プラダを着た悪魔のいけにえ!? 『プラダを着た悪魔』

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そりゃ興味がないワケじゃないけれど、
しかしどちらかと言えば“ファッション”なんてものには滅法、疎く、
当然ファッション誌を読み込んで自分をコーディネートしたことなどない。
ファッションの参考にするとすればそれは、電車の中とかで、
「あ、この人カッコいぃな」と思った人のを自分に当てはめて想像するくらいで、
なにせ目の前で動く生きたサンプルなので想像しやすく服選びの参考にしやすい。
ファッション・ブランドなんて名前を聞いてもチンプンカンプンだしコダワリとかもとくになく、
唯一、コダワリと言えば年がら年じゅうジーンズしか穿かないことで(単に物臭なだけだけど)、
(ジーンズじゃなくデニムと書くべきなんだろうけど無理した感じを見透かされるのも嫌なので)
できれば、白髪頭のじじぃになっても下はジーンズで通そうと決めているし、
ジーンズも、もうリーバイス以外は穿かないことに決めている。
しかしそれはリーバイスの何が好きとかそういうことよりも、
そうやってあらかじめ決めておけば、買いに行った時に悩む範囲が狭くてすむから。
服選びに時間をかけるってのもまたボクは苦手なのだ。
そして一度気に入ったものはシャツでもジャケットでもジーンズでも着れる限りは着続ける。
それは物臭である以上に、体型が変化していないことを簡単に自覚することができるからで、
最近、ウエスト廻りが若干ダラシナクなりメタボリックなんて言葉も気になってきたんだけれど、
とりあえず、5年前と服のサイズは変わってない。

とまぁ、ボクが自身のファッションについて語れることと言えばせいぜいこんな程度だし、
だから、こんな、『プラダを着た悪魔』 なんて、
押切もえを宣伝キャラクターにしているオシャレそうな映画、当然ボクには無縁だと思ったし、
“プラダを着た悪魔のいけにえ”というならともかく全然興味なんてなかったんだけど、
ホラ、そろそろ飲み会など増える時期である(別に予定ないけど)。
ホラーばかり観ずに時にはフツーに女のコと共有し合える映画を観ることも必要かと思ったし、
(まぁこうしたタイプの映画でさえ独りで観に行っていることに病巣の根の深さを見るんだけど)
なにより、自分には似合わなぃと思っていた色が着てみたら意外とそうでもなかったと同じで、
興味がないと決め付けていた映画に限って実は観てみたいと反面、思ったりするもので、
さほど混んでもなさそうだったのでプラッと観に行ったんだけれどこれがやっぱり意外や意外。

この映画、そりゃ見た目はいかにもファッション至上の女のコ、
それこそ読者モデル志願者みたぃな女のコたちをピンポイントで狙ったような装丁だけど、
ところがそんなファッションを学びたいとか、オシャレな映画を観たいとかいうタイプよりも、
それこそYシャツの襟元を汗で滲ませ、ストッキングが伝線していることにも気がつかず、
男女を問わずガムシャラに理不尽な社会で働いているそんな人たちにこそ向けられた、
野暮ったいくらぃにストレートな夢と仕事を天秤かけりゃ、みたいなド根性ドラマの快作だった。

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 ジャーナリストを目指してNYまでやって来たアンディ(アン・ハサウェイ)は、
 オシャレにはまるで関心がなかったが一流ファッション誌「ランウェイ」の面接を受ける。
 運良く編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタントの仕事を手に入れる彼女。
 しかし、翌朝から、24時間公私の区別なく携帯が鳴り続ける悪夢の日々が始まった……!!!

