中日・落合監督父子にも観てほしい! 『グッド・シェパ-ド』

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デ・ニーロが主演のバツグンに面白い映画―。
それをスクリーンで見かける機会の減っていることが、
ここ数年、ハリウッド映画の印象が薄まった一因じゃないか。
出演映画の数が優に50本を上廻り、映画史上に傑作・名作を数々と残して、
ここ最近は(おそらくデ・ニーロ自ら)脇に退いた感もある世界が認める稀代の名優。
しかし、スクリーンにおけるデ・ニーロの存在感が後ろに一歩退いたのと並行するように、
なんだかハリウッド映画自体がツマラなくなった気がするのは、何もボクだけじゃないハズだ。

反面、これほど映画的な題材もないというほど映画的な「CIA」という組織をネタに、
デ・ニーロの映画と聞いてワクワク胸躍るのは本当の映画好きなら当然とは言え、
しかし時代柄、劇場の座席にドッシリと腰かけ、映画をじっくりと鑑賞しようという、
要はスクリーンから、スクリーンで映画を観るならではの“重厚感”を浴びようという、
そうした言わば“大人の観客”が減ってしまったこともいわゆる映画的重厚感満点の、
“デ・ニーロ映画”が時代にそぐわなくなってしまった一つの要因なんだと、ボクは見る。

とくに、小便臭い純愛映画や観客を泣かすのだけが目的の難病映画ばかりがモテはやされ、
挙句、“泣ける=いい映画”と、マインド・コントロールをかけられていることに気づけもしない、
そんな観客がシネコンを占拠してそれで活況とか言ってる状況の今の日本じゃなおのこと。
東京国際映画祭のレッド・カーペット、アレやめてくれ! TVの企画物かよ! 恥ずかしい!

話が逸れた。確かにこの’93年の 『ブロンクス物語』 につづくロバート・デ・ニーロ監督第2作、
今まであまり聞いた覚えがなく興味深いCIA創設秘話が題材の映画、『グッド・シェパード』
本音を言うと、もっとデ・ニーロ自身がバンバン出てきてそれをコッポラとかが撮っていたら、
それは相応の話題作になっていたと思うんだけど(企画当初はそんな話もあったらしい)、
しかし本作におけるデ・ニーロの演出ぶりは、なかなかどーして巨匠の風格さえ醸し、
いい意味で時代に反した映画的重厚感がうれしい、ボク自身はゼッタイに買いの1本だった!

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 1961年4月17日、アメリカの支援を受けた亡命キューバ人の部隊が、
 カストロ政権の転覆を目論んでピッグス湾に上陸するが、
 CIA内部の情報漏れにより失敗し、CIAは窮地に追い込まれる。
 その3日後、作戦を指揮したベテラン諜報員エドワード・ウィルソン(マット・デイモン)の元へ、
 CIA内通者と敵側スパイと思われる男女の写真とその会話を録音したテープが届く。
 彼は部下のレイ・ブロッコ(ジョン・タトゥーロ)に内容の解析を依頼するが……。

映画は、CIA史上最大の汚点と言われる上記’61年の“ピッグス湾事件”のその後と、
第二次大戦前夜、エリート学生の身分からしだいに諜報活動の道へと入り込んでゆく、
主人公エドワードの人生と背景たるCIAの歴史を交互に見せるカタチで構成されている。
確かに、題材が題材だけにどれだけ目と耳を凝らしていても「?」という部分はあるし、
しかもスパイの話とは言え“007”のように派手な見せ場のない物語は淡々とした印象で、
体調イカンによっては寝てたかもしれないというくらい映画は重心が低くハッキリ言って地味。
静謐すぎて今ひとつCIAの怖ろしさみたいな部分がググッとこないのも事実かもしれない。
とりあえずは、“ピッグス湾事件”の概要ぐらいは押さえてから観る方が無難に思える。

だけど、それらを差し引いたとしてもやはりこの映画の観応えは別格なものがある。
今や主役も脇も器用にこなす役者としての存在感バツグンのマット・デイモンを中心に、
ジョン・タトゥーロ、ウィリアム・ハート、アレック・ボールドウィンにそしてデ・ニーロなどなど、
この錚々たる重量級の顔ぶれだけでもお腹はイッパイで入場料金には充分見合うし、
安定感と緊張感が具合よく混じり合った3時間の長尺は決してダレることがない。

そんな中で時折、突然かま首をもたげるCIAの組織的恐怖にはやはりツバを呑み、
そして主軸であるエドワードの組織と家族の板挟みによる苦悩の日々をじっくり描く、
デ・ニーロの人物を見つめる視線は冷静さの中にも人間的な温かさがありとても誠実。
ボクはこの映画、CIAの裏歴史を描いたハラハラドキドキの政治サスペンスとして観るよりも、
組織や祖国に忠誠を誓うあまり、良き夫にも良き父親にもなれず苦悩と緊張の日々を送る、
1人の男の普遍的な人物像のドラマとして目線を下げて観た方がゼッタイに面白いと思う。
その方が、エドワードの夫像や父親像に感情移入できる中高年層も増えるような気がするし。

人間として、そして男としてのダメさから1人の女性を裏切ってしまったり、
しかしそれから何年かが経過して、仕事の重圧と家庭のストレスから、
一度は捨てたかつての恋人に、心の拠りどころを求めてしまうなど、
そんなあたりのエドワードの繊細な心理描写にボクは思わずグッときたし、
そしてそういうロマンスの丁寧な織り込み方が過分に堅い印象のこの映画では、
薫りのスパイス的な役割をなしていて物語により深みと奥行きを与えている。デ・ニーロ巧い。

決して背けない国家への忠誠心と、良き家庭人になれなかったことへの贖罪との狭間で、
エドワードがクライマックス、1人の家庭人として、そして1人の組織人として、
ギリギリの断崖絶壁で選ぶ究極の決断と行動とは果たして…?
ちなみに“グッド・シェパード”とは、「良き羊飼い」という意味の新約聖書からの引用。

あまり題材に対し深刻に身構えることなく、どこにでもいる家庭と仕事の両立に悩む、
1人の男の話として観れば本作は非常に教訓のあるドラマとしてすんなり楽しめる。
んなワケで、仕事と家庭の両立を見事果たしていると言えば思いつくのはこの人。
ペナントレースで優勝を逃がした時には、息子との約束を守って頭を丸め、そして先の、
クライマックスSではその上キッチリ責務を果たしてチームを日本シリーズ進出へと導いた、
落合監督は見事な家庭人&組織人なんじゃないかなぁ・・・というオチ。中日今年こそ日本一!

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