最前線で真実を追う男たち 『ビルマVJ 消された革命』&『グリーン・ゾーン』

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ボクの職場をよく利用してくれるお客さんに、日本とタイのバンコクを仕事でよく往き来しているという人がいて、
先週の初めぐらい、ようやくタクシン元首相派の人々によるデモ活動が一段落して街も着いてきた様子だから、
明日からまた往ってくるよ、なんて仰るのでボクの方もどうぞお気をつけてと見送ったんだけど、そうしたらまた、
デモ活動が活発化して、その後ニュースを見るとロケット弾は飛ぶワなんだとまるで内戦みたくなっているから、
果たしてあのお客さん、無事なんだろうか!?と今度逢ったら現地の状況を詳しく訊きたいな、と思っているところ。
で、デモ隊が解散宣言して事態は収束に向かっているとはいえ、今回の一連の騒動では多くの死傷者が出て、
周知の通り、現地を取材していた日本人ジャーナリスト・村本博之さんも鎮圧隊の発砲で亡くなったんだけれど、
なんかもう日本人はみな忘れてるみたいだが、事件に対し、その後日本はタイに何か抗議しているんだろうか?

いくら危険は付き物といったって、世界に情報を発信するために働いていた人が理不尽な亡くなり方をしたのに、
建前程度に抗議したぐらいであとは「仕方がない…」みたいな雰囲気で流されたら遺族はたまったモンじゃない。
だいたい、日本ていつもそうだけど、海外で日本人の身に何か起きた際の、諸外国に対する態度が弱腰すぎる。
そして、今回の村本さんの件できっと多くの日本人が想い出したと思うのが、2007年の9月にビルマで発生した、
大規模な反政府デモの取材中に軍事政権側兵士に銃撃されて亡くなった長井健司さんのことだと思うんだけど、
あの件にしたってけっきょく日本は大して抗議できずじまいだった。同胞があんなに酷い殺され方をしたんだから、
もっと“ランボー”並みに怒らなきゃダメだよね? そんな中、もっと日本人の1人1人がそういう怒りを持つためにも、
そして彼らのようなジャーナリストに敬意を表す意味でもゼッタイ観てほしい映画が、現在渋谷で公開されている。



それがこの映画、『ビルマVJ 消された革命』。ボクは本作を昨年の秋に開かれた「難民映画祭」でイチ早く観て、
途轍もない衝撃を受けるとともにこれは何がなんでも日本で公開されて然るべき映画だ!と強く感じたんだけど、
本作はまた今年のアカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートされたからそれで知ったなんて人も多いハズ。
(しかし受賞は周知の通り 『ザ・コーヴ』。ビルマ人や日本人ジャーナリストの命よりイルカの方が大事なんだね!!)
で、映画は’07年9月の反政府デモの様子を実際の映像を再現及び再構築することにより見せてくれるんだけど、
その映像こそが、軍事政権に見つかったら、拷問や投獄も免れないというリスクを負いながらも、真実を伝えんと、
現地の様子を小型ハンディカム等を駆使し命懸けで発信し続けているVJ(ビデオジャーナリスト)たちによるもので、
なぜそれを再現、再構築なのかといえば、やっぱり映像が断片的なため、デモの全体像を把握しやすくするため。

題材をインタビューやデータを交えながら検証してゆくタイプのドキュメンタリーというより、なにしろ現場に密着し、
その様子を生々しく見せる喩えは違うかもだけどまるで“警視庁24時”みたいな体感型のドキュメンタリーだから、
軍事政権に対してもう我慢できんぞ!と怒りの声を挙げる僧侶たちのボルテージがしだいに高まってゆく様子や、
彼らを核に同じく民衆の怒りが固まってゆく様子が途轍もない迫力で伝わってきて思わず身を乗り出してしまうし、
それはなにより、彼の国の軍事政権がいかに民衆を抑圧しているかをリアルに物語って、自分も当事者のように、
怒りの声を挙げ、スーチーさんを早く解放しろ!と叫びたくなってしまう。以前、ビルマを旅したことがあるんだけど、
あの国の人々は、実に穏やかというか、日本人にも近い奥ゆかしさといった気質がありいたく共感したモンだった。
そんな人々があれだけ怒るんだから、ホントにみんな軍事政権を憎み一刻も早い民主化を心から望んでいるんだ。

