“家族”について考えるフランス映画二本立! 『クリスマス・ストーリー』&『Ricky リッキー』

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ちょうど年始が土日なので今度の正月休みは全国的に短くなりそうとはいえ、なんとか1週間くらいは休みを取り、
今回も実家のある名古屋方面に帰省しようと考えているんだが、兄貴の一家に逢ったり、大学の友人に逢ったり、
そんなことも楽しみながら、なにより1日3食が付いて、しかも上げ膳据え膳であとはひたすらゴロゴロできることを、
今か今かというほどじゃないものの楽しみしている。ヤモメの男が実家に帰る楽しみといったらやっぱりこれだろう。
思えば来年で39にもなろうって男が実家に帰ることを楽しみにできるのも、ずいぶん呑気で気楽な話だワなぁ…と、
やや自嘲気味に思うんだけど、しかしそういう風に、長い休みのたんびに帰省する気になれるのも、やはり最大は、
帰ってもお袋がやれ「早く結婚しろ」だとか「もっとマシな仕事に就け」みたいなことをガミガミ言わないからだと思う。
もしもそうじゃなかったら、煩わしくて帰省なんてほとんどしないだろうし、しても1、2日でトンボ返りという感じだろう。

もちろんお袋だって何も言わないワケではなく、「誰かいい人いないの」とか「オマエの将来“だけ”が心配だ」とか、
何かにつけて言ってはくるんだけど、やはりボクに対しては親父のあれで苦労をかけたという負い目があるからか、
最後はいつも「アンタの人生だから」という感じで話が終わる。ボクはただ「ハイハイ」と右から左で聞いているだけ。
照れ臭くて言わないが、いい母親のモトに生まれたと思っているし、今となると父親がダメ人間でケッコウよかった。
もしも父親がマトモな働き者で今も生きていたら、とてもじゃないけどこんなボンクラ暮らし、許してはくれないだろう。
兄貴も内心、イロイロ思ってはいるんだろうけど、兄貴は兄貴でまた、長男なのに家を出たという想いがあるからか、
弟に対して遠慮があるようだし、なにより自分の娘が思いのほか懐いているから今はとくに文句はないって様子で、
兄貴がそんな風だとこれまた弟は気楽。こんな叔父でも懐いてくれる可愛い姪っ子2人に恵まれて本当によかった。

そんなワケで、先のことはわからないとはいえ、あくまで今のところボクの家族にこれといった問題はないんだけど、
(その代わり、親戚筋にはなんか逢いにくいという気持があるし、顔も見たくないという親戚もいたりするんだけど…)
しかし“家族”というのは人間がこの世に生まれて初めに出逢う、しかも血のつながった社会だから、当然そこには、
他の人間関係より濃い、しがらみがあるワケで、そのしがらみはまた、易々と解決するレベルじゃなかったりもする。
よくラジオの人生相談を聴くけれどほとんどが家族間の悩みだし、マジメな話、ボクが家族を作ろうと思わないのは、
自分に守るべきものがあると、たとえば親が死んだ時とかに、“金銭問題”で兄貴とモメることもあるような気がして、
そういうのがゼッタイに嫌だからだ。そりゃボクだってこの先お金はいるけれど、しかし可愛い姪っ子のためだったら、
ボクのことなど多少はどーだっていい(多少ね)。とにかく、今週観た2本の映画は“家族”について考えさせてくれた。



『そして僕は恋をする』 『キングス&クイーン』 で知られるフランス映画界の俊英アルノー・デプレシャン監督最新作、
『クリスマス・ストーリー』 は、タイトルこそ“今の季節”にピッタリのセンチであったかそうな響きを持っているけれど、
その実、意外にクセ者な監督の創る作品らしく、フタを開ければその内容はある家族のままならないしがらみの話。
オマケに2時間半と“やっぱり”長く語り口も独特だから、あまり体調が好くないと寝てしまうこともあるかもしれない。
だけど、逆に一度波に乗れたと思ったらそんな長さもアッという間。ボク自身、『そして僕は恋をする』 は爆睡したし、
前の 『キングス&クイーン』 もチョット厳しかった覚えがあるんだけど、本作は最後まで大変面白く観ることができた。
デプレシャンを面白がれるようになったんだから、まァボクも大人になったモンだ。物語は、母親の病気をキッカケに、
疎遠になっていた子供たちがそれぞれの家族を連れてクリスマスを過ごすため家に来るという至極シンプルなもの。

