心温まるロード・ムービー型ホームコメディ 『リトル・ミス・サンシャイン』

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現在、実家がある名古屋方面に帰る時は、
コスト削減により、新幹線ではなくて高速バスを使う。
かつては海外で三日三晩バスに乗り続けても体力保ったのに、
最近じゃ東京―名古屋間のたった5、6時間が体に堪えるようになってきた。

バスの中でひとしきり眠り、本も読み飽きて、窓からボンヤリ外を眺めていると、
この時期はとくに家族連れの車が何台も何台も脇を走り過ぎてゆく……。
疲れているのか全員が黙って前を向いているだけの家族もあれば、
後部座席で子供がテンション上がってハシャギまくっている家族もあり当然その風景は様々。
すれ違うだけ“家族の肖像”が垣間見え、眺めているだけでしばらくは飽きない。
子供の頃、こんな風景に憧れていたなぁ…と、少しセンチになったりもして―。

格差社会だなんだとメディアが率先して差別を煽り、先の見えない世の中だけど、
そんなクダラナイ言葉はけっきょく家族のカタチには何も関係がない(と思う)。
勝ち組を目指そうとたとえ負け組に括られようと“家族”なんて永久に不完全なままだ。
そんななか、今にもエンジンが止まって壊れそうな不完全にもほどがあるボロボロの一家が、
美少女コンテストで優勝することを夢見る娘のために家族総出で、それこそ、
家族を象徴するようなポンコツ・ワゴンに同乗して旅をするロード・ムービー型ホームコメディ、
それがこの、『リトル・ミス・サンシャイン』

決して名作でもなければ傑作というワケでもないけれど、
不完全な家族の不完全なままの魅力にほんの少しだけ胸が詰まり、
「いいんじゃないのこんなモンで」という決して卑屈じゃない開き直りが心地好い、
今年1年を締め括るには適度な温度の好篇と呼べる仕上がりの1本だった。

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 小太りの眼鏡っ子、オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は、
 美少女コンテストで優勝すること。運良く地方予選で繰り上げ優勝した彼女は、
 独自の成功論に取り憑かれる父・リチャード(グレッグ・キニア)や母・シェリル(トニ・コレット)、
 そして自殺を図ったゲイの伯父・フランク(スティーヴ・カレル)らとともに、
 1台のミニバスで決勝大会の開催地を目指す小旅行に出るのだったが……。

浅はかな勝ち組志向に縛られる父親、ジャンキー崩れのじいさん、
思春期らしく家族を毛嫌いして“ニーチェ”を気どる息子に自殺未遂のゲイの伯父、
そんなバラバラの一家をなんとかまとめようと躍起になる母親にボクの姪っ子と同じぐらい、
いかにも「オシャレ魔女 ラブandベリー」にハマッてそうな健気な娘……。
こうして挙げるといかにも家族の不協和音をあざとく煽った映画に思えるけど、
しかし映画は過剰にそんなフーヴァー一家の不完全ぶりを強調することはなしに、
サッサと一家をワゴンに詰めて、コンテスト決定戦の開催地へと走らせる。

たとえば 『スケアクロウ』 や 『ハリーとトント』 を彷彿とさせるような、
往年のアメリカン・ニューシネマ調のロード・ムービー、そのアッサリ感がことのほか心地好く、
一旦停止するたびにいちいちクドクドやダラダラもしないから、
エピソードの数珠つなぎであるロード・ムービーの体がとても読みやすく読後感の好い、
短篇小説集のような肌触りになっていてまるで疲れないのがとにかくうれしい。
これがたとえばヴェンダース調のロード・ムービーだったらウザくてゲンナリしたことウケアイ?

この映画で描かれているのは、
勝ち組礼賛社会へのアジテートでもなければ“ボロは着てても心は錦”的貧乏擁護でもなく、
極めて現代的な家族の在り様を通して見る“なんでもアリ”の楽しさ、そして面白さ。
要は価値観の多様化を謳うワリに人目を気にしてイメージに縛られやすい、
現代人に対する自虐を含めたチョットした皮肉じゃないかと思うんだ。
そしてそれが小気味好く炸裂するクライマックスはベタだけれどやっぱり痛快で、
今年の“ジョンベネちゃん事件”犯人誤認逮捕に関する一連の騒動で、
世界中を呆れさせた厚顔無恥大国のアメリカにも、こうした、
まともな神経を持った人間がいることを教えてくれて(当然だけど)そんな部分でもホッとする。
まぁ少子化を逆手にとって子供をターゲットにしたビジネスが跋扈しすぎな感もある、
日本はアメリカのことを今に笑ってられなくなるような気もするけれど・・・?

しかしそんな心配はとりあえず置いて、
クセのある演技陣の顔ぶれとクセがあるようでない物語とのブレンドが、
ほどよく腹八分目の満足感を与えてくれて真に良心的な佳篇。
この時期、冬休みを狙ってオセチのように大味な映画も増えるなか、
大作映画にもオセチ料理にも食傷気味になりそうな人にはもってこいの小品だ。

シネクイント(渋谷)、シネ・リーブル池袋 にて公開中 ]

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