頑張れメキシコ、ホンジュラス! 『闇の列車、光の旅』&「無限の大陸 アフリカを旅する3つのフィルム」

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普段はサッカーなんて気にもしていないような人間が、やれW杯になった途端「頑張れニッポン!」と騒ぐなど、
逆に、熱心なサッカー・ファンや選手らに失礼という気がするので、とくに日本代表を声高に応援することもなく、
日々淡々と試合結果だけを追いかけたりしているワケだけど、それでもやっぱりW杯を時々観ると面白いのは、
国VS国の対決図式がわかりやすいのに加え、日頃耳慣れない名前の国を応援するのが個人的に楽しいから。
とくに今回は、南アフリカという日本人には未知なる国が開催国ということでそこもまた興味をソソられる部分で、
W杯がなけりゃ南アにブルセラ、もといブブゼラという民族楽器があることなど一生知らなかったかもしれないし、
また、そのほとんどが中国製品であるという事実には、“グローバリゼーション”の一端もうかがえて面白いなど、
スポーツの国際大会は競技云々だけじゃないから、ボクのようなスポーツ音痴でも、興味を持てたりするワケだ。

何も南アばかりではなく、とかくアフリカというとボクらは貧困や飢餓といったマイナスイメージを抱きがちだけど、
しかしアフリカこそが人類の起源なら、資源に恵まれた豊かな大陸であればこそ、長い間植民地支配を受けて、
20世紀の独立国家成立以降も、国々の独裁者だの先進諸国だのが開発援助資金と天然資源を貪るだけ貪り、
それが現在の格差を広げる端緒となったという経緯もあるワケで、別にアフリカ自体が貧しいワケでもなければ、
それはW杯を通して南アを見ればわかる部分とてあるハズで、だから、せっかく史上初のアフリカ大会なんだし、
もっとこういう機会に他のアフリカからの参加国コートジボアールやナイジェリアやガーナやアルジェリアのことも、
メディアは取り上げてくれたらいいのにな…と、元は旅好きのボクなんかは思ったりするのである。で、そんな中、
ならば少しは自分で勉強しに行くかと通ってみたのがこの企画。「無限の大陸 アフリカを旅する3つのフィルム」



3つのというぐらいだからアフリカを題材にした3本の映画を集めた企画なんだけど、いずれもドキュメンタリーで、
ボクが先日観てきたのは、南米のアマゾン川に次ぐ、世界第2位の流域面積と流量を誇り、熱帯雨林の広さも、
同じく第2位だという“コンゴ河”をたどる流域の歴史と、良くも悪くも河に頼って生きている人々の現実を描いた、
『コンゴ・リバー』 っていう作品。ベトナム戦争映画、『地獄の黙示録』 の原作ジョセフ・コンラッドの「闇の奥」は、
実はこのコンゴ河に影響を受けた小説らしいんだけれど、映画は、世界有数の熱帯雨林地帯を流れるこの河を、
河口から源流へ遡っていきながら、移動の手段というより、まるで船上で暮らしているのと大差ない人々の姿を、
至極淡々と映し出してゆく……。水夫は、昔ながらに棒で水深を計り、可愛いお猿さんは食料として丸焼にされ、
そんな様子がつづく冒頭は、あたかも「世界ウルルン滞在記」みたいでコチラの旅情をこれでもかと煽ってくれる。

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でも、河はその大いなる懐に人々の暮らしを抱きながらも、時に苛酷というぐらいじゃすまないような試練も与え、
単に感傷のみでは河じゃ生きてなどいけないことも映画はすぐに教えてくれる。そして流域の人々を描きながら、
映画はしだいに、コンゴが今なお尾を引くヘビーな問題、内戦の話へと移ってゆき、強姦された女性たちの話や、
過激な民兵の話などが、いつかの 『ホテル・ルワンダ』 が絶対に描かなかった内戦の真実を垣間見せてくれて、
そういう話を聞くと、やっぱりアフリカって一律怖いな…と思ってしまうし、冒頭の旅情もウソのように萎んでしまう。
しかし、それでも、教会で歌いながら祈る人々の真摯な姿や彼らの先天的としか思えないリズム感を見ていると、
コチラまで胸が熱くなったりもするし、時に死体さえ浮かぶ真っ茶色の河で“洗礼”を受けている人を見たりすると、
個人的にはインドのガンジス河を想い出して、あ~やっぱ死ぬまでにアフリカ往ってみたいなぁ~と思うのである。


