やっぱり韓国映画は泣かせ方がウマいよね? 『義兄弟』&『国家代表!?』

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何を隠そう、実はボクは“日本語教師”(外人さんに日本語を教える先生。そのまま)の資格を持っており、数年前、
ソチラの方へ人生の活路を見出せないかと、“日本語教師養成講座”というものに1年ほど通って取ったんだけど、
その時の講師陣に、日本語の研究をしている韓国人女性の先生がいて、週に1回はその人の授業を受けていた。
韓国の人に日本語を教わるというのも少し妙な気がするかもだけど、要は、日本語の教え方を教わる授業だから、
韓国語と日本語の両方に精通していれば、韓国人には、いったいどんな日本語が発音しづらいのかなどといった、
実地的なことがよくわかって、なるほどと思うことが実に多い面白い授業だったのだ。たとえば韓国人が日本語で、
「ありがとうございます」と言うと、たいてい「ありがとうごじゃいます」と可愛らしくなるんだけど、それはハングルに、
ザ行の発音がなく、「じゃじじゅじぇじょ」になってしまうから…とか。ザッケローニも韓国じゃジャッケローニだと思う。

で、その先生は教え方も巧かったけど実に気さくなタイプでそれ以上に“おしゃべり”が好きだったから、ともすると、
すぐに話が脇に逸れ、受講者も女性が中心だっただけに授業がいつしかただのティータイムと化すことも多かった。
まぁその方が楽しいし、時は韓流ブームの真っただ中だったため韓国の流行や芸能情報なんかもリアルに聞けて、
結果的にはそれでよかったって思うんだけど、もちろん、そんな感じだから時には韓国映画で盛り上がることもあり、
しかしけっきょくほかの人は韓国映画をそれほど観ていないから、ボクと先生しか話が通じない、なんて時もあった。
で、そんな話の中で一度、韓国と北朝鮮の国境兵同士の友情を描いて我が国でも大ヒットをした 『JSA』 について、
映画なんだからあれはもう少し希望のある終わり方にしてもよかったんじゃないか?と訊いたことがあったんだけど、
先生曰く、南北分断は現実ですからそう易々と希望のあるような終わり方をするワケにはいかないということだった。

まぁそう言われてコチラも安易な感傷で映画を観ていただけの人間ゆえ、ふ~ん、当事者にすればそういうものか、
とその時は至極納得した憶えがあるんだけど、確かに、今年も前半にいわゆる脱北者の悲惨すぎる現実を描いた、
『クロッシング』 がヒットしてボクもいたく胸を締めつけられ、拉致被害者は一向に帰ってこなきゃ、当の北朝鮮では、
見るからにバカそうなヤツが後継者に選ばれるなど、なるほど、希望などと呑気に言ってられないな…という感じで、
南北分断をテーマにしながら、ハッピーエンドを描くくだなんて、そう易々とは歴史が許してくれないのかもしれない。
だけど、やはりそれだからこそ、せめて映画という虚構の中でぐらい少しはハッピーエンドがあったっていいと思うし、
正直、南北分断をネタにしていかにも重~い悲劇もソロソロな…と思っていたら、今回の 『義兄弟』 である。驚いた。
そしてムチャクチャ面白かった! やっぱり現実がどうしようもなく重たいからこそ時に映画は希望を謳うべきなのだ!



というワケで、『JSA』 では北朝鮮側の国境兵を演じていた稀代の名優ソン・ガンホと、出演作はよく知らないけど、
カン・ドンウォンという2大スターが共演し、新宿の劇場でも、おそらくカン・ドンウォン目当ての女性で賑わっていた、
話題の韓国映画 『義兄弟』 は、北朝鮮側のスパイと、それを追い詰める国家情報院に属す男という、要は北と南、
それぞれの国家に翻弄される2人の男の葛藤を、しかし今までの南北分断物のようにただ重々しいだけじゃなくて、
ヘビーな中にも軽快なユーモアを散りばめながら重さと軽さの絶妙なバランスで描いたこのジャンルの新たな傑作。
『シュリ』 や、『JSA』 から早10年。南北分断というテーマは、重厚な悲劇という従来型のドラマツルギーをブチ破り、
ついに新たなる高みまで到達したようだ! 映画はいきなり北朝鮮スパイと国家情報員との激しい銃撃戦で始まる。
多くの死傷者を出した上にスパイを取り逃した責任で、ソン・ガンホ扮するイ・ハンギュは組織を閑職になってしまう。

それから6年後、ハンギュは、家出した妻や逃げた外国人花嫁などを捜す探偵紛いの仕事を食い扶持にしていた。
そんなある日、彼は銃撃戦の折りに逃走した北朝鮮スパイ、カン・ドンウォン扮するソン・ジウォンに偶然出喰わす。
ジウォンもまた、事件後、祖国に帰れなくなり、パク・キジュンと名前を変えて6年間、ずっと潜伏生活を送っていた。
ジウォンに懸賞金がかかっていることを知っていたハンギュは彼を自分の仕事へ誘い込み、ジウォンはジウォンで、
ハンギュを利用すべくそれを受け2人は一緒に働き出すが、それぞれの思惑を胸に隠しつつも寝食を共にするウチ、
やがて彼らは、少しずつだが心を通わせてゆく。ところが、そんな折り、2人の運命を揺るがす事件が起こって……。
といった具合にもう冒頭の銃撃戦からこれだァ~!という感じで一気に映画の世界へ引きずり込まれるワケだけど、
なにより、本作が他の南北分断物と異なるのは、随所で笑いを呼びながらも決して題材を軽くしないユーモアの妙。

