超オシャレなメガネ男子のブラジル人監督、その名は… 「ブラジル映画祭2010」

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ただ今、渋谷で開催中の、「ブラジル映画祭2010」で紹介されている1本 『ザ・フェイマス・アンド・ザ・デッド』 は、
ブラジル南部の小さな町を舞台に、母親と2人で暮らし、日々、閉塞的な感情を抱きながらネットに没頭している、
1人の少年の青春の彷徨をそれは肌理細やかに描いた秀作なんだけど、この映画の、大きな観どころの一つは、
なによりボクたちが普段ブラジルという国に対して抱いているサッカーやサンバなどのキーワードから想起される、
熱くて賑やかなイメージとはおよそほど遠い、まるで北欧かと思うような静謐感漂うブラジルの知られざる一側面。
具体的に話の舞台になっているのはテウトニアという町なんだけど、ブラジル人でも知らない人が多いというほど、
南部の田舎にある町らしくドイツ系の移民が多いということで、そのヘンでやはりいかにもブラジルなイメージとは、
一線を画すような空気がこの映画にも漂っているということみたい。とにかくブラジル映画っぽくないブラジル映画。



で、この映画は来春アップリンク配給で 『名前のない少年、脚のない少女』 という邦題での公開が決まっており、
そのカラミで監督であるエズミール・フィーリョ氏が来日していたことから、急遽、先こないだのワークショップでは、
フィーリョ監督をゲストに迎えてのよりプライベートなティーチ・インというカタチになり様々な話が聞けて楽しかった。
まぁ映画の製作秘話についてはコチラのインタビュー記事とカブる部分も多かったから、ご一読していただければ、
より映画の世界を興味深く楽しむことができるんじゃないかと思うんだけど、なにしろこのフィーリョ監督というのが、
さすがモデル経験もあるというぐらい超がつくほどオシャレセンス抜群のメガネ男子で、映画を撮らせたらウマいし、
オシャレだし優しそうだしいかにも女のコにモテそうだしで、ボクなんかもうなんの取り柄もなきゃ、フィーリョ監督と、
浅井さんが英語で話しているのを聞いていても半分ほどしか理解できないしでチョット落ち込んだりもしてしまった。

そんなに時間はなかったんだけど、それでもボクらの質問にも快く爽やかに応えてくれ、ボクがもちろん日本語で、
「映画を撮るにあたってインスパイアされた映画は…?」と訊ねると、けっきょくタイトルはわからなかったんだけど、
なんかスウェーデンの、“スウェーデンなんだけど気温の高い町を舞台にした映画”と、昨年の東京国際映画祭で、
特集されて話題にもなったメキシコの気鋭監督、カルロス・レイガダスの映画から影響を受けたということだった―。
あと、映画を観た人に、岩井俊二の 『リリィ・シュシュのすべて』 と雰囲気が似ているなんてことも言われたらしい。
なるほど、一理あるかもしれん。今頃になりあれも訊けばよかったこれも訊けばよかったと質問が浮かぶんだけど、
とにかくオシャレで優しげでナイスガイだった新星“エズミール・フィーリョ”の名前は今後憶えておくべきだと思うし、
『名前のない少年、脚のない少女』 は本当にいい映画なので、来年ぜひ映画館で観てもらえたらな…と思います。

あぁ監督にこそ今回の映画祭でのおススメを訊いておけばよかった。というワケで、昨年につづき今年も観てきた、
「ブラジル映画祭2010」。今回は上述のような経緯もあって去年以上にワクワク期待しながら観に行ったんだけど、
日曜日に行ったら劇場はなかなかな賑わいで、方々で交わされる会話に耳を傾けていると、やっぱり映画以上に、
ブラジルが好きで、もしくは興味があって来ているという人も多い様子だった。まさに、映画で国際親善。いい話だ。
そしていい話といえば去年観た3作品もそれぞれ面白かったハズだけど今回観た3本はそれっ以上に面白かった!
ワールドカップはやるしオリンピックは決まったし映画は面白いし女性は美しいしで、ブラジルの勢いは止まらない。
ボクが観てきたのは、『僕のことを話そう』 っていう伝記ドラマに 『世界が終わりを告げる前に』 という青春ドラマに、
『恋はまぼろし』 というコメディの3本。マズ、『僕のことを話そう』 はブラジルの有名人の半生を描いた感動の実話。



