ラモリス、シャオシェン、ダグラス・サーク… 『白い馬』 『赤い風船』 ほか

で、話は“ポニョ”に戻るんだけど(聞いて!もうチャカしたりしないから!)、
あの映画で問題なのは子供が親を呼び捨てにしているというトコじゃなく、
ポニョと宗介2人(?)の子供の世界観の描き方なんじゃないかと思うワケ。
要は彼ら(便宜上)は、ある日海辺で出逢って相思相愛の仲になるんだけど、
それは出逢った瞬間に、互いの心の中にある共通した感情を見出すからだ。
その感情とはつまり孤独で、あの話は孤独を抱えた少年が群れから逸れた、
魚の少女と出逢うことで自我に目醒めてゆく話であるべきじゃないかと……。
そんな2人のドラマにカタルシスがないから単に映画は見た目、可愛いだけ。

歳喰った映画オタクの独り善がった解釈と思われるかもしれないけれど…そーかな?
宗介は、亭主が仕事で家を留守にしがちでややヒステリック気味の母親と2人暮らし、
5歳ながらに自分の家を守るためには自分が“いい子”でなけりゃいけないと思ってる。
一方ポニョは、人間に絶望した父親の独善的な感情を押し付けられそこから逃れたい。
要は2人とも親の都合の中で生きてきたから、逢った瞬間互いに互いを見るのは当然。
だからこそ、家から飛び出したポニョを宗介は、無心で「守ってあげたい」と思ったんだ。
ポニョを理解できるのは自分だけというポニョに自分の孤独を投影する宗介の物語が、
やがて大人の世界から逃げる子供のドラマに発展すれば面白かったんだけどなぁ~。

「『小さな恋のメロディ』 か!」というアナタのツッコミはわかるけど、だってそーじゃない?
『E.T.』 にしたって、E.T.を理解できるのは自分だけというエリオットの感情が、薄汚れた、
大人らの世界に対抗するモチベーションとなり、そこのドラマにググッと気持が入ればこそ、
「2人で逃げよう」というあの自転車で空を飛ぶ場面のカタルシスにも泣けたんじゃないか?
それなのに宮崎駿は、大人の話し合いで子供を落ち着かせるという安易なオチを付けた。
いかにも扶養義務のない孫を見るような好々爺目線で、ロマンもヘッタくれもない話だし、
だから、『崖の上のポニョ』 は大人の観客の評価が高いんだと思う。だって大人にとって、
安心できるような世界観の中に子供が描かれているから。宮崎駿も、ソロソロと思ったね。

子供が主人公の映画は子供が大人の凝り固まった価値観と戦う話じゃないとダメなんだ。
あんな簡単に大人が子供に歩み寄っていたら子供はワガママになるだけで成長しないよ。
想像力で辛く厳しい現実にタチムカウって術も覚えない。だから人間が短絡的になるんだ。
独りで観ようと、カップルで観ようと、家族で観ようと「映画を観る」というのは孤独な行為だ。
そしてどんなメジャー配給の商業映画だろうと、ドが付くぐらいマイナーな単館映画だろうと、
映画というものは孤独な人間の味方でなけりゃ映画である意味などないとボクは思ってる。
そういう意味で 『崖の上のポニョ』 は物凄く“体制的”なんだ。まぁポニョだけじゃないけど。
そんな中、ボクと同じようにポニョを観て「なんか違う」と思った人に観てほしい映画が2本。

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アルベール・ラモリスという監督が撮った、『白い馬』(’53)『赤い風船』(’56)の2本がそれで、
それぞれ3、40分の短篇なんだけど今回デジタル・リマスターによってリバイバルと相なった。
フザケた商業映画ばかりが相変わらず幅を利かす中、一部の良識ある映画人の尽力により、
こうした名画をしかもスクリーンで観る機会が得られるというのは本当に悦ばしい限り。感謝。
2作品連続上映で1本分の料金なんだけど、1本目の 『白い馬』 がとにかく素晴らしかった!
見た目はいかにも文科省が推薦しそうな児童文学映画といった雰囲気なんだけど、これは、
孤独な少年が気性が激しくも美しい1頭の白馬に恋をし、汚い人間から彼女(?)を守る物語。
若干誇大解釈なのは自分でわかってるけど、しかしポニョにないものがこれにはすべてある。

