電信柱が長いのも郵便ポストが赤いのも全部アメリカのせい? 『キャピタリズム』&『インフォーマント!』
“100年に一度”と言われる金融危機の引き金となった、昨年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻、いわゆる、
“リーマン・ショック”から早1年余り。当時はリーマン・ブラザーズと言われても新手のユニット名かと思うくらいで、
元々経済に疎いボクには、話の筋がよくわからず、「ふ~ん」と鼻くそをほじりながらニュースを見ていたんだけど、
しかしあれからというもの景気の悪化についてニュースが伝えない日など一日もなけりゃ、100年に一度どころか、
10日に一度は金融危機の自分には所詮、無縁くらいに思っていたのが、今年の春以降、ただでさえ安い給料が、
マジで生活保護を受けるべきなんじゃないかと思うぐらい激減して、本当に俺の給料は、どこに消えたのか…!?と、
景気悪化の発端がアメリカなら、給料が減ったのだってひいてはアメリカのせいなんだから金返せ!と、なんなら、
電信柱が長いのも郵便ポストが赤いのも、ボクが今年1回もセックスしてないのも全部アメリカのせいと思うぐらい。
2016年の五輪開催地を決める時にシカゴが真っ先に落選したのだって、世界中をこんなメチャクチャにしたクセに、
オリンピックなんてやらせるか!という意味なんじゃないかと思ったし、オバマにノーベル平和賞をあげるのだって、
要はこれ以上戦争に余計な金を使うんじゃないその前にもっとやることがあるだろう!という世界中の意志なんだ。
でもまぁ、アメリカが悪い悪いとはいったって、世界がそんなアメリカにオンブにダッコでやってきたのも事実であり、
今後は、アメリカ一国に世界が引きずられるような経済の仕組みは、頭のいい人たちでどうにか変えてもらいたい。
とはいいながらも、先月のプロ野球日本シリーズ第3戦でブッシュと小泉の2人が始球式に現れて、それを観衆が、
歓声で迎えたというニュースを見た時にはほんと~に日本人て人が好いんだな~となんだか悲しくなってしまった。
いくら世界経済とスポーツは関係ないといったって世界をダメにした張本人よ? そこはみんなでブーイングじゃね?
まぁ話はチョイと逸れたけど、とにかくそんな、“憎まれっ子世にはばかる”を国でいくアメリカが抱える多くの問題、
銃規制の問題には、『ボウリング・フォー・コロンバイン』 で、テロとアメリカの相関関係については 『華氏911』 で、
そしていまだ実現していない国民皆保険については 『シッコ』 で追求したのが「アポなし突撃取材」を信条にする、
巨漢のジャーナリスト、マイケル・ムーア監督ということで2年ぶりの新作 『キャピタリズム ~マネーは踊る~』 は、
もはやアメリカというよりアメリカをダメにした“資本主義”が題材の、今までとはやや趣の異なる映画となっている。
でも、ムーアは映画の最後で、「資本主義は悪だ」とハッキリと言い切っちゃっているんだけれど、しかし悪いのは、
資本主義というよりその中で個の利益ばかりを追求する一部の輩やそれを許すシステムではないかと思うワケで、
資本主義を悪と決めつけてしまうのは、それがムーアとはいえ、少々飛躍しすぎじゃないかという気が今回はした。
だから、本作も確かに今までと同じムーア節の中で、金融危機以降なす術もなく家や職を失ってしまった人々や、
大企業が従業員になんの断りもなく生命保険をかけるどころかその受取人になっているというメチャクチャな話や、
そういう悲惨な状況がある一方で公的資金投入により倒産を免れた上、高額な報酬を得ている人間がいるという、
芯まで腐り切ったアメリカ式資本主義社会の実態を、時にユーモアを交えながらわかりやすく見せてくれるんだが、
しかし本作にはこれまでほどの鋭さは感じられず、パフォーマンスにしても本当に単にパフォーマンスという感じで、
言ってみたら本作は、GM(ゼネラル・モーターズ)がムーアの故郷の工場を閉鎖して大量の失業者が出たことから、
彼自身がGMの社長に故郷の窮状を訴えにゆくというデビュー作 『ロジャー&ミー』 の悲しき続篇だと思うんだけど、
当時の活力がない代わりに、本作にはあの時の故郷の惨状が全米に広がったことへの“憂い”だけが漂っている。
だけど、その“憂い”こそ実はムーアの人間的本質で、中盤から、神父さんに話を聞くなど話は観念的になり始め、
そのあたりで本作は評価を二分するんではないかと思うし、ボクとしても途中何度かウトウトしてしまったんだけど、
しかしそこでムーアを基本的にいい人間だと思うのは、『ロジャー&ミー』 でGMの社長を追いかけた時から20年―、
言わんこっちゃないGMの名も一旦は地に落ち、それは作家にしてみたらいい気味というかソレ見たことかというか、
