権力に屈せずジャーナリズムを貫いた男の実像、でも… 『グッドナイト&グッドラック』

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元ライブドア社長のホリエモンこと、
堀江貴文容疑者が保釈されてからもう何日間かが経過したけど、
ボクたちテレビの前の視聴者の誰もがそのとき驚いたのは、
「どーして早く出られたの?」なんてそんな経緯よりも、
あの各種マスコミ報道の常軌を逸した過熱ぶり。
拘置所近隣の迷惑など“報道”の大儀の前では当たり前と言わんばかりに省みもせず、
そのわりに朝から晩まで同じコメントの繰り返し。
六本木ヒルズを遠景に捉えたカー・チェイスにヘリコプターからの空撮など、
次の日もまた次の日も、一日中同じ映像の垂れ流し。
正直、あれを見て面白いとか、よもやワクワクするとか思ったなんて人いるんだろうか?
ボクはそこまで日本人はバカじゃないと信じているんだけど……。
あんなもの、“報道”でもなければましてや“ジャーナリズム”でもなんでもない。
単なる視聴率競争のバカ騒ぎ。ハッキリ言ってアホである。
いつの間にやらとうの昔の話になってしまった、
元民主党議員の発言に端を発したいわゆる“送金指示メール問題”のときもまったく同じ。
耐震偽装だとか防衛庁の談合とか、
本当に毎日報じ続けるべきことを脇によけて連日連夜進展しない同じ内容を延々と……。
もう本当にこの国のマスコミの低レベルぶりにはウンザリだ。

“ガキの使い”や“やりすぎコージー”を何度見ても決してバカにはならないけど、
あんな下世話なワイドショーと大差もないメディアの“えせ報道”を信じていたら、
ボクたちはホントにバカになる。意思を持ってテレビを消そう。
今や日本のTVメディアに、“ジャーナリズム”の精神なんてものはカケラもない!

と、ここでは話の展開上言い切っておくことにして、
ハリウッドのトップスターのひとりであり、前作 『コンフェッション』 で監督デビューも果たした、
作品のデキはともあれ、『シリアナ』 での熱演も記憶に新しい俳優のジョージ・クルーニーが、
かつて権力に屈することなく真のジャーナリズムを貫いたあるTVキャスターの実像に迫った、
監督第2作がこの 『グッドナイト&グッドラック』 だ。
時代の雰囲気を重視したクラシックな画作りに観客に媚びない実力本位のキャスティングと、
気になる話題作目白押しのこのGWに硬派な印象を与えて観応え充分の作品。
だけど、それを描くことでクルーニーの伯父貴は果たして何を今の時代に訴えたかったのか、
という、肝の部分に関しては印象が弱くイマイチのめり込めなかったというのが、
ボクが今作を観ての率直な感想だ。

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時は、“東西冷戦”の世界的緊張がつづいていた1950年代。
とりわけ1953年当時のアメリカでは、
共産主義者を弾圧するいわゆる“赤狩り”の嵐が全土で吹き荒れていた……。
大手TV局のCBSに勤めるキャスターのエド・マロー(デヴィッド・ストラザーン)や同僚たちにも、
職業柄当然疑いの目は向けられて、
自由な意思にもとづいた報道さえままならない緊張した状態がしばらくの間つづいていた。
しかし、ある地方ニュースをキッカケに、
マローは“赤狩り”の急先鋒であるマッカーシー上院議員を自らの番組で名指しで批判し、
やがてそれは、自殺者さえ出す、権力とのTVを通じた全面対決の様相を呈してゆく……。

というのが大まかな話の流れなんだが、このテの題材を扱ったドラマのわりに、
ありがちな作家映画みたく饒舌すぎず寡黙すぎず93分とコンパクトにまとめて、
真のジャーナリズムを追求した骨のある男の心情にしても、
タバコを持つ手やくゆらす煙、または映画のタイトルでもある番組の決めゼリフ、
「グッドナイト、そしてグッドラック」と言うときのそれぞれの表情に託すなどして、
味わい深い男たちの闘うドラマには一応仕上がってはいる。
でも、それでもこの映画に映画としてのインパクトが欠けるのは、
時代の“雰囲気”はどれだけ重視していても“時代”そのものをほとんど描いていないから。
要するにこれは、先に公開され単館ながら異例のヒットとなった 『白バラの祈り』 と同じ理屈、
それが“ナチスの恐怖”を前提にして単なる一女性の“伝記映画”であったのとまるで同様で、
どうしてあの時代に“赤狩り”の嵐が吹き荒れたのかという、
時代的恐怖や人々の狂騒を“前提”で終わらせているから、
スクリーンからあの時代特有の緊張感が少しも伝わってこないってことなのだ。

こういう題材を扱うならば、
それは現代を描くメタファーとして機能しなければ映画として意味はないとボクは考えている。
それに、どこの先進国でも政府が弱体化している現代にただ“赤狩り”なんて言われても、
ほとんどの観客にはピンとこないは当たり前の話だと思うし、
まして、ネット全盛でとっくの昔にTVメディアがジャーナリズムを放棄している今の時代に、
“権力VS報道メディア”の対立を主軸にした映画なんてどうしたって時代錯誤。
政治ネタ好きのクルーニーが、
インテリ俳優を気どるための自己満足と捉えられてもそれは仕方がないだろう。
それだから全米中の“パパラッチ”から目の敵にされてしまうんじゃないのかと、
ヘソ曲がりのボクなどはそんなことさえ感じてしまった……。

先にも書いたとおり、観て損はない。オスカー作品賞ノミネートも納得の硬派な1本ではある。
だけど、これをわざわざホリエモンが戻ってきたヒルズの映画館で観るほどかどうかは……、
こんな一映画好きの戯言なんて気にせずに(誰も気にしないだろうが)各自で判断してほしい。

TOHOヴァージンシネマズ六本木ヒルズ にて公開中 ]

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