どことも知れないダイナミックな自然を捉えたモノクロの映像はため息が漏れるほどに美しく、
馬たちが沼地を駆ける時の疾走感はあたかもスクリーンから風が吹いてくるかの如く涼しげ。
そんな中で、大したセリフもなく描かれる、ひと目惚れをした白馬を一途に想い続ける少年と、
彼をじゃじゃ馬よろしく時に振り回しながらやがてその想いに応える馬との相思相愛の調べ。
人間と自然の関係もしっかりと描き込まれているし、なにより映画が子供を甘やかしてない。
少年が沼地を引きずられても手綱を離さなかったことで彼らの絆が深まる場面など感動的!
そして馬が少年を連れて力強く海を進んでゆくラストは 『小さな恋のメロディ』 にも比肩する。
この先に何があるかはわらないけどボクら2人いれば……。ポニョもこーじゃなきゃダメっしょ!

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一方 『赤い風船』 は、まるで明確な意思でもあるかのように躍動的な動きを見せる風船と、
風船相手に絶妙な掛け合いを見せる少年(監督のご子息)との奇妙な友情冒険物語。36分、
とにかく風船の行方にワクワク胸が躍り、風船にアレコレ指図する少年の言動が笑いを誘う。
でも、実はCGじゃ!?というほどの風船の動きは少年の想像力を描いているから活きるワケで、
つまりこれは想像力豊かな子供ならではの究極の独り遊びを描いた映画なんだ。そう聞くと、
寂しい気もするがしかし命ない物に命さえ与える子供の想像力こそ映画の原点じゃないか?
本作でも子供の残酷さがしっかりと描かれているし、だからこそラストの飛翔感にも胸がすく!
たかが子供が風船と戯れる話が冒険映画さながらの昂奮を呼ぶその事実に驚くべし!必見!

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また今回、上記2作品に併せて公開されているのが、『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』。
これは、オルセー美術館(どこソレ?)の開館20年を記念した映画製作プロジェクトによる1本で、
『珈琲時光』 では小津の 『東京物語』 にオマージュを捧げた台湾のホウ・シャオシェン監督が、
今度は 『赤い風船』 にオマージュを捧げて、パリの街並みを台湾的静謐な演出で見せている。
しかし明快なオマージュとは言えあからさまじゃなく、台湾の巨匠が名作をモチーフに描くのは、
場所を違えても変わることない普遍的かつ現代的な家族というものの中にこそ巣喰う孤独……。
品の好い画にオリジナルのテーマを損なうことなく“今”を託し込める巨匠の手腕は今回も確か。
決して必見というほどじゃないけどせっかくだし時間があるならそのままつづけて観るのも一興。



マズはポニョを引き合いに(ゴメンなポニョ)アレコレ書いたがしかし 『白い馬』 も 『赤い風船』 も、
単なる子供映画じゃなく映画というもののなんたるかを示してくれる真に素晴らしい傑作2本だ!
もちろんポニョを家族で観るのもいいけれどもしボクに子供がいればマズはコチラを見せるかな?
少し大きな流れから目を逸らせばこうした名画に触れる機会にボクらはケッコウ恵まれてるんだ。
こんなチャンスを活かさない手はないと、これは映画好きの独善じゃなく本当に心から思ってる。
そして名画に触れるチャンスと言えば、とうとう前々から観たいと思っていたダグラス・サーク!
『第九交響楽』 『風と共に散る』 『悲しみは空の彼方に』 を観る予定だけど今から待ち遠しい!
人生も映画を観るのも孤独だけど、孤独と共鳴するからこそ映画は人の心を豊かにしてくれる。

今週は、新作映画も含めて素晴らしい映画週間になりそうな気がする……。ねぇ?・・・やめた。

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『悲しみは空の彼方に』

『白い馬』 『赤い風船』 『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』
シネスイッチ銀座 にて公開中 ]
「ダグラス・サーク特集 ~かなしみのハッピーエンディング~」
渋谷東急 にて8月1日(金)まで開催 ]

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