メンデスの 名前が憶え られる日は… 『ジャーヘッド』

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“『アメリカン・ビューティー』 のアカデミー賞受賞監督最新作”。

ダンディズムに充ち震えがくるほど面白かった前作 『ロード・トゥ・パーディション』 のときも、
元はイギリスの舞台演出家、サム・メンデスの名は上記のように各種媒体で謳われていた。
映画に疎い観客に無視されて興行的には芳しくなかった 『ロード・トゥ~』 の次ということで、
今回も、名誉だか不名誉だか前回とまったく同様のフレコミでの公開と相なったわけだけど、
この、そんなメンデスの最新作 『ジャーヘッド』 を観る限り、
どうやら次回作も残念ながら、
今までどおりのフレコミで紹介されることになってしまいそうだ……。

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 祖父、そして父に次いで、
 海兵隊に志願入隊した青年スオフォード(ジェイク・ギレンホール)は、
 苛酷な訓練や仲間たちとの紆余曲折を経て、
 偵察撃隊STAの一員として中東サウジアラビアに派遣される。そして、
 1991年1月17日、イラク対アメリカを先頭とする多国籍軍による“湾岸戦争”が勃発。
 サウジに来て実に175日目、“砂漠の嵐作戦”がいよいよ開始され、
 スオフォードは、満を持して最前線へと向かうのだったが……。

全米で大ベストセラーとなった原作を得てメンデスが描こうとしたのは、ズバリ(いや、多分)、
同じ英国人のスタンリー・キューブリックを意識した“湾岸戦争版 『フルメタル・ジャケット』”。
しかし、『フルメタル~』 をはじめ数多作られた多くの「ベトナム戦争映画」が、
先の見えないドロ沼の戦時下で、
しだいに心を蝕まれてゆく兵士たちの狂気の行方を描いていたのに対し、
今作が、アメリカにとって“勝ち戦”だった湾岸戦争をネタにして描くのは逆に、
戦うつもりで戦場まで来たのに敵がおらず“戦わせてもらえない”ことでストレスが生まれる、
そのハケ口のない暴力衝動がやがて煮詰まってゆく戦時下での矛盾。
つまり、『フルメタル~』 がある意味青春映画の様相も呈していたのと同様、
これもまた、“戦いたくても戦えない”という鬱屈を、
“ヤりたくてもヤれない”という青春期のくすぶる性欲に転化した戦争青春映画というワケ。
そしてそれを拡大して、敵がいなければいないでそれに越したことはないハズなのに、
(主人公に戦う相手がいなかったのは、所属する部隊にその機会がめぐってこなかったから)
やたらと相手を想定しては“戦いたがる”という、要するにアメリカの好戦的な体質を、
英国人らしいシニカルな視点で皮肉ろうとしたのがメンデスの狙いだったと思うんだけど、
果たしてその狙いが彼の思惑どおりに功を奏していたのかどうかはやはり疑問が残るところ。
その理由をどう述べたらいいのか正直ボクには難しいとこなんだけれど、ひとつには、
上にも書いたとおり、“湾岸戦争はアメリカにとって勝ち戦”だったということがあるだろう。
こんなことを書いていいものかどうか迷うけど、
ハッキリ言えば、どんな描き方をしても“勝ち戦は映画のネタにはなりにくい”ってことなんだ。
描かれる登場人物たちが戦いに負けるからこそ映画は反戦のメッセージを持ち得るわけだし、
戦争映画は主人公がボロボロになって、あるいは死んでなんぼのカタルシス。
勝ってしまったら、ヘタすりゃ戦意高揚、あるいは戦争礼賛にさえとられかねない。

それに、
ベトナム戦争映画はそのほとんどが森林地帯でのゲリラ戦を描くのが主流だったのに対し、
湾岸戦争は、地平線の彼方まで見通せる広大な砂漠がその戦闘の舞台。
暗鬱とした密林が必然的に生むジリジリするような緊迫感を砂漠を舞台に描けるハズがない。
もしかしたら、それは描き方によっては可能だったのかもしれないが、
少なくともメンデスにはそれができなかったのだけは紛れもない事実。
どこかボクには、
彼がベトナム戦争を描いた既存の名作の呪縛に囚われているような感じさえ見受けられた。
確かに、『ロード・トゥ~』 のようなある意味様式美を要するフィルム・ノワールならばともかく、
戦時下での想像を絶するような狂気の内面を描くには、
サム・メンデスという監督はあまりにも品があり過ぎるような気がボクはする。

でも、問題はここから。
以上のようにボクはこの映画を2時間強、“退屈”と感じながら終始観ていたんだけど、
それはつまり、今作にはボクが戦争映画に“期待するもの”がほとんどなかったということで、
それは言い方を変えれば、
なによりボク自身のなかに潜む好戦的な気質がまるで充たされなかったということでもある。
そう思うと我ながら少し背筋がゾッとするし、
もしそれがメンデスの狙いだったらボクはまんまとその術策にハマったことになるんだけれど、
果たしてそれはどうだろう……?

今作に込められたメッセージを観る側がどう解釈するのか、
評価の難しい問題作ではあると思う。

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