いつか“ドリーム”をつかんでほしい“ガールズ”… 『ドリームガールズ』

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以前、勤めていた先で仲良くなった、
凄腕女性ギタリストを通して知り合った女のコが、
BO-PEEP(ボーピープ)というバンドを組んで頑張っている。
福岡から上京してきた3ピースのガールズ・ロック・バンドで、
下北や三軒茶屋を中心にかなり精力的にライヴを演っており、
思いついたようにボクにも時おりライヴの告知をくれるんだけど、
なかなかタイミングが合わずに、もうずいぶんと行けずじまいになっていた。

で、そうしてしばらくライヴから足が遠のいてご無沙汰している間に、
当の彼女たちはどんな経緯かは知らないが二度ほど渡英しロンドンでライヴを演るなどして、
そんなこともメールで知らせてくれ「はぁ~大ぇしたモンだ」と感心していたんだけど、
この度いよいよ、東京で初のワンマンライヴを演ることになったというので、
これはのん気に映画など観ている場合じゃないと先日の日曜、
下北は南口を出て茶沢通り沿いにあるライヴハウス、シェルターまで観に行ってきたしだい。

シェルターは決して大きなハコじゃないし、客層中の知り合い率も高かったとは思うんだけど、
それでも会場は隅々までいい塩梅で埋まってライヴは大盛況と言える仕上がりだった。
ステージを降りれば、普段は至ってオットリした雰囲気の彼女たちなんだけれど、
やっぱり、九州人というのは根源的に流れる血の色が濃いぃものなのか、
一旦、ライヴが始まれば、
それこそこのコたちは何か世の中に対し恨み辛みでもあるのかというぐらい豹変(?)して、
そのエネルギーが噴き出さんばかりのパフォーマンスはもうただひと言“熱い”としか言えず、
(喩えは不適当かもしれないが、“女サンボマスター”もしくは“女銀杏BOYZ”みたいな感じ)
これまで下北や三軒茶屋でいろいろといわゆるインディーズのバンドを見たりしたけれど、
中でもBO-PEEPは楽曲レベルにしてもステージングにしてもひと目で群を抜いている。
とくに、これはボクの勝手な印象なんだけれど、
やはり日本を飛び出してライヴを演ってきたというのが相当自信につながっているのだろうか、
うまく言えないが、以前の印象よりライヴそのものが外へと広がるような感じになっていて、
正直言って、もう彼女たちにシェルターや三茶のヘヴンズドアでは狭いんじゃないかと、
会場の隅の方で静かにステージを見ながらしかし鳥肌を立てながら、
ボクはそんなことを考えていた……。
(というワリに今月の「音楽と人」に載っているようなんだけどそれはまだ読んでなかったり…)

女のコが3人で地方から出てきて、おそらくは“メジャー”という大舞台を目指し、
これまでつづけてきたなかにはボクなんゾにはうかがいしれない様々な葛藤があったと思う。
それを知ることはないし、ワザワザ知る必要とてないんだけれど、
しかし何かを目指すなかで生まれる諸々の感情は、
絞り出すようなヴォーカルに、激しいギターに、重いベースに、ウネるようなドラムに、
きっと出口を封じて圧縮、濃縮されているのだろうから、
そのステージは輝くし、聴く者は胸を打たれるんだと思う。
たとえジャンルは違えども、多分音楽とはそういうものだ―。

というワケで、まるでジャンルも世界も時代も違うし、
規模とて比較にはならないのかもしれないけれど、
この、現在大ヒット中の 『ドリームガールズ』 は、
栄えあるスターダムを目指して地方から出てきた3人の女性によるコーラス・グループが、
とかく浮き沈みが激しく裏で欲望や嫉妬や憎悪が渦巻くショービジネスの世界で、
様々な確執、葛藤、挫折を経て時代を代表するグループへと成長してゆく様を描いた、
ブロードウェイの伝説的な同名舞台が元の傑作ミュージカル!

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 エフィー(ジェニファー・ハドソン)、ディーナ(ビヨンセ・ノウルズ)、
 そしてローレル(アニカ・ノニ・ローズ)の3人は、
 コーラス・グループ“ドリーメッツ”として成功を夢見、ニューヨークへと旅立つ。
 オーディションの舞台でやり手マネージャーのカーティス(ジェイミー・フォックス)に見出され、
 大スターであるジェームズ・“サンダー”・アーリー(エディ・マーフィ)の、
 バック・コーラスとして華々しくデビューするのだったが……。

ベトナム戦争のドロ沼化でアメリカの白人社会が疲弊して、
その代わりにブラック・パワーが台頭し、
モータウン・サウンドが隆盛を誇った6、70年代……。
映画は、そんな脈動する時代の雰囲気も艶やかに再現しながら、
ヒロインたる3人がショービズ界で激動の人生をたどってゆくその姿を、
スクリーンから客席に空圧さえ感じるほどのパワフルなナンバーに乗せてひと息に描き切る。

いくらなんでも、ビヨンセぐらいは知っているとは言え、
個人的なことを言えばとかく洋楽というジャンルには疎く、
ブロードウェイと言われても中野?とこんな感じなんだけど、
ドラマがしつこくならないようにキメ細かく注意しながら、
しかし舞台のダイナミズムは、おそらく過剰に意識して、
人物の感情を歌とパフォーマンスにギュウギュウに詰め込んで聴かせる、
というより黒人の本質的音楽センスにはただただひれ伏すよりほかないというほど凄まじく、
これまでに観たどんなミュージカルより突き抜けるような解放感は圧倒的で息を呑むばかり。

監督は 『シカゴ』 で脚本を担当したビル・コンドンだけど、
完全に映画畑出身の監督ということで、
作品には映画的な“引き”の構図が随所に見られて非常にバランスがよく、
どんなに劇中歌やパフォーマンスがパワフルで圧倒的でも、
とにかくアップアップの押せ押せで個人的には途中で気分も悪くなった 『シカゴ』 のように、
これ見よがしな押し付けがましさが微塵もないのが好ましい。
(なぜ下品なだけの 『シカゴ』 がオスカー獲れてこれが作品賞にノミネートされないんだ!???)

本作のために10kg減量して臨んだというビヨンセは、
しかし決して出しゃばりすぎることなく極めて好感度の高い印象を残し、
助演女優賞は当確との誉れも高いジェニファー・ハドソンも確かに超が付くほど魅力的。
黒人俳優オールスター・キャストの共演陣にもアクと同時に色気があって、
これもやはり言われるように久々にエディ・マーフィーの元気な姿が見られてうれしい限り。

スクリーンから迸る感情に五感は震え、魂を揺さぶる歌の力に心地好く全身を貫かれる。
これゾ至極健全なショービズ精神に支えられた超一級にして本物のエンターテインメント!
オスカーの行方なんてどーでもいいけどしかしほかのどのノミネート作品より必見の快作だ。



『ドリームガールズ』 とBO-PEEPのライヴ。
ジャンルも世界観も規模もまるで違うけど、
しかし音楽は、熱い“魂”からのみ生まれるということを体感する先の週末だった。
この映画はスターを目指して挫折と葛藤を繰り返してゆく女性3人のドラマ。
だけど音楽は何もメジャーばかりがすべてというワケじゃないと思う。
1人、たった1人でも、奏でる歌や楽曲に心から共鳴してくれるリスナーを得られるか否か?
人に向けて音楽を放つというその根本は、そこなんじゃないだろうか…?

とは言えボクはBO-PEEPが、いつかフジロックに立つ日を勝手に想像して楽しんでいるけど。

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