いくらなんでもタイのデモはチョットどうかと思うけど、コチラのデモの様子は壮観のひと言で、題材を抜きにしても、
1本の映画として、実に素晴らしいデキ映えだと思うし、軍とデモ隊の衝突シーンに至ってはいかな戦争映画にも、
マズ醸しえないような迫力で、だからそんな中で取材をつづけるジャーナリストたちにはホント頭が下がってしまう。
そして、当時も散々ニュースで見たけど、それ以上にリアルかつ衝撃的な長井さんが銃弾に撃たれるシーンには、
比類ないショックを受けて息を呑むとともに、あらためて熱い怒りが込み上げて、思わず手を握りしめてしまう……。
同じく現在公開中の戦場サスペンス 『グリーン・ゾーン』 もそりゃまるで本物の戦場を観るみたいな臨場感だけど、
やっぱり、『ビルマVJ』 のリアルには敵わない。(とはいえ、カメラが僧侶に近づく初めの件などは再現ドラマ。凄ぇ)
とにかく1人でも多くの人に観てほしい! これを選ばないアカデミー賞がいかに偽善かきっと誰にも伝わるハズだ。



というワケで、21世紀最高峰アクションの2本 『ボーン・スプレマシー』 『ボーン・アルティメイタム』 の名コンビが、
3度目のタッグを組んだ話題の大作映画 『グリーン・ゾーン』 は、2003年、米英連合軍の猛攻撃により陥落した、
イラクの首都バグダッドで、マット・デイモン演じる上級准尉が自分の部隊を率いて、イラク政府が隠したとされる、
大量破壊兵器の行方を追い砂漠を駆け廻るエピソードで始まる戦争映画というよりはむしろ、“戦場サスペンス”。
アメリカ人にしてみれば今頃イラク戦争やブッシュの顔など想い出したくないってことか、名コンビの新作にしちゃ、
本国じゃイマイチ揮わなかったようなんだけど、ポール・グリーングラス監督はおなじみのグラグラと揺れる映像と、
ド早いカット割を駆使し、まるでドキュメンタリーもかくやという怒涛の臨場感でもって戦場を疑似体験させてくれる。
何をおいてもマット・デイモンはいい役者だし、脇もよけりゃとにかく凄まじい迫力で114分微塵も飽きることはない。

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『インビクタス』 の主将役もよかったですね…。

ただ、ワシントン・ポストのジャーナリストが書いたノンフィクションがモトという本作。破壊兵器が「ある」と言われ、
そのたびに砂漠中を探し廻るものの、ついゾそんなモンは見つからず、上層部が胡散臭く思えてきたモンだから、
それで同じ疑念を抱くCIA調査官と組み主人公が独自の調査を始めると…けっきょく破壊兵器なんて真っ赤な嘘、
アメリカが戦争を始めるためのデッチ上げでした…ってな結末に最後は行き着くんだけど、そんなそれこそ今サラ、
世界中の誰もが知っている事実がオチっていうのはサスペンスとしていかがなものか?という気がしないでもなく、
ま、ある程度オチをわかった上で観ていてもこんだけ惹き込まれるんだから、それで怒る気にはならないとはいえ、
なんかなぁ~これならやっぱアクションに次ぐアクションの“ボーン”シリーズの方がよかったなぁ~という気はした。
まぁ政治色はないと創り手が言ったってかなりアメリカを皮肉ってるからそのヘンが痛快といえば痛快だったけど?


それに、ボクにとって 『グリーン・ゾーン』 は、あくまで 『ビルマVJ』 を紹介するためのダシなので、検索か何かで、
タマタマこの記事に引っ掛かった誰かが1人でも 『ビルマVJ』 というドキュメンタリーがあることを知り、興味を持ち、
そしてできれば映画館に足を運んで、観て、“何か”を想ってくれたらいいな…とそんな風に願ってやまないワケだ。

『ビルマVJ』
シアター・イメージフォーラム(渋谷) にて公開中 ]
『グリーン・ゾーン』
ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園) ほかにて公開中 ]