その有名人とは、教育学者でもありブラジル有数のストーリーテラー(噺家って意味?)としても活躍しているという、
ホベルト・カルロス・ラモスなる人で、この映画は、児童施設にいた頃の彼が、1人のフランス人教育学者と出逢い、
彼女に引き取られてともに暮らし始めるウチに、チョットずつ心を開いてゆく姿を丁寧に描いたというものなんだけど、
少年時代の主人公を通じブラジルの苛酷な現実の一側面をありのままに描きつつも、映画に悲愴感は感じられず、
今が噺家だけにその人生行路がそれは皮肉とユーモアたっぷりに綴られてゆくというそんな感じになっているんだ。
決してお涙頂戴にすることもなく清々しい後味なのが好感度大だし、なによりテーマとして教育ってものの大切さと、
教育には愛と忍耐と対話が必要ということを謳っているのが素晴らしく、一方の教育学者、マルグリットの人生にも、
もう少し踏み込めばより奥行きも深くなった気はするんだけど、とにかく感動したしこれは断然おススメの1本だった。



『世界が終わりを告げる前に』 は、『名前のない少年~』 と印象がカブるところもあるこれまた繊細な青春ドラマで、
やっぱりブラジル南部の小さな田舎町で母と継父、そして生意気な腹違いの妹と暮らす15歳の男のコを主人公に、
カノジョとの関係や友情、複雑な家族関係に揺れる彼の青春の機微を、実にセンスのよい映像感覚で捉えた作品。
『名前のない少年~』 の主人公は、そこに実体の稀薄さを憶えつつも、ネットを通じ“世界”を知覚してゆくんだけど、
コチラの主人公はある日突然届き始めた、NGOメンバーとして世界中を旅している実父からの手紙や写真によって、
まだ見ぬ世界を実感し、そして逆に実父へ送るべく自分の周りを写真に撮ることで自分の“居場所”を認識してゆく。
そして、主人公は最後、実父へ逢いに行く決断をするということで 『名前のない少年~』 とテイストは異なるものの、
なにしろブラジルの南部というのは、ボクらがイメージするブラジルとは全然違うってことが本作を観ても理解できる。



そして3本目の 『恋はまぼろし』 はかなりベタベタな笑いが満載のお色気コメディで、これはきっと観た人によって、
好悪真っ二つの作品だと思うんだけどボクはすっごく笑ったし身に詰まされる部分も多くて大変好きな映画だった!
愛する妻に突然離婚され失意のどん底にいた主人公の元へ、ある日ブロンドでスタイル抜群でサッカーにも詳しく、
夜が大胆な上に全然嫉妬深くないという超理想的な女性が現れ、彼はすぐさま彼女と結婚すると言い出すものの、
実は彼女は主人公の“妄想の産物”で、他人には彼が超お下劣な1人芝居をしているようにしか見えないという話。
去年の 『下水って、匂う。』 でも怪演していたセルトン・メロが主人公役なんだけど彼の1人芝居にとにかく大笑い!
とはいえそうしたおバカなコメディが観ているウチに意外と恋愛の核心、つまり所詮“愛なんて常に1人相撲”という、
男にとっては痛くもある急所を的確に突いているような気もしてきてこれはバカにできんなと思ってしまうというワケ。

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妄想でもいいからボクのアパートにもぜひ来てほしいです・・・。

別れた奥さんも実はブロンド美女でけっきょく彼は女性を見た目で選んでおり、妄想カノジョに追い詰められながら、
やがて彼は本物の愛を見つけてゆくという、後半はそんな展開なんだけど、もう1人のヒロインの絡ませ方も巧くて、
話はかなり練られているから、いったいどんなオチがつくのか見当もつかず、グイグイ惹き込まれて観入ってしまう。
笑えるし、エッチだし、考えさせれるしでボクはコレ、好きなんだけどなぁ~。後半のサイコ・コメディな芝居を観るに、
このセルトン・メロという人はひょっとしたら“ブラジルのジム・キャリー”と呼んでもいいような役者なのかもしれない。
会場は爆笑の連続だったけどボクもよく笑った。もう1回観たい。アップリンクで配給してくんないかネ?(絶対無理)。
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そんなワケで、4本を観て4本とも及第点以上のデキだったという驚異の「ブラジル映画祭」。ドラマからコメディから、
ドキュメンタリーまでこれだけ粒が揃っている映画祭を観逃す手はない。残念ながら東京での上映は終了したけど、
今後、大阪、浜松、京都と巡回する予定になっているから、ぜひ通ってブラジルの勢いを映画で感じてみてほしい!
ただ、オシャレメガネなエズミール・フィーリョ監督はもうブラジルに帰りました。動画サイトの監督のページを観ると、
ワークショップの様子も少しだけ挙がってるんだけどバカ面で映ってるので教えません!(つーか勝手に挙げるなよ)

「ブラジル映画祭2010」
大阪シネ・ヌーヴォ にて10月16日(土)~22日(金)まで、
 浜松シネマ・イーラ にて10月23日(土)~29日(金)まで、
 京都シネマ にて11月13日(土)~19日(金)まで開催 ]