とにかくヒロイン、アンディを演じたアン・ハサウェイが超が付くほど魅力的。
『ブロークバック・マウンテン』 ではただ1人演技賞にシカトされ、それは演技以前に、
あまりにわかりやすい作りをした彼女の大きな瞳と口がネックになっていたと思うんだけれど、
しかし本作は、間違いなく彼女の魅力があってこそはじめて成立する映画になっている。
アンディはランウェイで働くまで、そんなファッション雑誌を軽薄なものとバカにし、
そして、それに振り廻される女たちのこともどこかで見下していたんだけど、
その後につながる夢のためとどんなにミランダにイビられても涙に暮れながら働くうち、
ハタと発想を切り替えて自分もプラダのファッションに身を包んでみるとこれが意外や意外。
もとより可愛い顔立ちの彼女にさらに美しさが加わって周りも驚くような変身ぶりで、
そこから彼女は、辛い仕事の日々のなかにも自分の活路をうまく見つけ出してゆく。
自分の主義主張やスタンスばかりに固執せず、
時には相手の懐に入ることも仕事を円滑に進めるひとつの手段と、
いまだ社会に迎合できずかつては突っ撥ねるようにして、
サラリーマンを辞めた経験のあるボクなんかも耳の痛い話だけど確かにそう思います……。

だけど、そんな展開に素直に納得できるのも、
要はハサウェイがプラダを決めてもツンとならず、可愛いままの顔立ちをしているから。
ここでツンとなってしまう女優だと話はおジャンになってしまうワケ。
しかし、ボクのようにファッション・センスの稀薄な男からすると、
今日び街を歩いていて道行く人なんて男性にしても女性にしても、
みんなオシャレでカッコよくセンスもあるように思えるし、
だからアンディが初めに着てたセーターなど可愛いと思ったんだけどそりゃ元がいいからか!?
とにかく、そんなラフなファッションからブランドで完全武装に至るまで、
着せ替え人形の如くいろんな姿を見せてくれるハサウェイだけで男的には最後まで飽きない。
「かぁいぃなぁ~こんな彼女ほしぃなぁ~」と見惚れることしきり(注:可愛いじゃなくかぁいい)。

彼女に相対する“プラダを着た悪魔”、鉄面皮の鬼上司ミランダを演じたメリル・ストリープも、
名女優の貫禄はそのままに、しかし貫禄のなかにも軽さを漂わせながら好演。
この脚本でいいと思うところは、そんな悪魔のようなミランダにも、
実はこんな弱い一面が……とベタな展開を匂わせておいて、
しかしやっぱり最後の最後まで氷のような女で一貫させているところ。
また、男的には上記の2人に加えて、アンディに時に厳しく仕事の本質を諭しながらも、
要所要所で彼女に的確なアドバイスを与え、
そして自身も苦汁を舐めながら、それでも耐えて仕事に身を捧げるナイジェルのキャラだろう。
超豪華でその分おぞましいファッション誌業界に身も心も馴染みながらも、
彼の哀愁漂う姿に世の中間管理職のオジサンたちは泣いてしまうんじゃなかろうか。

ラスト、(無意識に)先輩を蹴落とし、彼氏と破局してまでミランダの信頼を勝ち得たアンディは、
しかしミランダから予想外の言葉を聞いてついに反旗を翻す。
一見、痛快な逆転劇で胸がスッとする展開なんだけどなぜだかボクはそこで、
ライナー・ヴェルダー・ファスビンダーの、『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』 を連想してしまった。

まぁボクがアンディの立場だったら、きっと1日と保たないと思うし、
嫌な上司には楯突いてナンボ、なにより従業員に平気でサービス残業させる会社なんて、
遅かれ早かれ潰れるに決まってるんだからサッサと辞めちまえばいいのにと、
よくTVを観ながら思ったりするんだけどとりあえず多くの人が共感できることウケアイの好篇。
(でも、ミランダは多くの人に恨まれている分、多くの人に感謝もされているような気がした…)

マジメな話、この映画を独りで観に行っているのなんてボクと、
歌舞伎町界隈を根城にしているオッサンたちくらいのモンだったけど、
それだけを理由に観逃してしまうのはなんとも惜しい、この秋良質な1本だ。

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