亀田3兄弟にもいつか泣いてほしい! 『クライング・フィスト』!

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残念ながら先日17日の後楽園では、
公約通りのKO勝利を果たせなかった亀田3兄弟の次兄・大毅(17)。
一部からは、「あまりにも“勝ち”に行きすぎ」との声もあるようだけど、
ただでさえ10代の彼らに“カケヒキ”を求めるのはまだ早いような気が、
ボクシングを見る目などまったくない(というよりマズ観ない)ボクでもしたりする。
たった一度だけ、もうずいぶん前に新人王戦の予選のそのまた予選、
サラにそのまた予選の4回戦ボーイたちばかりの試合を観に行ったことがあるんだけれど、
試合のカケヒキなんてこれっポッチもなきゃ、ゴングが鳴ればゲートを放たれた競争馬の如し、
雄叫びとともに猛突進して出会い頭にイッパツ喰らってハイ終わり、みたいな試合ばっかりで、
だけどそれが異様に面白く、プロレス以上に興奮しながら観戦したことを憶えている。

ボクシングがどうして映画の題材になりやすいのかといえば、
それは決して強さだけではないリング上でのカケヒキが、人生のメタファーとして明瞭だから。
そして、ボクシングは“ヘタに描いてはいけない”という創り手側の緊張感が、
そのまま映画の中のボクシング・シーンの緊迫感につながるという相乗効果を生むからで、
だからボクシング映画は映画としてメッセージが伝わりやすく、
去年、公開された 『シンデレラマン』 なんかはボクはまだ未見だけど、
あれも地味なワリに評判がよかったことを考えても、このジャンルにツマラないものは少ない。

大方ボクシング映画の主人公といえば一度ならず人生に挫折した者というのが定番なので、
小さい頃から、あの誰よりも怖い父親・史郎さんによって英才教育を受けてきた彼ら3兄弟と、
ボクらが慣れ親しんでいるスタンダードなボクシング映画の主人公たちとは、
土俵(リング)が同じでもまるで対極ということが言えるのかもしれないけれど、
彼らだって、この先ボクシングを通して様々な苦難、もしくは挫折を経験することもあるだろう。
そうすればそれを“味”に今よりサラに面白い試合が期待できるようになるんじゃないだろうか。
ボクシングのことも亀田家のプロフィールについても詳しくは知らないのでもうヘタはよすけど、
やっぱり「ボクシング映画」だけは人生の挫折と再生の物語として機能してほしいというのが、
一介の映画ファンとしての素直な気持であることは確かだ。
そして、そんな気持を十二分に充たしてくれる超一級のボクシング映画の新たなる傑作が、
ここのところ、“竹島問題”でずっとジャブの応酬みたいになっているお隣・韓国から届いた。
それがこの、韓国映画屈指の名優、チェ・ミンシク主演最新作 『クライング・フィスト』 だ!
“韓流”ブームの功罪で、韓国映画というだけでなんでもかんでもがひと括りにされて、
だから、本当に面白い映画であってもさして注目されることなく公開が終わる作品も多いけど、
マジメな話、これはボクがここ何年かで観た韓国映画の中でもベスト級の1本!
男だったら(とくに40代以上は鉄板)感涙、激涙は必至の震えがくるほど熱い熱い傑作である。

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 元北京アジア大会銀メダリストのボクサー、
 カン・テシク(ミンシク)は事業に失敗してすべてを失い、
 路上で“殴られ屋”として日銭を稼ぐようになっていた。
 一方、愛情を知らずに育った問題児で19歳のサンファン(リュ・スンボム)は傷害で投獄され、
 所内でボクシング部に所属することになる。
 やがて、年齢も育ってきた環境もまるで異なる2人が、
 偶然にも新人王戦の同じリングで闘うことになり……。

ミンシクが演じる中年ボクサー、カン・テシクのモデルは、
新宿歌舞伎町などの繁華街に立ち、人に殴られてお金をもらうというスタイルで、
数年前によく雑誌とかで取り上げられていた晴留屋 明(はれるや あきら)氏。
そういえば最近名前を聞かないと思っていたらこんなとこでモデルになっていた。
一方、新鋭リュ・スンボムが演じるストリート少年のサンファンにもモデルがいて、
その人は、少年刑務所上がりのボクサーでk-1・ソウル大会にも出場した経験があるという、
“韓国のタイソン”ことソ・チョルという選手らしいが、ボクはまったく知らなかった。
とにかく、まるでエピソードの異なる2人の男をモデルに描いて両者をラストで闘わせるという、
その発想が単なる人物伝にはない人生のリアルを引き出すことに成功していて、
テシクとサンファン、それぞれが抱える挫折のドラマの見せ方にはまるで無理がなく、
男としても夫としても父親としても失格なテシクと、粗野で凶暴で腐った目のサンファンが、
ボクシングを通してしだいに成長し、やがて人生の再起を賭けてゆく姿に自然と胸が熱くなる。

ドラマの構成も各種エピソードの盛り込み方もオーソドックスというぐらいに極めてシンプル。
でも、だからこそ役者の芝居やファイト・シーンの臨場感がなによりも問われるようになり、
そしてそこに創り手の絶対的な自信を感じるから、コチラも終始安心して観ていられる。
話を聞けばお涙頂戴と鼻白む人もいるかもしれないが、そんな臭みはまず感じない。
主演の2人は当然のこと、子役から脇まで韓国映画の高品質を証明する役者が顔を並べ、
とくに、テシクを見守る路上脇の食堂の店主と、サンファンを温かく叱咤するトレーナーは、
まるで 『インファナル・アフェア』 のアンソニー・ウォンとエリック・ツァンみたいな存在感を醸し、
サラに物語に深みと奥行きを与えて主演の彼らを引き立てる。韓国映画は、本当に層が厚い。

クライマックスのまさに息を呑むボクシング・シーンは臨場感満点。
だけど、どちらにも勝ってほしいし、どちらにも負けてほしくはない……。
そんな引き裂かれるような想いの果てにやがて訪れる試合の結末は…?
溢れる涙が止まらないことだけは、ボクが保証しよう。ボクシングは人生の縮図だ。


こないだ、いつも聴いているラジオ番組に亀田3兄弟の長兄・興毅(19)が出ていて、
試合後に試合時間より長く歌を歌うというパフォーマンスを見せた大毅のことを評し、
「あんなん、フツーの神経でできることやないワ」と屈託なく笑っていたのが印象的だった。
どうか“北関東”のヒーローに留まることなく、
決して“強いだけじゃない”選手に育ってくれたらと、それを思い出して映画を観た後に思った。

新宿武蔵野館アミューズCQN にて公開中 ]

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