たいと思った映画を(去年の場合は8本)観終えなくてはならなくなって、 正直、なんで俺はこんなしんどい思いをしてまで映画を観るのか?とまぁだいたい毎年そんな感じ。 オマケにブログなんかやっているモンだから誰にも求められてないのに観た映画はすべて書く!と、 なんで俺はこんなしんどい思いをしてまでブログを書くのか?とまぁそれが楽しいからいいんだけど。 で、12月のそこらヘンでドドーンと映画が公開されると今度は最後の週末は普段よか封切が少なく、 言ってしまえば残りカスみたいな映画が地味にチョロッと封切られこれも毎年そんな感じなんだけど、 しかし去年に限っては、一見その残りカスみたいな印象の中にも目を惹く映画がチラホラうかがえて、 地元へ帰る直前、パパッと3本ほど立て続けに観たんだけどこれがうれしいことに3本とも面白かった。 さすがにブログまでは書けなかったし(実家にパソコンはない)、なにより休みを挟んだら記憶も薄れて、 本当はじっくりと書きたい個性的な傑作3本だったんだけど後がツカえるのでこの際まとめて残務整理。 マズ1本目は 『ハイテンション』 や 『ヒルズ・ハブ・アイズ』 といった“やりすぎ”ホラーで知られる俊英、 フランス人監督のアレクサンドル・アジャが、今や本名より“ジャック・バウアー”という方が通りがいい、 『24』 のキーファー・サザーランドを主演に迎えて撮った、鏡にまつわるサスペンス・ホラー 『ミラーズ』。 誤って同僚を死なせてしまった過去に苦しんで酒浸りの毎日を送っているバウアー扮する元警察官が、 愛想を尽かして出ていってしまった妻と可愛い2人の子供となんとか寄りを戻すため、大火事で全焼し、 そのまま廃墟として残っているデパートを見廻る夜警の仕事に就く。だけどある晩デパートの中にある、 巨大な鏡に触れた瞬間から彼の身辺で奇怪な超常現象が頻発するようになり、やがて妹まで死なせ、 その原因が鏡にあると確信したバウアーは、家族を守るため鏡に秘められた悪意へと立ち向かう……。 筋だけを聞けば、『妖怪人間ベム』 にあったような話で古臭いモチーフの怪談ホラーに感じるんだけど、 しかしそこで要なのがメガホンをとっているのがアレクサンドル・アジャという点で、コチラの期待通りに、 彼は人物の心の機微を無駄に彫り下げてドラマをモタつかせるようなマネはせず、それはもう冒頭から、 お得意なネチっこ〜い残酷描写と、若さ全開のパワフルなたたみ掛けで題材をあくまでシンプルに消化、 単なるコケ脅しで終わりがちな物語を、飽きさせることなく最後までグイグイと見せてくれて実に頼もしい。 バウアーも健闘すれば妻役のポーラ・パットンをビショ濡れにするあたりも「わかってるねぇ」という感じで、 ラストもなかなかならさりげなくしかし確信犯的に見せる“24”オチとケツのケツまでサービス精神は旺盛、 別に観終わった後に鏡を見るのが怖くなったりはしないけど及第点で観応え抜群のホラー映画の快作だ。 2本目は、麻薬が蔓延し、犯罪率が上昇して危険な香りに溢れていた1980年代のニューヨークを舞台に、 血を分けながらも方や兄は父の意志を受け継いでエリート警察官に、方や弟はそんな血筋に背を向けて、 マフィアが経営するクラブのマネージャーにと人生を大きく深く違えてしまった兄弟の葛藤と運命の物語を、 ヒリヒリするような“警察VSマフィア”というオーソドックスだけど人気の高い映画的構図の中に織り込んだ、 喩えるならば 『ゴッドファーザー』 に 『ディパーテッド』 を足したような犯罪サスペンス 『アンダーカヴァー』。 しかしこれがマジで拾い物の傑作! それは確かに 『ゴッドファーザー』 は言いすぎかもしれないんだけど、 即物的だった 『ディパーテッド』 に比すりゃ深みも奥行きもあって久々このテの映画で「キター!」