花蓮〈ホアリェン〉の想い出、台湾映画の未来 『花蓮の夏』

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毎年、偉大な功績を残した多くの映画人が世を去ってゆくけれど、
中でも今年、台湾映画だけじゃなく世界の映画事情を考える上で、
非常に大きな損失だったと、本当に今も悔やまれて仕方ないのが、
『恐怖分子』(’86)、『クーリンチェ少年殺人事件』(’91)などの傑作で知られる、
台湾の鬼才エドワード・ヤン(楊徳昌)の死。(結腸ガンからくる合併症により。享年59歳)
80年代後半、世界的に台頭し始めた中華圏ニューウェイブの1人として、そして、
寡作な名匠として次回作が待たれる中での突然(じゃなかったけど)の訃報だったので、
当然ボクも驚いたし正直かなりショックだった。やはり人間いつ召されるかわからない。合掌。

ボクが長旅をし出す最初の国として台湾を選んだのだって、ホウ・シャオシェンや、
ツァイ・ミンリャンやエドワード・ヤンの映画を観て台湾に憧れを抱いていたからだし、
うまく説明できないが、中国映画ともそして香港映画とも近いようで実はまったく違う、
激動の歴史があればこそ育まれた台湾の映画には、明らかに中国や香港の映画より、
もちろん歴史的経緯を踏まえた上でも日本人の琴線に優しく触れてくる“何か”がある―。

一刻も早いエドワード・ヤンという巨大な映画的損失を補うべき才能の充実が待たれる。
という期待を込めて今回、観に行こうと決めたのが、コチラの台湾映画、『花蓮の夏』 だ。
ボクの中では花蓮と書いて「ホアリェン」と記憶してる通りボクは花蓮に行ったことがあり、
それは、どこだったっケな? 確かどこゾの山にハイキングか何かが目的で出かけた時に、
その手前のペンションみたいな安宿で知り合った、いかにも心優しげな台湾人の青年に、
「次はホアリェンという町まで行ってみないか?」と誘われてそのままついていったのだ。

当然、言葉は通じないのでカタコトの英語と筆談(漢字便利)でずっと会話していたんだけど、
(彼には兵役経験があって、それでなのかフツーに英語はペラペラだった。日本人情けなや)
万国共通の話題、映画の話をフると彼は日本だったら岩井俊二の映画が好きと言っていた。
返す刀でボクがツァイ・ミンリャンやエドワード・ヤンの映画が好きだと言うと、
彼は「?」みたいな表情をしていたけど、それはまぁたけしの映画が日本より、
海外での方が人気が高いというパターンに近いアレだったのかもしれない・・・。

とにかく、そんな台湾紀行の想い出も含めて、この 『花蓮の夏』 を観に行ったんだけど、
しかし印象的にはあまり花蓮という町自体はそれほど物語には関係ないような気がした。
まぁボクとしても花蓮がどんな町だったか10年近く前でほとんど憶えてないんだけど、一つ、
その彼に連れていかれた駅前の夜市が台湾らしい活気ですごく楽しかったのを憶えている。
そこで彼にススメられた厚切りのトーストにジューシーな焼肉を挟んでガッツく的な食べ物が、
今でも鮮明に憶えているほど美味しくて、台湾で食べた物の中でいちばんだったんだけれど、
なんていう名前の食べ物だったのかな・・・。知っている方いましたらどなたか教えてください。

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 小学校でクラスの班長を務める優等生のジェンシン(ブライアン・チャン)は、
 教師から、問題児のショウヘン(ジョセフ・チャン)と仲良くするよう言われる。
 それ以来、互いになくてはならない親友のまま高校生となった彼らの前に、
 孤独な少女ホイジャ(ケイト・ヤン)が転校してくる。しかし、彼女の登場により、
 ジェンシンはショウヘンに対する、友情を超えた秘めた想いに気づき始め……。

映画は、孤独ゆえに多感で大人びている少女のホイジャを挟んで、
幼い頃の一風変わった交流の始まりから、愛情≧友情を育んできた、
ジェンシンとショウヘンの微妙な関係と距離を繊細なタッチで綴ってゆく。
台湾の金馬奨で新人賞を獲得した松山ケンイチ顔のブライアン・チャンが演じる、
自分の中の煮えたぎる蒼い感情を持て余し苦悩するジェンシンの姿は印象として鮮烈。
映画の一つの要で、後半、ジェンシンとショウヘンは“ブロークバック”な関係になるんだけど、
しかし本作のいいところは、そういう男と男の恋という核心を決してセンセーショナルじゃなく、
アイデンティティーを求め彷徨う、10代特有の機微の一つのメタファーとして扱っている部分。

それを恋と言うとか体がどうとかじゃなく、親友と思えばこそ友情も超える“ような”、
なんとも言えない感情というのは10代の頃ならあるハズだし、実際ボクにだってあった。
自分が相手にとりいちばんの親友だと思っているヤツがほかの連中と楽しげにしていると、
なんか1人疎外されたような気になって、無性にソイツにヤツ当たりしたくなったりとか……。
映画には具体的に性描写があるけれど、しかし男同士の愛情自体は特別な何かでもない。

ただ、前半部分は非常に緊張感もあってグイグイと画面に引き込んでくれるんだけど、
素材を大切に扱いすぎなのか、途中からがいくぶん平坦な印象になってしまうのが残念。
若い監督に多いが、センスはいいのに繊細すぎて映画が中折れするのは万国共通の様子。
しかし、ブライアンとジョセフのチャン2人はモトより、ホイジャという難しい役どころを演じた、
ケイト・ヤンという彼女は、新垣結衣とかなんて足下にも及ばないぐらい(カワイイけど♪)
女優として鮮烈な存在感を宿している人だと思ったので今後もどんどん映画に出てほしいし、
なによりこの設定で邦画だとすれば確実に3人のウチの誰かが難病で死ぬハズなので、
そうじゃなかっただけでもボクはこの映画に対して、非常に好感を持つことができた。

そんなワケで、日本人が知らないだけで実はアジア屈指の映画的才能の宝庫、
台湾映画のこれからに期待を抱かせる1本・・・というには今ひとつだったんだけど、
しかし薄っぺらな邦画などよりはずっと映画的輝きを宿した作品であることは確かだ。

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