冒頭から6年が経つと急に雰囲気が変わりそれからはまるでコメディかと思うほどガンホが笑わせてくれるんだが、
だからって映画が少しも軽薄にならないのは、やはり彼の巧さゆえで、女房子供に逃げられたダメ男を演じる彼と、
笑わせはしないけど、繊細さと孤高性が胸を打つドンウォンの緊張感漲る存在感の対比が、見事物語の軸になり、
映画はコメディとシリアス、またはサスペンスと人情劇などあらゆる娯楽映画の内領域を自由自在に往来しながら、
2人の関係に観る者を骨の髄までグイグイ感情移入させ、怒涛のクライマックスへと一気に引っ張っていってくれる。
冒頭の銃撃戦だけじゃなく中盤で2人が不法入国の一団と格闘するシーンのアクションは手に汗を握る痛快さだし、
家出妻や外国人花嫁を金ヅルとしか思っていなかったハンギュがジウォンによって変わりゆく心理描写も見事なら、
ハンギュがついにジウォンの正体を知っていたことを話す件ではグッと目頭が熱くなるなど、なにしろ観どころ満載!

大団円に向けてどんどん悲愴感が増してゆくと、やっぱり最後はド悲劇なのか!?とコチラは一瞬身構えるんだけど、
それを鮮やかに裏切ってラストに確かな希望を見せる本作の懐深さは単にこれが娯楽映画だからではないと思う。
本作が実に550万人もの観客を動員したのは、たとえ現実は厳しくとも、やはりこれが韓国人たちの願いだからだ。
こんな面白く、痛快で、実に意義のある作品を撮ったのは、鬼才キム・ギドク監督の下で助監督を務め、本作同様、
敵対していた男2人が殴り合いを通じて絆を深めてゆく姿を超鮮烈に描いた傑作 『映画は映画だ』 でデビューした、
期待の新鋭、チャン・フン監督。内面を細心彫り下げる洞察力といい娯楽性と作家性の類稀なバランス感覚といい、
ハッキリいって、監督第2作目にして師匠を完全に超えてしまっている。ヤン・イクチュンとともに今後期待大の男だ。
あ~本当に面白かった! 上映館が都内1館だけだなんて、まったく信じられない、とにかくこの秋、必見の傑作だ!


一方、カン・ドンウォンのようなイケメンが出ていないからか、ボクが行った日には劇場はガラッガラだったんだけど、
同じく韓国映画で、先の「したまちコメディ映画祭」でも紹介された作品、『チェイサー』 のハ・ジョンウが出てもいる、
『国家代表!?』 は、1998年の長野オリンピックに、韓国最初のスキージャンプ代表として出場したアスリートたちは、
実はみな、ジャンプ未経験のド素人だったというウソみたいな実話をモトに、クズ呼ばわりされる人生のどん底から、
世界の大舞台を目指すことに決めた男たちのトホホで熱い物語を涙と笑いでひっ包めた感動スポ根コメディ・ドラマ。
正直、この内容で2時間半はチョイと長過ぎだし、『カンナさん大成功です!』 のキム・ヨンファ監督の演出も大味で、
決して完成度が高いとは言い難いそんな作品なんだけど、しかしやっぱり話が“スポ根×人生再起”で明快なのと、
クライマックスの競技シーンが、バカにできない迫力と臨場感だったこともあってついつい見せられたな、という感じ。



それにその前に、『義兄弟』 を観てすっかり涙腺がタプタプの状態になっていたため、ラスト近くの空港のシーンで、
ハ・ジョンウが見せる男泣き(競技へ出て実の母親を捜すという役)には、ガッツリともらい泣きまでしてしまった(恥)。
ホント、韓国映画で久しぶりに泣いた。ベタで下品な時もあるけど、やっぱり韓国映画は泣かせるのがウマいよな?
野球やサッカーなど、スポーツじゃ負けてほしくないけど日本映画はもう永久に韓国映画には勝てないと思います!
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しかし書いているウチにイロイロ想い出したけれど日本語教師養成講座、けっきょくそれ1本で食べていけるほどの、
食い扶持にはできそうもなかったから、ソッチに人生の活路を見出すのはすぐ諦めたんだけど、楽しかったよなァ~。
せっかく資格取ったんだから、腐らないウチに(かなり腐ったけど)、いつか少しでも活用しないと。というワケで、もし、
互いの言語を教え合う、マンツーマンのカタチで日本語を憶えたいと思っている外人さんをご存知の方がいらしたら、
どーゾ気なしに連絡してください。できれば女性30代まで(人妻可)。素敵な韓国の女性大歓迎です!サランゲぇ~。

『義兄弟』
シネマート新宿 にて公開中 ]
『国家代表!?』
シネマスクエアとうきゅう(新宿)、丸の内TOEI ほかにて公開中 ]