残念ながら上映はもうすぐ終わってしまうんだけど、極めて虚飾の少ないドキュメンタリーで実に好感が持てたし、
後の2本(+参考上映2本)も観たいと思わせるそんな好企画だったんじゃないかと思う。またいずれやってほしい。
…さて、話は戻り今回のW杯出場国で「へェ、サッカー強いんだ」と思った国がありそれが中南米のホンジュラス。
怪獣みたいなホンジャマカみたいな一風変わった名前の国だけど、正直、どういうお国柄なのかは想像だにせず、
調べると中南米諸国の中でも最も貧しい、世界最貧国の一つらしくて、やはりサッカーが国民的スポーツだという。
W杯を機にまた一つ、未知の国について知ることができた。そしてそんなホンジュラスのW杯出場と合わすように、
というワケではないんだろうが実は今、偶然ホンジュラスが舞台の映画がやっていて、それがサンダンスをはじめ、
多くの映画祭で絶賛されたという、『闇の列車、光の旅』。これ、ハッキリいって映画ならホンジュラス優勝の傑作!



まぁホンジュラスが舞台の一つというだけで映画自体はアメリカとメキシコの合作なんだけど、とにかくシビレた!
ストーリーは、父と叔父の3人で、ホンジュラスからグアテマラとメキシコを経由してアメリカを目指すことになった、
サイラという少女と、メキシコのギャングに属するカスペルという青年が、移民を乗せた列車の上で出逢うんだが、
カスペルは最初は強盗目的で乗り込んだものの、とある経緯でサイラを襲おうとしていたリーダーを殺してしまい、
それがモトで組織から追われることになり、彼を信頼する内に恋心を抱くようになったサイラは危険を承知の上で、
彼についてゆくことを決心するという……。できれば、なんの予備知識もなく観た方が、より入り込めると思うんで、
これ以上、筋に触れるようなことは書きたくないんだけど、なにしろ中南米のタフな現実をベースにしたドラマには、
終始緊張感がありその上で中盤より始まる2人の逃避行が繊細に描かれているためコチラも気持が入ってしまう。

移民について描いているということで社会派テイストが強く、鑑賞する前は2年前に公開されたアルゼンチン映画、
『今夜、列車は走る』 みたいな映画なのかと思っていたんだけど、もちろん社会派としても充分鑑賞に堪えるよう、
細かく設計はされていながらも、それ以上に、主人公2人の希望や絶望といった機微が丁寧に描かれているから、
その決してベタじゃない愛の逃避行は、しかし、『ゲッタウェイ』 や 『トゥルー・ロマンス』 などの名作を越す勢いで、
観る者の胸に迫り、ときめかせ、どうか、どうか2人の前途に、希望があってほしいと願わないではいられぬような、
胸をカキむしるような気持を抱かせてしまうのである。弱冠32歳で父方の祖父が日本出身の日系アメリカ人という、
キャリー・ジョージ・フクナガ監督のとてもこれが長篇初監督とは思えぬ緩急自在の語り口はひたすら見事の一語。
リアルな描写に心の琴線に触れるドラマ。彼は間違いなく 『息もできない』 のヤン・イクチュンと並ぶ逸材だと思う。


いやぁ~ほんと~にいい映画だった。やっぱり惚れ合った若い男女の明日なき逃避行というのは、いつの時代も、
人の心を捕えて離さんモンです。(俺なんか愛想が尽きて嫌んなった女から逃げたっつう経験しかないモンなぁ…)
それにそれに、カスペルの最初のカノジョを演じた子なんてメチャクチャ美形な上にすーんごいエッチな体してたし、
サイラ役のパウリーナ・ガイタンがクライマックスで魅せる小麦色の柔肌に胸がこぼれそーな鮮烈すぎる下着姿も、
宮崎美子以来の衝撃で(古っ)、あ~やっぱりラテン系の女の子はいいなぁ~アフリカへもそりゃ行ってみたいけど、
やっぱり中南米や南米にも死ぬまでに行ってみたいなぁ~とそんなことも思わせる映画だった。(常に動機が不純)
というワケで! ’02年の日韓の時はトルコサポーター、そしてドイツの時は実はチェコサポーターだったボクだけど、
今回のW杯はホンジュラス! そしてホンジュラスがこのままダメならばメキシコサポーターでいきたいと思います!

ブブブ~! (←ブルセラ、間違えたブブゼラの音)

『闇の列車、光の旅』
TOHOシネマズ シャンテ(日比谷) にて公開中 ]
「無限の大陸 アフリカを旅する3つのフィルム」
シアター・イメージフォーラム(渋谷) にて6月25日(金)まで開催 ]