極私的・2006年公開映画ベスト10選 【外国映画篇】

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① 『ホステル』 監督/イーライ・ロス(2005・米) [記事]
● 『ミュンヘン』 監督/スティーヴン・スピルバーグ(2005・米) [記事]
● 『SPL 狼よ静かに死ね』 監督/ウィルソン・イップ(2005・香港) [記事]
● 『プラハ!』 監督/フィリプ・レンチ(2001・チェコ) [記事]
● 『ナイロビの蜂』 監督/フェルナンド・メイレレス(2005・英) [記事]
● 『ココシリ』 監督/ルー・チューアン(2004年・中国) [記事]
● 『2番目のキス』 監督/ピーター・ファレリー、ボビー・ファレリー(2005・米) [記事]
● 『グエムル 漢江〈ハンガン〉の怪物』 監督/ポン・ジュノ(2006・韓国) [記事]
● 『レディ・イン・ザ・ウォーター』 監督/M.ナイト・シャマラン(2006・米) [記事]
● 『スネーク・フライト』 監督/デイヴィッド・エリス(2006年・米) [記事]

たとえば「ベスト10」というのは多くのデータを集計してはじめて面白くなるものであり、
それを独りでランキングしたところで何も意味をなさないことにめでたく気がついたので、
一等、面白かったと思う①以下は単に鑑賞順。

『ホステル』 は、
超が付くほど陰惨で苛酷なスプラッターとしての衝撃度、という以上に、
“極めてオーソドックスな娯楽映画の教科書”的至極、真っ当な面白さがあり、
一度目よりも二度目、二度目よりも三度目と、
観れば観るほどに痛快な映画体験を久々に与えてくれた2006年ブッチ切りのベスト作!
なにより、“東欧を旅するバックパッカー”が散々な目に遭うという設定は、
実際にかつて“東欧を旅するバックパッカー”だったボクには途轍もない臨場感で、
ヘタをすりゃトラウマ化必至だったんだけどそこがまたなぜか心地好く忘れられない……。

『ミュンヘン』 は、
『シンドラーのリスト』 でオスカーを獲った男だからこそ描けた衝撃のアンチ・ユダヤ映画。
テロリストの心情に肉薄することで民族国家のイデオロギーに問題提起を仕掛けた傑作で、
これもまた内容以上に抑制が効いている分スピルバーグの残酷ぶりも 『宇宙戦争』 以上、
巨匠の残酷な本性に較べれば、所詮ミヒャエル・ハネケなんゾは幼稚園のお遊戯レベルだ。

『SPL 狼よ静かに死ね』 は、
近年、隆盛目覚ましいタイ製アクションの即席沸騰型カタルシスと比較して、
香港“老舗の味”を存分に見せつけてくれた酸欠必至の大傑作!
怒涛のアクションと対をなす超ハードな野郎どもの破滅へのドラマも凄まじいのひと言。

『プラハ!』 は、
まさしく 『シェルブールの雨傘』 級のミュージカル映画の新種にして、
トロケそうなほど甘くホロ苦い青春映画の傑作。
野暮ったさも胸をくすぐる天まで突き抜けるように爽快で前向きなカタルシスに較べれば、
所詮、日本の“嫌われ○○”など荒稼ぎしてすぐ消える下品な違法ショーパブみたいなモン。
加えて、個人的にチェコびいき♪

『ナイロビの蜂』 は、
これは謳われたようなラブ・ストーリーでもなければ善悪について説教する映画でもなく、
超一級のハードな政治サスペンスをベースにした「幻の女」系の“正統派”ハードボイルド!
子供にはわからない大人のための娯楽映画だ。

『ココシリ』 は、
下界の常識など通用しない海抜5千m級の秘境が舞台の傑作チャイニーズ・ウエスタン!
チャン・イーモウ( 『単騎、千里を走る。』 )とチェン・カイコー( 『PROMISE 無極』 )という、
長らく中国映画を牽引してきた世界の両巨頭があえなく揃って討ち死にしたので、
この気鋭の才能には今後も要注目。ただし、こういう映画のある部分を見て、
いまだにこれは中国のプロパガンダ云々と気の抜けるようなことを言う人がいるけど、
そんなモン中国検閲の目を欺くためのチョットしたテクだということにいい加減気づいてほしい。

『2番目のキス』 は、
“メジャーリーグ”ネタに若干詰まりはするものの、
“趣味”と“恋愛”の両立という余暇を重んじる男にとっての(女も?)普遍的なテーマを、
男のツボを刺激しながら決して女性を見下さず最高のハッピーエンドへと昇華してくれる、
隠れ巨乳、じゃなくて隠れ巨匠、ファレリー兄弟の最高傑作!
同日公開(昨年7月8日)の日本映画、『ゆ○る』 の影で、
アミューズCQNのいちばん小さくてキズのあるスクリーンにかけられただけで終わったという、
昨年、最も不遇な扱いを受けた1本。プンプンッ!

