『日本沈没』 の前に日本映画が沈没!?の、爆笑ドM超怪作!

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す…凄い……酷すぎる…。
この、高校時代、物理と化学じゃ35点以上獲ったことがない、
100%文系のボクでさえア然とする科学的な説得力の乏しさはともかく、
IQゼロでも突っ込める隙間だらけのズサンな脚本。
何がなんでも恋愛映画的側面を際立たせて観客を泣かせようという国家レベルの厚顔無恥。
しかも、“二次元”の世界でしか恋愛に触れたことのない人間が考えたとしか思えない、
陳腐極まる原稿用紙1枚でこと足りるような薄っぺらいラブ・ストーリー。
そして、ホントにただよくできていると感心する程度のCG見本市による日本崩壊の映像と、
その映像が本来醸し出すべき緊張感とまるで緊張感のないドラマとの、
あまりにかけ離れすぎた温度差……。

映画生誕110年。六本木ヒルズや渋谷の109よりも、
日本映画が長い年月かけて築き上げてきたものが、
ガラガラと音を立てて崩れ落ちる様をなす術もなく見るしかないこれぞまさに’06映画大震災。
『ディープ・インパクト』、『アルマゲドン』、『ザ・コア』 など数多ハリウッド製の環境破壊映画を、
そのまま日本に置き換えて作ってしまう、これぞまさしく映画・日米同盟。
底ヌケ超大作、映像・負の遺産、映画・産業廃棄物、
どれだけ表現してもまだ足りない、こんな映画に何億も金をかけるぐらいなら、
最近の大雨で悲惨な状態になっている被災地に全額寄付してほしいと思うのは、
何もボクだけではないハズだ―。

だけど、マジで10秒に1回はツッコミどころが現れる、
前から後ろからご自由に突っ込んでくださいと言わんばかりのマゾ体質としか考えられない、
超御都合主義の顔射顔撃、間違えた乱射乱撃で見せ切るこの爆笑ドM大怪作。
その真の醍醐味は、やはり劇場の大きいスクリーンでなければ体感しえないのもまた事実。
『日本沈没』 は、ある意味この夏必見の、
批判するというよりツッコミどころを積極的に探して大いに笑いながら観るのが正しい映画だ。
まかり間違っても、最近の豪雨被害や世界各地の自然災害を見て薄ら寒く感じてしまう、
本当に目前に迫っているのかもしれない未曾有の大災害を前にした、
日本や、ボクら日本人に対する警鐘や教訓なんてものは微塵もないからそのつもりで。
もしかしたら、この映画の緊張感の稀薄さは、
なにより日本人のあらゆる面における危機意識の低さを象徴するものなのかもしれない……。

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とにかく、開巻いきなり壊滅状態になっている静岡の沼津(だったっけ?)で、
まったくレスキュー隊員には見えない柴咲コウがあたかも“007”のような現れ方をして、
草なぎくんと女のコを救うシーンで鑑賞前の嫌な予感は早くも的中。
この後の2時間を、いったいどう耐え抜けばよいのかと思案にふけるのも束の間、
その数分後には、東京のどこかの下町で、
柴咲はなんと母親の経営している飲み屋の手伝いをしているのだ!

「オイ、コウ。お前はレスキュー隊員じゃかったのか!?」

実はこのツッコミ・フレーズが、今作では至るところに登場する。

とにかく笑えて仕方ないのは、シナリオを入手して仔細に検証したいほど甘々の、
柴咲演じる玲子と草なぎ演じる小野寺の各種セリフのやりとり。
もうポイントが多すぎて憶え切れないしほとんど憶えてないんだけど、
たとえば三丁目の夕日みたいな物干し場で(静岡はあんな状態なのに)、
小野寺が玲子に、「僕は、海の深いところが好きで…あ、理科苦手なんだっけ?」
ってバカにしすぎだよっ!
しかもコウはコウで、「私理科とか数学は昔から苦手なの」って、
レスキュー隊の試験にだって記述あるだろ? 苦手とか言ってる場合じゃないと思うゾ!
と全篇にわたりこうしたヌルいセリフのやりとりが未曾有の危機そっちのけで展開されるのだ。

会いたいときにあなたはいないと言ってる恋愛モノだってあるというのに、
会いたいときにはアポなしでも必ず会える、
(しかも日本中が壊滅状態で、道路網なんてメチャメチャのハズなのに)
あんな恋愛ドラマにまかり間違っても感情移入なんてできるワケもなく、
極め付けは被災地のテントのなかで、小野寺と玲子が2人キリになるシーン。
(だからそんな暇、レスキュー隊員にあるワケねぇし、テント2人占めなんてできないだろっ!)
ここでついに2人は今まで抱えていた熱い想いを互いに交わすんだけど、
「抱いて」って柴咲! お前、周りで人がボロボロ死んでんだゾ! 言ってる場合かよっ!
しかも小野寺、一度はいきなりキスしてテントに連れ込んでおきながら「できない」って貴様!
柴咲に「抱いて」って言われて断る男なんかいるかぁ?(そんなヤツはおれへんやろ~)
それともいよいよ日本男児は“据え膳食わぬは男の恥”という言葉を忘れたかっ!?
そしてこの後に柴咲の口からついに出る「なんでぇ?」のひと言は今作最大の爆笑ポイント!
あそこで「なんでぇ?」と男に訊けてしまう女というのも果たしてどうかっ!?
このつづきはイギリスで…みたいなことを言っておきながら、
柴咲が寝てる間に残した手紙で(出た!手紙!)「イギリス行きは嘘なんだ」ってウソかよっ!
じゃあヤッとけよ! 出征前の昔の兵隊さんみたいに!(息切れしてきた)

豊川悦史と大地真央がメインの政府側の描写ももちろん腰砕け。
後1年で日本が沈没するというのに政府の災害対策本部がグラグラと揺れるなか、
真央はようやくひと言、「皇室をスイスに移して!」 って今かよっ!
人間味のない一部官僚とヒューマニズムを捨てない指導者という対比も、
取って付けたような図式で皮肉にも諷刺にも批判にもなっておらず、
けっきょく最後は安易なヒロイズムで日本はギリギリ救われましたという見事なオチ!
もちろん草なぎくんが 『アルマゲドン』 で言えばブルース・ウィリスの役!
もう書いても書いてもキリがない!

ボクは恥ずかしながら33年前のオリジナルを観ていなければ原作も読んだことがないけれど、
推察するに小松左京が描いた“日本沈没”というのはつまり“戦時下”のメタファーで、
それを現代的に解釈するなら、格差社会が広がり人同士の心が離れて、
今や隣人の顔さえわからず疑心暗鬼が蔓延している日本社会で、
もう一度日本人の心がひとつになるにはどうすればよいのかという、
それを検証するものとして今作は機能しなければならなかったハズ。
それなのにCGに頼って説得力のない物語で安易に題材を昇華させてしまったという、
その功罪は計り知れないほど大きいとボクは思うし、
観てないし読んでないけど、それはきっと原作やオリジナルに対し失礼なんじゃなかろうか?

だけど、それでも 『日本沈没』 は、
どれだけ危機的な状況でもどれほど悲惨な人生でも、
傍から見ればお笑い種、だから笑って乗り切ろうという、
そんなメッセージとして受け取ろうと思えば受け取れなくもないヘンな懐の深さは持っている。

百聞は一見である。マズは日本人ならこの話題作をその目で各自確かめるよりほかはない。
見方を変えればここまで“S魂”に火を点けてくれる映画もまたとない、これはそんな大怪作!

えぇ? ここまで言ってもまだ観ない? 「なんでぇ?」

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