70年代ウガンダが舞台の 『ホステル』 級ホラー!? 『ラストキング・オブ・スコットランド』

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周知の通りで今年の第79回アカデミー賞は、
マーティン・スコセッシの 『ディパーテッド』 がオスカーという、
なんだか、膝カックンされるような結果に終わったんだけれど、
まぁ、賞レースがいよいよ盛り上がろうというその要の時期に、
本国じゃ何週かにわたり興行成績1位をキープし続けていたし、
キャストの充実ぶりやハリウッド十八番のマフィア映画という見た目の派手さを考えれば、
昨年の 『クラッシュ』 に一昨年の 『ミリオンダラー・ベイビー』 と、
ここ最近、ワリと地味な映画のオスカー受賞がつづいていたこともあり、
質より量のバランスで見た順当な結果だったと思えばそう思えなくもない。
(今頃“神輿”に乗せられるスコセッシというのもなんか憐れな感じだったけど)

で、『硫黄島からの手紙』 が 『ディパーテッド』 に並んでノミネートされたり、
助演女優賞ノミネートで一気に内外に名前が知れ渡りブレイクした菊池凛子効果で、
例年になく日本の一般メディアでも今年のオスカーはよく話題に挙がり面白かったんだけど、
そんななかで、どちらかと言えば平均して質より量で見なされる作品賞と対をなすように、
ワリとコチラは派手さよりもしっかり質で評価されるといった印象を感じるのが演技賞。
これも菊池凛子との対決という煽りで注目を浴びたのは、
助演女優賞のジェニファー・ハドソン( 『ドリームガールズ』 )だったんだけど、
その“黒い森三中”みたいなハドソンの隣でかなり地味に主演男優賞として並んでいたのが、
コチラはまるで“黒い笑福亭鶴瓶”のような見た目の黒人俳優フォレスト・ウィテカー。

その該当作品である、本作 『ラストキング・オブ・スコットランド』 は、
そんなウィテカーがかつて実在したアフリカはウガンダの“人食い大統領”、
イディ・アミン(在位:1971~79年)を熱演というより怪演したある意味衝撃の1本だ。
どう衝撃かと喩えれば、それはこの映画でウィテカーがオスカーを受賞したというのは、
10数年前に今や香港映画屈指の名優、『インファナル・アフェア』 のアンソニー・ウォンが、
『八仙飯店之人肉饅頭』 で香港のアカデミー賞の主演男優賞を獲ったみたいな感じ(か?)。

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 1971年、スコットランドの医学校を卒業したニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)は、
 医師として働くために渡航していたウガンダの小さな農村である日、
 軍部クーデターにより政権を奪取したばかりのアミン新大統領の演説を聞きに行く。
 ところが、その帰り道で彼は偶然にも大統領の捻挫を治療することになり、
 大統領に気に入られたニコラスはそのままアミン一家の主治医となるのだったが……。

アミンと言えば 『食人大統領アミン』 というカルト映画もあるようで、
あいにくボクはそれは観たことがないんだけど、要するにこの映画は、
スコットランドで医学校を卒業した青年が溢れる若さと野心をベースに、
好奇心半分、冒険心半分、しかし博愛精神いっさいなしの、
単なるノリでなんの思い入れもないウガンダを渡航先に選び、
案の定、持ち前である順応性の高さとバイタリティを鼻にかけ、
現地の女性ともうまくヤり世話になっている白人医師の熟女奥様にも手を出そうとして、
心のどこかで途上国を見下しながらズケズケと現地の生活に溶け込んでゆくも、
ある日、ひょんなキッカケからアミンの目に留まってそのまま側近となり、
アミンのカリスマ性に惚れ込んでいよいよウガンダの政情にまで踏み込んでいけばさァ大変。
今度はしだいに独裁性を発揮して暴走を始めるアミンの狂気に絡め取られ、
気がついた頃には国を出ることさえ許されない孤立無援の幽閉状態に陥って、
とそのワリに挙句はアミンの第何夫人かにまで手を出しあろうことか身ごもらせ、
そしてついに最後は 『ソウ』 や 『ホステル』 級の酷い目に遭いあ~びっくり!みたいな話。

70年代のどんよりと重い空気が醸し出す湿気を帯びた画質と、
慢性的政情不安で一触即発的なウガンダの緊迫感溢れる雰囲気との融合が白眉で、
そこに登場した途端「コイツはヤバイ」と思わせるウィテカー演じるアミンの、
滴る汗も不気味な歪んだ人格による危険なオーラが抜群にマッチし、
後半、怒涛のように加速する展開はまさしく70年代アクション映画のカタルシス!

アフリカの政治的題材を扱っているとは言え、
個人的に未見の 『運命を分けたザイル』 というよりも、
『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』 の俊英、ケヴィン・マクドナルドには、
昨今、主流になりつつあるアフリカ系感動大作を撮ろうなんて意志は微塵もないし、
デリカシーのカケラもないクセに、女にはやたらモテモテのイケ好かない白人野郎が、
どんな目に遭おうが鈎針に吊られようが(あ、書いてしまった)知ったことじゃないんだけど、
今後も様々な映画的題材の宝庫として重宝されてゆくに違いないアフリカを舞台にして、
娯楽サスペンスに徹するその姿勢はそれはそれで潔いしなによりこの映画は面白い。

そんな感じで素直に観れば、この壮絶に後味の悪い映画が暗に描き出そうとしているのは、
長くつづくアフリカ各地の政情不安のその裏には、
デリカシーの欠けた先進国の思惑が常にあるという皮肉まで見えてまた印象深くもある……。

とにかく、オスカー受賞もめでたいウィテカーの怪演には一見の価値大アリ。
これはアフリカについてや70年代の世界情勢について知りたい向きより、
サスペンスやホラーが好きという人にこそ鉄板のストレートな快作だ。

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