なぜ、としまえん1館!? 『クライシス・オブ・アメリカ』

画像まがりなりにもこれは、
『羊たちの沈黙』 でオスカーを手に入れ、
つづく 『フィラデルフィア』 で名実ともに一流監督の
仲間入りを果たしたジョナサン・デミ監督の最新作、
そして、『マイ・ボディガード』 の熱演も記憶に新しい
こちらもオスカー俳優デンゼル・ワシントンの主演作である。
なのに、新宿、渋谷、銀座あたりでの単館公開ならいざ知らず、
なぜ都内が豊島園のユナイテッド・シネマ1館だけの公開なのか!?
単にこれでは当たらないと配給側が判断したからなのか、
それとも公開を危ぶんでしまうようなネタを擁しているからなのか、
こういうレア感を醸す1本にこそ映画好きの嗅覚は敏感に反応してしまう。
そしてそれこそが、本作にも関連してくる映画的“マインド・コントロール”。
豊島園までは都営大江戸線で中野坂上からたったの12分。
劇場は地上出てすぐ。こんなに家から近いとは思わなかった。

湾岸戦争で仲間を救出した英雄として、
副大統領候補にまで上り詰めた元軍曹のレイモンド・ショー。
しかし、ある記憶をきっかけに彼の当時の英雄的行動に疑いを抱いた元上官のジョン・マルコは、
独自の調査を進めるうち巨大企業の恐るべき国家級の陰謀を知ってしまう…。
この映画は、社会派サスペンス映画の巨匠、
故ジョン・フランケンハイマー監督(1930~2002)の1962年の作品、『影なき狙撃者』 のリメイク。
当時の東西冷戦を時代背景に、
共産国家による“洗脳”の恐怖を鮮烈に描いた骨太な傑作だ。
それをデミ監督は、オリジナルで核になっていた“対外的恐怖”を“内”へと切り換えて、
今アメリカに迫る真の脅威は、実はアメリカの中枢にこそ存在すると大胆に言い放つ。
確かに、劇中随所に出てくる根拠も乏しいブッ飛んだ発想の数々は、
『羊たち~』 にも通じる濃厚に画面に漂う映画的いかがわしさとも相まって、
ポリティカル・サスペンスというよりはむしろ、
数年前に 『X-ファイル』 シリーズのクリス・カーターが製作した傑作TVドラマ、
『ミレニアム』 を彷彿とさせる終末的なオカルト色の方がかなり強い。
その時点で、眉にツバしてソッポを向いてしまう人も多々いることだろう。
でも、それを意ともせずにあろうことか映画の公開を昨年の大統領選にぶつけてしまうという、
その映画屋としての気骨さと商業センスはある意味 『華氏911』 を遥かに超えているし、
何より、彼の国だったらこれぐらいのことはフツーにアリなんじゃないかと思えてしまうほど、
本作にはれっきとした映画的な面白さが詰まっている。
ワシントンほか、メリル・ストリープやジョン・ヴォイトらがそれに応えているのを見ても明らかだ。
(デミ監督の師匠、御大ロジャー・コーマン氏もカメオ出演!?)
先日アメリカで、さる高名なジャーナリストが、
TVで特番を組んで国内に数あるUFO関連の事件をすべて合理的に(つまりウソと)解釈したところ、
局に抗議が殺到して大騒ぎになってしまったという(詳細が異なっていたら悪しからず)。
そういうアメリカという国は、
ボクら日本人が思っている以上にトンデモなくバカな…もとい面白い国なのである。
そしてそれこそが、アメリカ映画にSFを始めとした空想科学映画が多い本当の理由なのだ。
やはり、堕ちてもアメリカには“夢”がある。

とにかく、2時間9分の長尺をまったく退屈させないデミ監督の演出センスは、
『サムシング・ワイルド』(1986)の頃から少しも衰えてはいない。
真の映画好きならば決して観逃せないハズのレア感も相乗効果で倍うれしい拾い物的傑作だ。

つくづくボクも、
ジョナサン・デミ映画のような文章を書いてみたいと思うもんである。

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