快調! ヨーロッパ・コープ二本立+1 『96時間』&『ゴー・ファースト 潜入捜査官』&『マーターズ』

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それにしたって、“外国製”の娯楽映画は面白い。ド派手な銃撃戦があれば手に汗握るカーチェイスもあるし、
悪党は徹底的に悪く描かれるからそんな連中が主人公にバッタバタとブッ殺されてゆくラストはスカッと爽快。
とにかく娯楽というジャンルを軽視しないプロの流儀みたいなものが外国の映画には感じられて頼もしいんだ。
本当に娯楽映画がツマラないのは日本だけ! というワケで以前は同じく退屈な映画の宝庫だったフランスで、
娯楽にこだわり映画を創り続けているリュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープの作品を立て続けに観に行き、
いずれも面白くやっぱり映画はこうでなきゃ!と観終わった後も昂奮醒めやらぬといった感じだったんだけれど、
そこで話は少し逸れ、映画を封切初日に観に行くとよく「ぴあ」が観客の満足度を調べる出口調査をやっており、
応じたことある人も中にはいると思うんだが 『ゴー・ファースト』 の帰りに掴まってボクもアンケートに応えてきた。

実はこのアンケートに応じコメントと写真を掲載されたことが今まで3回あるんだけど(1本は 『スピーシーズ3』 )、
ストーリーやら役者やら何項目かを5段階で評価した後、「それでは何かコメントを…」と女性に向けられたので、
「ウ~ん。『96時間』 も面白かったけど、それ以上に面白くってぇ~ 『アマルフィ』 とは何もかも雲泥の差だった」
と応えてみた。その彼女は 『アマルフィ』 云々という件がどういう意味なのか一瞬戸惑った様子だったんだけど、
もちろん今観た映画の面白さに較べれば 『アマルフィ』 などクソだったという意味なのでその旨を今一度説明し、
コメントを載せるなら、この部分を強調してほしいと頼んでみたんだけど「ウ~ん。カットされると思います」と彼女。
まぁボクにしてもわかって言ったに決まっているものの、とにかくあんな金だけかかった娯楽軽視のTV局映画が、
いつまでも興収トップ10に入っている日本なんゾ“娯楽映画後進国”だと以下の映画を観て再認識したっつー話!!



というワケで全米はじめ世界各国で大ヒット。さすがに 『トランスポーター3』 まで観る気にはなれなかったけど、
日本でも前々から評判がよくて早く観たいなァ~と思っていたヨーロッパ・コープ制作の娯楽映画 『96時間』 は、
女友だちとパリまで旅行に出かけた愛娘を悪辣極まりない人身売買マフィアに誘拐された元CIA局員の父親が、
娘を取り戻すため、長年CIAで培ったあらゆる技術を駆使してマフィアを追い詰め殺しまくるという痛快アクション!
つまり現役を退いたジェームズ・ボンドもしくはジェイソン・ボーンみたいなオジさんが、娘をさらわれるや鬼と化し、
『フレンチ・コネクション』 のジーン・ハックマンや 『逃亡者』 のトミー・リー・ジョーンズも真っ青の職業的執拗さで、
悪党を追い廻し、拷問にかけ、時には民間人に大怪我まで負わせながら娘を返せ!とひた走るそれだけの話を、
息をもつかせぬ見せ場見せ場の連続で1時間半一気に見せ切るという、これゾ娯楽!といった感じの1本なんだ。

脚本を書いたのがベッソン自身ということで、相変わらず話は単純というか深みも奥行きもまったくないんだけど、
そこで要になっているのが、過保護なゆえ、話が娘になると目の色が変わるチョ~怖くて強い父親を演じたのが、
どちらかと言えば文芸映画専門という印象が強いアイルランド出身の名優、リーアム・ニーソンというその一点で、
娘にだきゃ弱いパパの眼差しから、娘のためなら手段も選ばぬ怖い父親の目つきへのメリハリがパリッと利いて、
ベッソン印の幼稚なアクションがアラ不思議! 物語にソコハカと風格さえ漂ってしまうんだから役者の力って凄ぇ。
それに、アルバニア系(やっぱり)組織が仕切る人身売買や、建築現場を装った売春宿の描写などがかなりグロく、
そんな部分も本作が大人のエンターテインメントになっていた要因だと思う。とにかくテンポ抜群だから飽きないし、
手に汗握ってオォ!とのけぞりラストはもちろんスカァーっとできる、一級の娯楽作となっているから絶対に必見だ!!