とにかく少しぐらいは、作家としての先見の明のようなものを鼻にひっ掛けたい気持があるんじゃないかと思うのが、
ムーアは、決してそんな奢りを見せることなく、ひたすら家や財産を失った人々に寄り添い、その苦しみに心を傾け、
1人のキリスト教徒としてこの状況をどうすればいいのかを、スクリーンの前の観客に静かに訴えて、映画を終える。
単にムーアが歳を喰っただけかもしれないが、ラストのしんみり感はどんな政治、経済論議より素直に胸に沁みる。
今までみたいな斬り込み系の痛快ドキュメンタリーを想像すると肩透かしを喰らうことは確実じゃないかと思うけど、
これはこれで観る価値のある作品とは思う(まぁリーマン・ショックから1年余。急いで創っちゃった感も否めないが)。
ボクには「資本主義とは何か?」と訊かれてもわかりやすく応える自信はない。だから資本主義は悪と言われても、
実のところYesとも思うしNoとも思う。ただ一つ言えるのは…金持ちはみんな死ねばいいと思う!(ムーアよか極端)
でもまぁこの映画を観るだけでもアメリカはつくづくオカしな国だと思うばかりなんだけど、一方、ムーアの作品には、
『アホでマヌケなアメリカ白人』 というのもあり、そこで、まさしくアホでマヌケなアメリカ白人の究極みたいな人間を、
マット・デイモンが15kg増量のメタボな体型で怪演していて話題なのが、スティーヴン・ソダーバーグ監督の最新作、
『インフォーマント!』。インフォーマントとは密告屋のことで、デイモン扮する男マーク・ウィテカーは、実在の人物だ。
そして物語も、1990年代に実際に起こった大企業の価格協定を暴いた事件をベースにして創られているんだけど、
33歳の若さで大企業の重役に上り詰めた、デイモン演じるウィテカーは、会社の食品添加物製造工場で発生した、
ウイルスによる損失をゴマかすためにそれを日本のスパイの仕業だと偽って上層部に報告する―。ところがそれを、
上層部がFBIに報告するや、ウィテカーは乗り込んできた捜査官に、なぜか自社の価格協定の陰謀を喋ってしまい、
エリートから一転内部告発者となる。そこから正義の男になるのかと思いきや昇給を知って告発をやめようとしたり、
FBIに証拠集めを頼まれて盗聴器や隠しカメラを渡されるや、007気どりでスパイ活動に熱中したり、挙句の果ては、
自分の不正が発覚し、彼をスパイにしたFBIが窮地に追い込まれたりと、エリートなのになぜこんなにバカなのかと、
それともバカだからエリートなのかという感じで映画は主人公の予測不能な行動を、至極軽ぅ~いノリで描いてゆく。
言ってることに軸がないといえば自民党政権最後の総裁がまさにそんな感じだったけど、この主人公はそれ以上、
もはや精神分裂病に近いウィテカーの虚言癖はソダーバーグの内面描写が薄いこともあってサイコ・スリラーの域、
無邪気な瞳のデイモンの快演も功を奏して思わず笑ってしまうし、だからアホでマヌケなアメリカ白人でも憎めない。
とはいえ、熱い社会派映画にもできた題材をソダーバーグは 『チェ』 2部作の後だからかなにしろアッサリと料理し、
相変わらず音楽のセンスとかはいいんだけれどなにせ全体が薄味だからゲラゲラ大笑いできるというほどではなく、
評価は分かれるとは思うものの、まぁ割り切れば楽しいと思うしでもやっぱりDVDで充分かもしれない(伝染った?)。
だけど、人間として大事なところが欠けているこのウィテカーという男こそ、ボクはアメリカそのもののような気もして、
上の 『キャピタリズム』 と同じ日に観たんだけど、本当にアメリカって厄介な国だなぁ~とそんな風に思う2本だった。
で、最後に少しだけ、『キャピタリズム』 について。この映画、全国公開は年が明けてからで、今は東京と大阪の、
TOHOシネマズの映画館2館だけで限定公開されており、しかもシャンテはスクリーン1と2両方でかけているので、
さぞや混んでるんだろうなと、早めに席を確保した上で観に行ったらガラガラでびっくりしたんだが(2日目、最終回)、
この映画の方がすでに金融危機じゃないのか!?と、思ったのはともかく、なにゆえこんな限定公開なんだろうか…?
そこでなんとなく考えたのは、東○がウチの映画館2館で限定公開させろと配給側へ圧力をかけたんじゃないかと。
その方が儲かるし、あの会社自体、ムーアが劇中で批判していることを平気でやる、そしてやってきた会社なので、
とくに根拠はないんだけどボクにはそんな裏があるような気がしてならない……。まぁこれはあくまで妄想の話だし、
こんなこと書いたらボクがウィテカー扱いされてしまうのでやめるけど、映画業界って、ケッコウ、ドロドロなんだよね。
『キャピタリズム ~マネーは踊る~』
[ TOHOシネマズ シャンテ にて公開中 ※2010年1月9日(土)より全国拡大公開 ]
『インフォーマント!』
[ 恵比寿ガーデンシネマ、シネマスクエアとうきゅう にて公開中 ]

