ひと粒で何度も美味しいジャッキー最新作! ただ… 『THE MYTH 神話』

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いつ仕事がなくなるかわからない、
家賃が払えなくなったらどうしよう、
気がついたら支払日の前日だった……。
こう毎日毎日不安に苛まれる生活を何年も送っていると、とにかく、
なんでもいいから見ているだけでホッとするものを求めてしまうのが人の心の弱さというもの。
動物を飼うのは面倒臭い、女なんて煩わしい、通帳残高なんか見たら余計死にたくなる……。
そんな、そろそろミドルエイジ・クライシスという言葉も気になり始めたボクにとって、
やはり映画館の真っ暗闇と一時の絵空事は一服の精神安定剤(実はこの時点で末期症状)。
なかでも、ボクら世代にとってスクリーンに映し出されるだけで心から安心できてしまうのが、
そう! “ジャッキーの顔”だ。
仮に少しぐらい映画がつまらなくたって(布石)、
ジャッキーの顔さえ見られればボクたちはそれで万事オッケー。
齢50を超えたといってもそうそう現役のスーパースターの体のキレが鈍るわけもなく、
先に公開された今春の大傑作、『SPL 狼よ静かに死ね』 でのサモ・ハンなんかを見る限り、
まだまだ(たとえ興行成績が芳しくなくても)ジャッキー映画はこの先20年は大丈夫!
何を信じていいのかわからない相変わらず不確実な時代……。
そんな不安を少しでも解消したくてジャッキーに会いに行くという映画ファンは、
きっとボク以外にもたくさんいるんじゃないだろうか。

そんな我らがジャッキー、
53本目(確か)の主演最新作が、盟友スタンリー・トンと組んだ 『THE MYTH 神話』 だ。
(“我らが”とか言ってるわりには、
 ジャッキーJr.も初出演を果たしたという前作 『花都大戦』 は観てなかったりするんだけど)
これは、現代の香港と2200年前の中国の、
過去と現在の二元にわたってジャッキーが大活躍するという、
言ってみれば1本で2本分の映画が楽しめるような、
しかも現代篇だけでも香港だけじゃなくインドにも舞台が移り変わるという、
万国漫遊気分も味わえてしまうひと粒で何度も美味しい贅沢な娯楽大作。ただ、
そのキャストも含めたあまりの贅沢さが逆に映画の印象を散漫にしてしまっているというのが、
よくある話なんだけど今作においても急所になっているキライがあるというのがきょうの本題。

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 考古学者のジャック(ジャッキー)は、
 いつも同じ美女が出てくる夢を見ていた。ある日、彼はこんな夢を見る―。
 2200年前の中国。
 秦の始皇帝の近衛将軍を務めるモンイー将軍(ジャッキー)は、
 朝鮮から迎える妃・ユシュウ姫(キム・ヒソン)の護衛として国境地帯へと向かっている。
 ところが、姫を奪還しようとチェ将軍(チェ・ミンス)率いる軍隊が急襲してきて、
 大乱戦と激しい諍いの末、モンイー将軍とユシュウ姫は崖から転落してしまうのだ……。

最近、90年代にハリウッドへ大挙して渡った中国語圏映画人たちが、
向こうで吸収したものを活かすべく、
古巣に戻ってこれまでにない中国・香港映画を製作し始めているけれど、ジャッキーも、
今までの作品になかったようなレンジの広い作品を観客に提供しようと頑張ってくれている。
確かに古代中国篇のスペクタクルは、チャチなCGアニメみたいだった、
チェン・カイコーの 『PROMISE』 に較べればずっとスケールが大きくて観応えも充分だし、
現代篇においても、とくにインドを舞台にしての巨乳美女、
インド映画界の新進セクシー女優、マリカ・シェワラットとの丁々発止がうれしい、近年だと、
『アクシデンタル・スパイ』 に並ぶコミカル・アクションの楽しさはジャッキー映画の面目躍如。
ワイヤー・アクション+VFXにSF的説得力を与えて繰り広げられるクライマックスにしても、
『グリーン・デスティニー』 を意識した浮遊感が満喫できて決して悪くはない。
それに、あまり華は感じなかったけれど、
香港を代表する名優レオン・カーフェイの相棒ぶりも、
作品のドラマ部分にそれなりの安定感と重厚感を与えてはいる。

だけど、このまるで 『火の鳥』 みたいな壮大な物語を表現するには、
うまく言えないが時間の超越感のようなものが稀薄で古代篇はいかにもコスプレだし、
去年の 『香港国際警察』 でもそうだったけど、
やっぱりシリアスな部分とコミカルな部分のバランスがどこか悪くて、
クライマックスも浮遊感はいいけれどそのせいでいつもみたいにスカッとしないのもまた事実。
要するに、「ジャッキー、もうそんなにハリウッドを意識しなくたっていいよ…」という、
ジャッキーの頑張りに対して胸が苦しくなるような痛々しさを感じてしまうってことなのだ。
それはつまり、長年スクリーンの向こう側から満面の笑顔をふりまいてきた、
彼の“役者”としての限界でありジレンマでもあると思うんだけど、
ボク個人としては、ここらでガツンとノーVFX、ノーワイヤーの徹底的なコミカル・アクションで、
思いっきり笑わせて思いっきりスカッとさせてほしいと思うわけで、
しかしその従来のイメージから脱却したいというのが目下彼の目指している地平だと思うし、
う~ん……。

関係ないけど、
劇中のインド篇の舞台って、あれ多分、ハンピじゃないのかな?
60年代ヒッピー・ムーヴメントの聖地として、
世界中からヒッピーが集まってきていたゴアの近くにある村で、
その後ゴアがすっかり観光地化しちゃったもんだから、
代わりにハッパ好きパーティー好きの西洋人の溜まり場になっているっていう……。
ジャッキーが逃げるときに乗っかるあの“お椀”みたいなボートは、現地に行けば乗れます。

ジャッキーが出ている限り、
ジャッキー映画をつまらないなんて口が裂けても言う気はないけど、
しかしその方向性に難ありっていうのはどうしても否めない印象だ。

その点、ハリウッドで吸収してきたものをうまく取り入れたジェット・リーの 『SPIRIT』 は、
生粋の中国アクションという以上に真にスケールの大きい万感胸に迫る大傑作だった……。

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