大傑作! 日本が捨てた「怪獣映画」というジャンルが韓国で復活!? 『グエムル 漢江の怪物』!

画像

「怪獣映画」、と言えば、
日本が生んだ世界に誇るべき映画ジャンル。
そのわりに多くの人は、「怪獣映画」を単なる子供騙しや、
いわゆる人間ドラマよりもレベルの低いものと考えていて、
まぁ「怪獣映画」が子供向けとして作られる場合が多いのは確かだし、
それは娯楽の中心が映画からTVへと移行した時代の影響でもあるから仕方がなぃんだけど、
しかし「怪獣映画」が人間ドラマよりもレベルが低いだなんて発想は大きな間違い。
「」の中身を“アニメ”や“SF”や“ホラー”に置き換えてもまた然り。

本をただせば“怪獣”という発想は、古来より日本人の生活や信仰に大きく影響してきた、
地震や洪水、火山の噴火など多くの自然災害のメタファーで、
神話に出てくる“ヤマタノオロチ(八岐大蛇)”なんかは多分それ。
現代になりそれは核兵器など進化しすぎる科学への警鐘という意味も持った。
“ゴジラ”が口から放射能を吐くのはその象徴なんだ。
だから、「怪獣映画」が災害や有事を前にしたのと同じ人間ドラマを内包するのは当然で、
それをわかりやすく子供に伝えるというのもこのジャンルのれっきとした使命であるワケ。
ザクッと総括すればよくできた「怪獣映画」というのは、
同時に秀逸な人間ドラマと定義することも可能というのが、ボクのこのジャンルの捉え方。
怪獣も、それからアニメもSFもホラーも決してオタクの“オモチャ”じゃないんだ。

そんななか、あらゆるジャンルで軒並み上を行かれているお隣・韓国映画に、
超一級の芝居と超一級の演出によるパワフルな見せ場見せ場の連続で、
そうした「怪獣映画」のまさに真髄を見せてくれるトンデモナイ大傑作が誕生した!
それがこの、『グエムル 漢江〈ハンガン〉の怪物』

本国ではあらゆる興行成績を塗り替える空前の大ヒットを記録すると同時に、
キム・ギドク問題などをはじめ多くの社会論争を巻き起こし、
また一部、ネットの底の、底の、そのまた底の、
それこそ“下水溝”レベルで不毛な盗作論争までが繰り広げられている本作。
しかしそれらを踏まえ、もしくは抜きにしたとしても、
ごくごくフツーの映画好きならば、この映画が真に“韓国”らしい骨太な韓国映画であることも、
そして明確で高い志を持った立派な「怪獣映画」であるということも歴然と理解が及ぶハズだ。
スカした恋愛映画や胸クソの悪くなるようなお涙頂戴が平然と評価され、
「怪獣映画」なんかただの子供騙しと、
自国の遺産を捨て去ったこの国で本作がコケることなんて最初から予想がついたことだけど、
本当に面白ぇ映画を観たいと望むなら、何がなんでもこの映画をリストから外しちゃならない!

画像

 ソウル市街を流れ、韓国で最も大きく穏やかな大河・漢江(ハンガン)に、
 突然、謎の巨大な怪物(グエムル)が現れ、畔にいた人々を襲い始めた。
 河川敷で売店を営むパク家の長男カンドゥ(ソン・ガンホ)の中学生の娘、
 ヒョンソ(コ・アソン)もカンドゥが手を放した隙に怪物にさらわれてしまう。
 カンドゥは、怪物と間接的に接触したとして、
 妹ナムジュ(ペ・ドゥナ)らとともに病院に隔離されていたが、
 携帯電話に娘からの連絡が入ったことから、一家で脱出を試みる……。

河川敷でのどかな休日を過ごす人々が河に巨大な影を見るという、
“基本的”な怪獣の登場シーンからもう、スクリーンに目はクギづけ。
ラストまで、クギづけにされた視線が一瞬たりとも逸れることはない。
『ロード・オブ・ザ・リング』 なども手掛けた精鋭スタッフによる驚異のVFX映像は、
いぃ意味でのアジア的チープさと相まって妙なリアル感を醸し出し新鮮でド迫力。
韓国の怪獣映画と言えば、5年前に公開された韓米合作による1本、
『怪獣大決戦ヤンガリー』 を思い出すが(日本公開版エンディングは「特撮」!)、
それとは比較にならないぐらい映像面での躍進ぶりには目を見張るものがある。

父親の世話ばかりになり、いい歳していかにもいそうなダサぃ金髪頭のダメ中年、カンドゥは、
なんの因果かできてしまい、しかし優秀に育った娘のヒョンソだけは父親らしく愛していた。
河川敷にグエムルが上陸して人々を襲い始めたとき、
そんなカンドゥはアタマが悪い分娘を守るために半ば“本能”で立ち向かってしまい、
案の定それは仇となりまんまと娘をさらわれ、軍からは一家まとめて隔離扱いされてしまう。
そこからノンストップで始まる一家のヒョンソ救出の物語……。
“怪物出現”という降って湧いたようなある意味天災、ある意味人災を前に試される家族の絆、
極限状況にしてはじめて露わになる、父子の愛情、兄弟間の確執、家族それぞれの劣等感、
シリアスとユーモラスの絶妙なバランスのなかで描かれるそんな家族の肖像は、
すっトボケた笑ぃの裏に胸苦しくなるような切なさを秘め現代社会の一断面を覗かせてくれる。
そうした時代を見据えたドラマが軸にドッシリと腰を据えているからこそ、
表層的な見た目重視の特撮モノであっても映画としての空廻りを起こさない。
これが、「怪獣映画」の基本なのである。

グエムル騒動に沸き立つメディアに、アメリカ軍の危険な対処法に右往左往する世論。
その描写はテロや“SARS”など、ワケのわからない事態を前にしたときの、
群衆の一過性のヒステリー状態とまるで同質。
要はこの映画が全体像として描いているのは、
予期せぬ災害が起こったときの、政府、メディア、一般人をひっくるめたヒステリックな狂騒曲。
そのメタファーとして機能するからこそ、「怪獣映画」はドラマとしても成立するのだ。
そしてその狂騒曲の気質的な荒々しさはまさしく韓国的だし、
それは皮肉にも、本作そのものを取り巻く韓国国内の状況をも象徴しているとは言えまいか?

ソン・ガンホ演じるカンドゥはじめ登場人物それぞれに見せ場があり、
映画全体をグイグイと引っ張る緊張感はサスペンスとしても超一級。
芝居、演出、映像と、見事なトライアングルで3拍子が揃った上に、
意表を突くテイストの音楽もテーマをズバリ表現していて絶妙の味。
とにかく腹に溜まる面白さを徹頭徹尾追求したまさに「娯楽映画」とはコレである!

今年の春先に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、
イチローは韓国野球に対し、「向こう30年、日本には勝てないことを思い知らせる」
と発言して物議を醸したが、しかし、これは断言できる。

本作、『グエムル 漢江の怪物』 の出現により、
向こう30年、日本映画は、韓国映画には勝てない。

ボクは、本作を、断固支持する!

新宿グランドオデヲン座 ほかにて公開中 ]

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0