って感じ。 実は正月映画の中で秘かに期待していた1本だったんだが、これを観逃すなんて映画好きとは言えないよ。 これですよ! クラブの一室で弟を演じるホアキン・フェニックスが、ラテン系美人女優エヴァ・メンデスの豊乳を揉み倒し、 そしてメンデス自身も己が股間をまさぐりまくってオネダリをするという衝撃的なオープニングで早くも傑作。 場内はまるで水を打ったかのように静まり返ったんだけど、その静けさが最後まで打ち破られることはなく、 スクリーンには、風格さえも漂う緊張感抜群のサスペンスとリアルかつ重厚な人間ドラマが展開されてゆく。 話自体に特別新味はないんだけど 『リトル・オデッサ』 に 『裏切り者』 といった隠れた傑作で知る人ゾ知る、 ジェームズ・グレイのディテールに凝った演出は極めて端正で映画の印象を見事シャープなものにしていて、 雨の中のカーチェイスなど観どころも満載ならテーマ音楽も異様にカッコよく「これが映画だ!」という歓びを、 豊穣な余韻とともに残してくれる。今後、ジェームズ・グレイの名は記憶しておいた方がいい。とにかく必見。 3本目。実はこれこそ3本中、イチバンのおススメかもしれないと意表を突かれてヤタラと面白かったのが、 『ユニバーサル・ソルジャー』 『ハード・ターゲット』 『サドン・デス』 に 『ダブルチーム』 と90年代に大活躍。 ジョン・ウーやツイ・ハークをハリウッドに呼ぶなどかつてはハリウッド屈指のアクション・スターだったのに、 いつの間にやら名前を聞かなくなってボク自身、21世紀以降、1本もその出演作を観たことがないっていう、 あのジャン=クロード・ヴァン・ダムがよもや落ち目になった自分自身を演じるという 『その男ヴァン・ダム』! 大作映画からはすっかりお呼びがかからなくなり今や落ち目の彼に来るのはチャチなB級映画の話ばかり。 娘には嫌われ親権をめぐる裁判費用で貯蓄は底をつき、挙句は偶然立ち寄った故郷ベルギーの郵便局で、 強盗事件に巻き込まれどころか強盗犯に誤認され警察と交渉するハメに。どーするのヴァン・ダム!?てな話。 とにかく笑える笑えないは別にして全篇自虐ネタの雨アラレ。笑えるというより早切なくなってくるんだけど、 実はケッコウ傲慢で嫌なヤツだったらしいヴァン・ダムは、しかし本作ではそんな過去の自分を受け止めて、 現在のリアルな心情を語って虚勢を張ったりせず、映画に任せてなかなか味わい深い芝居を見せてくれる。 監督は若いフランス人で彼の幼い頃からの憧れがヴァン・ダムだったらしく要はコレ、オタク映画なんだけど、 しかしただヴァン・ダムの自虐ネタだけじゃなくシドニー・ルメットの 『狼たちの午後』 も絡めた知的な構成や、 懐の深い遊び心になによりヴァン・ダムへの篤いリスペクト精神で不思議な印象の一篇へと仕上がっている。 これでヴァン・ダムが演技派として復活できるかどーかはさすがに微妙だけど(ミッキー・ロークは復活したネ)、 「祇園精舎の鐘の声…」なんて聞こえてきそうなケッコウ深い人間ドラマとして侮れない1本じゃないだろうか? ふぅ〜(疲れた)。そんなワケで、年末の大量公開に塗れて埋もれてしまった感のある上記3本の個性的映画。 とくに 『アンダーカヴァー』 と 『その男ヴァン・ダム』 はゼッタイ必見。これだからしんどいとか時間がないとか、 映画好きにそんなこと言ってるヒマはないんですよ!あ〜今年もまたゾクゾクと新作映画が押し寄せてくる〜! 『ミラーズ』 [ 新宿東亜興行チェーン ほかにて公開中 ] 『アンダーカヴァー』 [ 新宿ミラノ ほかにて公開中 ] 『その男ヴァン・ダム』 [ シネマライズ(渋谷) にて公開中 ] |
| << 前記事(2008/12/27) | トップへ | 後記事(2009/01/13)>> |