なんとなく嫌な予感はしたけれど… 『愛の予感』

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先日の“ミシュラン狂騒曲”を見たらわかる通り、
とにかく日本人は海外ブランドに対して盲目的で、
そのお墨付きがあったら、ジャンルも何も関係ない。
自分に自信がないという奥ゆかしい国民性でもあるのかしら?
まァせっかく評価してくれたんだし、それは有難く受けりゃいいんだけど、
しかし8店の内の1店ぐらい 「テメェらの舌に何がわかる! 塩持ってこい!」
とか時代錯誤なことしてくれたら面白かったし溜飲も下がったのにな~なんて。

まァそれはいいとして、海外での評価に弱いという面じゃ実は映画も似たとこがあり、
たとえば、東京国際映画祭でグランプリなんか獲ったって誰も見向きやしないんだけど、
それがカンヌ、ヴェネチア、ベルリンなどの国際映画祭で、となると途端映画にハクが付く。
映画祭には出品されるだけで凄いとは一応言われるんだけど、そこはオリンピックと違い、
金さえあれば(多分)、映画祭なんて 『大日本人』 でも 『ジャンゴ』 でも出品できるワケで。
よくチラシなんかに“○○国際映画祭正式招待”とか見かけると思うけど、そんな肩書きは、
ネームバリューは上げたって映画の本質的な価値まで上げてくれない。肩書きには要注意。

で、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンのいわゆる世界三大映画祭に比較すると、
やや、というよりかなりその映画祭的知名度は下の方になると思うんだけど、
しかし負けず劣らず長い伝統があり、その次くらいの(多分)格付けになるのが、
スイスで毎年8月に開催されている、「ロカルノ国際映画祭」。
日本映画のグランプリ受賞は37年ぶりの快挙と謳われてるけど、
しかしその一方で、中国映画が世界的に台頭するようになったのは、
ここで85年にチェン・カイコーが 『黄色い大地』 で賞を獲ったのがキッカケで、
そこから広い意味でアジア映画の世界進出が始まるようになったとも言われている。

というワケでそんなロカルノ映画祭で邦画として37年ぶりのグランプリ受賞となったのが、
小林政広監督最新作、『愛の予感』(英題:「the REBIRTH」)。まァこの小林政広という人は、
超が付くシネフィル(映画オタク)監督で、その経歴等含めどー見ても日本国内での評価より、
海外で自分の作品にハクを付けるのが第一みたいなとこがあるので、愛の予感というより、
むしろ嫌な予感の方が強かったんだけど、それでも前作の 『バッシング』 はよかったし、
この監督も変わったのかしら?と、今回の映画も観てみることにした…んだけどなぁ。

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登場するのは、ひと組の男と女。14歳の少女が同級生を刺殺するという事件が起き、
男は殺された少女の父親で、女は殺した方の少女の母親だ。そんな2人が一年後に、
世間の目から逃れるようにしてたどり着いた北海道のとある町の民宿で再び出逢う―。
映画は、2人の葛藤や果てない孤独、そして出逢ったことでやがて芽生えてゆく心の変化を、
いっさいのセリフに頼ることなしに日常のささやかな描写の中で淡々と見せてゆくんだけど、
なるほど確かに、セリフに拠らないという方向性は昨今の邦画の主流と反していていいし、
セリフで人物の気持をダラダラと説明せずに映像に託すからこそそれを「映画」というんだし、
この全篇が醸すなんともウラ寂れた雰囲気というのも個人的には好きなテイストだったりする。

だけど、この映画にあるのは一見、物語のようでいて実は“設定”でしかなく、
2人の心の変化と言われてもその前に肝心の感情移入すべき物語がないので、
どれだけ映像で何を描かれたとしても、それが心の中にまったく入ってこないのだ。
だからセリフ皆無の芝居を観ていても頭には次から次へと雑念が入ってくるばかりで、
俺も卵かけゴハン食いてぇな~とか、年末いつ帰ろうかな~とか、帰りに何食べよ~とか、
けっきょく最後まで画面に集中することはできず、観終わっても空虚感しか残らなかった……。
それに、セリフで説明しないというワリには、冒頭で流れる2人のインタビュー・シーンで、
映画の状況説明をしてしまうというのはなんかそれはチョットずるいような気がしてならず、
それならフツーに前半ぐらいセリフのあるドラマを用意すればよかったんじゃないかと思うし、
なにより大団円あたりになるとあそこまで言葉がないのは逆に不自然すぎるんじゃないかと?

実際に福岡で起きた、10代をめぐる悲劇的事件をモチーフに使いながら、
それで社会的な言及はしないというのも、まぁ別にいいけど少しは不満だし、
だったら状況説明もせず、人に言えない過去を“匂わす”ようなひと組の男女が、
ただどこか北町のウラ寂れた民宿で出逢う、というそれだけの話でボクはよかった。
妙に背景が社会的だから、はてダルデンヌ兄弟でも始めたのかとゲスの勘繰りしてしまった?

とは言え、じゃあ映画を観ていてハラが立ったのかと言えば決してそんなことはなく、
俺も50歳過ぎたら、誰も自分のことを知らないどこかの寂れた田舎町へと流れ着いて、
そこで安民宿に寝泊りしながら黙々と工場勤めなんゾ悪くないかもなァ、なんて思ったし、
監督の初期の頃のたとえば 『CLOSING TIME』 とか 『海賊版=BOOTLEG FILM』 みたいな、
観ていてただただ恥ずかしくなるようなシネフィル大炸裂映画よりはずっとマシなんだけど、
しかしたまの日曜に自転車漕いで駆け付けるには、やっぱり酷な映画じゃあった。ふぅ。

まぁ大世間に呑まれてシネコンで三丁目観るくらいならイッソ死んだ方がマシだし、
そんな自分にはガラガラのポレポレがやっぱり性に合ってはいたけどネ!(強がり)

ポレポレ東中野 にて公開中 ]

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