『グエムル 漢江〈ハンガン〉の怪物』 は、
これが面白くないと言うのならほかにいったい何が面白いのか教えてくれ!
そう叫びたくなるほどにクソ面白いアドレナリン大放出は確実の名実ともに怪物映画。
昨年春の「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」で、イチローは韓国に対し、
「向こう30年、日本には勝てないことを教えてみせる」と豪語して大いに物議を醸したが、
こんなに凄い映画を見せられたら、向こう30年、日本映画は韓国映画には勝てない……。

『レディ・イン・ザ・ウォーター』 は、
まさしく観る者の想像力とイノセンスを問う、「物語」映画の原点的傑作ファンタジー。
子供の頃、家と学校と近所の空地の間の小さい範囲がしかし世界の全部で、
そしてそのなかで「ヒーロー」を夢見た記憶のある人には涙なしじゃ観られない大傑作だし、
そういう意味じゃコレは、シャマラン版の 『カンフーハッスル』 と言えるかもしれない。

『スネーク・フライト』 は、
“航空パニック・アクション”と“動物パニック・アクション”を強引に併せるという驚愕の設定を、
サービス満点のバカと悪趣味とナンセンスで奇蹟的な面白さに仕上げた超A級のB級映画!
けっきょく映画なんてこれでいいんじゃないか?という、
“悟り”にも似た境地が清々しい2006年屈指の豪腕怪力大快作で最高に面白い1本だった!



ほかには、デヴィッド・クローネンバーグとブライアン・デ・パルマという、
映画を一生懸命、観始めた頃に大好きだった両巨頭が久々に本領を発揮してくれた、
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 と 『ブラック・ダリア』 もハズせない傑作だし、
アン・リーの 『ブロークバック・マウンテン』、マルコ・ベロッキオの 『夜よ、こんにちは』、
ニール・ジョーダンの 『プルートで朝食を』、ラッセ・ハルストレムの 『カサノバ』、
アレクサンドル・ソクーロフの 『太陽』、イングマール・ベルイマンの 『サラバンド』、
ホウ・シャオシェンの 『百年恋歌』 に、ケン・ローチの 『麦の穂をゆらす風』 と、
世界の名だたる名匠・巨匠たちが鉄板の仕事ぶりを見せてくれたことでも印象深い年だった。

そして当然、
クリント・イーストウッドの 『父親たちの星条旗』 と 『硫黄島からの手紙』 の“硫黄島二部作”。
個人的には 『~の手紙』 にやや不満が残ったものの、それでもこの2本が公開されたことは、
ボクを含めた多くの日本人が“はじめて”硫黄島について知るキッカケになったという一点で、
その功績は計り知れないほど大きかったと思う。
そしてとくに昨年は、「戦争」や「テロ」「紛争」に関する映画が多かった気がするんだけど、
その硫黄島二部作と比肩して、『ホテル・ルワンダ』 や 『イノセント・ボイス 12歳の戦場』 も、
悲劇の“構図”を浮き彫りにして客席に訴える観る意義の途轍もなく大きな力作だったと思う。

また、2006年はホラー映画、というよりもスプラッター映画の当たり年。
『ファイナル・デッドコースター』 や 『ソウ3』 は残念賞、
『ハイテンション』 や 『テキサス・チェーンソー:ビギニング』 は敢闘賞どまりだったけど、
『ディセント』 なんかは設定の低俗さも含めて粘着質のゴアぶりがなかなかソソってくれたし、
ゴア度は低くも 『機械じかけの小児病棟』 は、
オーソドックスな怪談話の面白さで及第点のデキだったと思う。
タイの 『心霊写真』 と韓国の 『鬘 〈かつら〉』 という、2大アジアン・ホラーの佳作も忘れ難い。

そして“アジアン”と言えば馬場園・隅田じゃなくベストに挙げた 『SPL』 に追随するカタチで、
『SPIRIT』、『トム・ヤム・クン!』 の2本もアジアン・アクションの健在ぶりを世界に誇示したし、
アジアが誇る2人の若き巨匠、キム・ギドク( 『うつせみ』 『弓』 )とツァイ・ミンリャン( 『西瓜』 )、
それぞれの孤高を目指したやりすぎテイストも痛快で互いに最高の仕事ぶり。

さらに当たり年と言えば昨年はもうひとつ、ドキュメンタリー映画の当たり年でもあった。
『送還日記』 と 『めぐみ―引き裂かれた家族の30年』 の2本は、今思えば併せて観ると、
隣の“無法者”国家・北朝鮮について、あらためて考えさせてくれる秀作であると同時に、
国家級の事件に巻き込まれた個人の悲しみを見つめさせてくれる珠玉のドラマだった。
そしてドラマと言えば、熾烈な音楽業界の内幕を通して、
人生の信念と妥協についての寓話的面白さのあった 『DIG! ディグ』 もなかなかよかったし、
アメリカの“ホワイト・トラッシュ”の現実を垣間見せてくれる傑作 『スティーヴィー』 は、
“ドキュメンタリー”という、ともすれば過分にいかがわしいジャンルを通し、
ひいては「映画」というものの本質を鋭く抉っていて、『ダーウィンの悪夢』 より観る価値は倍。

支離滅裂な感じで長くなったけど、最後に去年は、
『トランスアメリカ』、『40歳の童貞男』、『サムサッカー』、『リトル・ミス・サンシャイン』 など、
アメリカ映画を見直したくなるような良心的小品もいくつか気に入ったし、
パトリス・ルコントの 『親密すぎるうちあけ話』 や、フランソワ・オゾンの 『ぼくを葬〈おく〉る』、
そして 『愛されるために、ここにいる』 とフランス映画も吟味すればと大いに見直す年だった。

まだまだ上記に括り切れなかったなかにも、
『忘れえぬ想い』 『エミリー・ローズ』 『プロデューサーズ』 『クライング・フィスト』
『インサイド・マン』 『母たちの村』 『カーズ』 『もしも昨日が選べたら』
『サンキュー・スモーキング』 『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』
『トゥモロー・ワールド』 『プラダを着た悪魔』 『007 カジノ・ロワイヤル』
『スキャナー・ダークリー』 などなど、
公開本数が増えた分、観るべき映画も相応に多かった気がする。