ブラジル発の一家総出型ロード・ムービー、でも… 『Oi〈オイ〉 ビシクレッタ』

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こうして日本で慎ましく暮らしていると、
海外を独りポッチで旅するなんてえらく大層なことに思えるし、
実際、それは確かに大層なことで自分でもよくやってたなと、
早くも20代を懐かしむ自分が情けなかったりするんだけど、
しかし、いくら独りで旅していたとはいえ、所詮ボクなんかは、
金を払って乗ればとりあえず目的地まで連れてってくれるバスでの旅だったので、
たとえば旅先で、荷台にテントを括り付けて自転車で旅をしているなんて猛者に逢うと、
「はぁ~大ぇしたモンだ」と自分の旅がずいぶんスケールの小さいものに思えたモンである。
(但し、バスはバスでもツーリストバスはいっさい使わず、
 すべて地元のローカルバスで。“深夜特急”世代なので)
雨が降ろうが槍が降ろうが延々と自転車である。
目的地までの距離感だって把握しにくいだろうし、
疲れたからといってバスのようにすぐに眠れるワケでもないし、
なにより毎晩毎晩テントを組み立てるというだけでも面倒なことこの上ない。
自転車で旅をするなんて本当に無条件でリスペクト!
実際そんな人は、“旅人”としての深みと奥行きが違った。

で、この 『Oi〈オイ〉 ビシクレッタ』 というブラジル映画。
モチーフになっているのはなんでも実話のようなんだけど、
これが、ブラジル北東部から大都会リオ・デ・ジャネイロまで、
月収1000レアルの仕事を見つけるという一家の大黒柱たる父親の明確な大義のモト、
単身赴任はままならんと家族総出で経費削減のため自転車で移動したという、
さすがは「南米か!」(トシ)というぐらいのダイナミックな逸話。
旅の途中の食費とかのことを考えればバスで移動した方が安上がりでは?などと、
そういうロマンのないことを言ってはいけない。言ってはいけないし、
途中かかる経費もすべて、キレイな母親が歌を歌うなどして稼いでいる。
日本なら充分、1クールTV番組になりうるモノ凄い一家の話だ。
しかし、それを映画でウマく表現できたかどうかとなるとそれはまた別の話なワケで……。

深呼吸したくなるような南米の真っ青な空をスクリーンいっぱいに広げ、
荒野を貫く一本道を、家族仲良く自転車で走る姿を空撮で捉えて、
そしてラテンの国らしく血の濃いぃ家族の葛藤と絆の物語と、
映画の“素材”そのものは魅力的なことこの上なく、
役者もウォルター・サレスの傑作 『ビハインド・ザ・サン』 のヴァグネル・モーラや、
『クアトロ・ディアス』 に出ていたクラウジア・アヴレウを揃えるなどして、
近年、隆盛目覚ましいブラジル映画の品質を誇示するような本気度で、
チョット下世話な言い方をすれば、これはおそらく国際市場も視野に入れた、
言うなれば 『モーターサイクル・ダイアリーズ』 にも似た“今流”のブラジル映画。
たとえば 『セントラル・ステーション』 が好きな人なら、見た目的には鉄板とさえ言える1本だ。

だけど、どこの国でも映画の相対的なレベルが上がってくるとよく見られる傾向で、
本作も同様、カメラワーク等スタイルにこだわりすぎでどーにもドラマが薄味なのだ。
本作の主軸は、家族全体のドラマというよりその中の、
父親と長男の、父子を超えた男同士の葛藤と理解の過程がその多くを占めると思うんだけど、
その肝心の2人のドラマに、なぜかグッとくるものが感じられなかった。
それはモーラ演じる父親があまりにもクールに構えすぎていて、
勝手な要求なんだけど、家族を引き連れ自転車で旅をするという豪快さのワリには、
何がなんでも死に物狂いで家族を養う!という“父ちゃん”的な熱さがなかったからじゃないか?

町の女のコを気にしてみたり、水商売の女に惚れてみたり、
イカ臭い季節を過ごしつつある長男の物語にしても、
それはトルナトーレの 『マレーナ』 のように魅力的なハズなのに、
上っ面を描くだけで青春ドラマとしての土臭さや青臭さが物足りず印象は中途半端。
せっかく 『チャイナタウン』 みたいな制裁を受けたり(観ればわかる!)、
女にパンチ喰らったりとずいぶんガンバっているのに……。
それになによりこの父親、グチったり憂いたりするばかりで自分は全然性根入れて働かない!
それがブラジル式の“家族の肖像”なのか!? 俺なら愛想尽かすゾ!

自転車で3,200㌔を走破!という部分にしてもカタルシスはまるで感じられないまま、
なんだかアッサリとリオに着き「もう旅はゴメンよ」という母ちゃんのひと言で、
Oi〈オイ〉というより「オイオイ」という感じ。
自転車の前に映画そのもののチェーンが外れてしまっているという印象はどうしたって否めない。

題材だけを聞けば風変わりで興味深い家族型ロード・ムービーなだけに、
何か途轍もなくモッタイないという印象ばかりが強く残る作品だった……。

ところでこの映画、上映館が初めて出向くシネマ・アンジェリカと聞いて、
どこそれ?と思っていたら、なんだシネマ・ソサエティの後身じゃないサ。

いずれにしても、マークシティ横の坂道を登るだけでも息がぜぃぜぃ切れるんだから、
ボクに自転車旅行は無理だと悟ったの!

シネマ・アンジェリカ(渋谷) にて公開中 ]

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