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また、同じヨーロッパ・コープでありながら見た目が地味だからか 『トランスポーター3』 や 『96時間』 に較べると、
都内でも1館しかもレイトショーのみという低い扱いを受けている件の 『ゴー・ファースト 潜入捜査官』 なんだけど、
しかしコレは映画好きなら絶対観逃してはならない上の2本より間違いなく面白いと本当に断言できる1本だった!
物語は、麻薬捜査の途中、同僚を殺された捜査官が麻薬取締局の猛訓練を受け、“ゴー・ファースト”と呼ばれる、
最速の運び屋としてスペインの麻薬組織へと潜入するというクライム・サスペンスで、『インファナル・アフェア』 に、
『ナーク』 とやっぱり 『フレンチ・コネクション』、そしてこれまた地味すぎて憶えてる人は少数かと思われるものの、
4年前の佳作、『ブルー・レクイエム』 を併せたかのようなとにかく硬派な肌触りのフレンチ・ノワールなんだけれど、
脚本家の1人が現・警察関係者らしく描写がチョ~リアルなモンだから実録犯罪物としてケタ違いの面白さなワケ!!



冒頭から全篇ヒリヒリするような緊張感に充ち、銃声は途轍もなく凶暴な響きを放ちながらその度合を高めてゆく。
主人公が潜入捜査官になるべく地獄の猛特訓を受ける場面はリサーチの緻密さも相まって非常に説得力があり、
そこまでの流れがしっかりしているから潜入して以降のサスペンスにも凄味が増して目はクギづけになってしまう。
役者はみな面構えがいいし、演出もピリッとしてて、フランス、スペイン、モロッコとロケーションもメチャクチャ豪華!
ポルシェ、BMW、プジョー、アウディ、それらが爆走、クラッシュしまくるクライマックスの昂奮こそ娯楽物の醍醐味!
そんなに出番は多くないけどおネエちゃんも抜群にエロく、アタマからケツまでギッチリ詰まって上映時間は84分!
まさにムダな贅肉などない肉体のように鋭利な面白さに仕上がっておりラストはふぅ~とため息が漏れること必定。
ただこういう70年代アクションみたく小気味好い活劇物はシネコンじゃなく歌舞伎町など場末の劇場で観たいよネ!!

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一方、チラシに「これは本当に公開して良いものなのか!?」なんてコピーが踊ってるフランスのホラーなモンだから、
こらまたテッキリとヨーロッパ・コープが仕掛けた作品だとばかり早合点していたらまるで違ったみたいなんだけど、
まぁいいや同じフランス製だしということでついでに…と言っては失礼だが一緒に紹介してしまう 『マーターズ』 は、
しかしついでに、とアッサリ端折るにはあまりに衝撃的な、近年それこそヨーロッパ・コープの 『ハイテンション』 や、
『フロンティア』、だけじゃなく 『屋敷女』 に 『裏切りの闇で眠れ』 など、とにかく残酷描写が過激化の一途をたどり、
もはや天井知らずみたいな状態になっているフランス製残酷映画の中でも極め付けと言えるようなエグすぎる1本!
70年代初頭。何者かに監禁され、長期間にわたり拷問を受けていたリュシーは、自力で逃げ出し施設に保護され、
そこで出逢ったアンナのオカゲで少しずつ立ち直ってゆくんだが、15年後にリュシーは虐待者たちに復讐する……。



ホラー好きは、グロければグロいほど手放しでよろこぶなんて思っている人もいるけれど、それはトんだ大間違い。
個人的には同じホラーでも今回は好きじゃないタイプ。だいたいフランスのホラー自体に好きなものはないんだが、
ここまで執拗に女だけがイタぶられる映画などホラー以前に不快だし、後半のブッ飛んだ展開も正直面白くなくて、
本来だったら三池崇史とかミヒャエル・ハネケ並みにフザケんな!と怒ってしまうような、話だけならそんな映画だ。
でも、ホラーとしては二度と観たくないと思うような内容なのに、それでもボクが本作に対し腹が立たなかったのは、
まるで憎悪と殺戮に充ちた人類の歴史を凝縮して見せ、その罪さえ背負うかのような残酷描写の追い込みぶりに、
不快感よりも作者の誠実な葛藤を感じたことと、それに全身で応じた主演女優2人の熱演にあまりに感動したため。
どう受け止めたらいいラストなのか鑑賞直後は呆然としたけど、しかしこの映画の本気度は間違いなく映画の宝だ。


このテが好きじゃない人にはとてもじゃないけどススメられないし、ホラー好きの間でも好悪は二分すると思うけど、
「これは本当に公開して良いものなのか!?」というコピー自体は決して大ゲサではないので、挑戦したい人はぜひ!
…というワケで、今や日本人は、何かといえば“涙”ばかりほしがるフヌケた映画民族になり下がってしまったので、
以上3作のようなアクションやホラーといえばすぐに見下してかかるものの、これらに見られるプロの流儀や本気は、
エンタメを空々しく謳う邦画にゃマズ感じられないもの。ホント、『アマルフィ』 の製作者は爪の垢煎じて呑めっての!!
あ~自民党がついに大敗したみたく国民みんなが薄っぺらいTV局映画にノーを突きつける日が来ないモンかしら?

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