しかし、5年前にまさにお金の問題で姉に家族から追放された問題児の弟も訪ねてきたことから(昔から仲が悪い)、
平穏な空気は一転し、家の中に波風が立ち始める。母は白血病で、助かるには、骨髄移植するしかないんだけど、
一家の中で骨髄提供できるのが、長女たる姉の息子と、その問題児の弟だけだったため、自分の息子を押しのけ、
骨髄を提供すると言い張る彼を許せない姉はもう発狂寸前。家の中は、とてもメリークリスマスなんて空気ではなく、
はてさて、この一家はいったいどんな12月25日を迎えるのやら…といった趣きでストーリーは転がってゆくんだけど、
顔を合わしゃケンカばかりというそんなバラバラなある一家の内紛を描きながらも、それをケしてドロドロとは描かず、
真に肌理細やかな語り口でイロイロあるけどそれでも家族は「悪くない」という方向に持ってゆくのが本作の美点で、
観る人はこの家族のイザコザに、きっと自身を重ねつつ、ラストはため息まじりの温かい余韻に包まれることになる。

本当は兄の白血病を治す目的で儲けられたものの、けっきょく骨髄が合わず、その子は6歳で死んでしまったため、
生まれながら“役立たず”となり、そのまま問題児として生きてきた次男アンリを、マチュー・アマルリックが大好演。
彼と対立する長女をアンヌ・コンシニ、自分の死以上に病気による美貌の衰えを気にする母親をカトリーヌ・ドヌーヴ、
イケメン俳優のメルヴィル・プポーが自分の家族と同じように、自殺未遂を図るような繊細な長女の息子を思いやる、
優しい末っ子を演じれば、彼を愛しながらも本当はドヌーヴの兄の息子の方が好きだったその妻を、ドヌーヴ女史と、
マルチェロ・マストロヤンニの娘キアラ・マストロヤンニが、それこそ往年のドヌーヴを思わすような色香で演じるなど、
とにかく、こうして書いているだけでもややこしい、複雑な家族の物語を、本作は実にフランス映画チックな繊細さと、
まさしくフランス映画を代表する錚々たる名優たちの至高の芝居のアンサンブルでしっかりと堪能させてくれるんだ。

小気味好いヨーロッパ・コープ製の娯楽映画や残酷描写が天井知らずのスプラッター映画ももちろん大好きだけど、
こういういかにもフランス映画っぽいフランス映画もタマには悪くないし、デプレシャンはケッコウ骨太なタイプと思う。
150分と確かに上映時間は長いけど、仕事帰りに1人で観るのにもデートで観るのにも最適の逸品じゃなかろうか?
一方、いかにもフランス映画らしい作品を撮る監督といえば、この人だってその1人。とはいえ、元々出始めの頃は、
毒気の強い異端作家みたく思われていたのが、『まぼろし』 ぐらいから“女性映画の名手”と謳われるようになった、
フランソワ・オゾン監督の最新作、『Ricky リッキー』 は、そんな元々は異端作家の本領を今回久々に発揮しながら、
しかしそれとバランス好く今までにない可愛らしさをも随所に散りばめて描く、これまた家族にまつわる寓話的物語。
かつて“翼の折れたエンジェル”という歌があったけど、これは比喩じゃなくそのまま“翼の生えた赤ちゃん”の物語。



母子家庭で可愛い1人娘がいながら、逢ったばかりの職場の男と便所ですぐヤッてしまいそのまま付き合うという、
いかにも都市近郊っぽいトラッシュな男女関係を描いて冒頭からコチラをゲンナリとさせつつ、だけどオゾン監督が、
軽妙な語り口でその後紡いでみせるのは、なぜかそんな男と女の間に生まれた“翼を持つ赤ちゃん”がもたらした、
ハタから見たらイビツだけどそれはそれで温かい家族というものの幸福感……。いったいこれはなんの話なのかと、
少し悩みながらずっと映画を観ていたんだけど、やっぱりこれはストレートに考えて、子供は翼の生えた天使と同じ、
転じて“子供は天からの授かり物”という直球のテーマを変化球的に描いた寓話ファンタジーなんじゃないのかなと。
一旦、男は出てゆくけど、リッキーの世話をすべく(あ、赤ちゃんの名前ネ)、母と娘の関係が濃くなってゆくあたりは、
クスッとするユーモアとリッキー役の赤ちゃんの絶妙な愛らしさと相まって“家族の温もり”をコチラへと届けてくれる。

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カワイイぃ~。(飛んでタンスの上に乗ったの図)

正直、男役に全然精彩がないから(『ナイト・トーキョー・デイ』 で菊地凛子を舐め廻す時だけちゃんと芝居してた人)、
ヤツだけはキャラとして最後まで好きになれないし、それが、もう一つグッと来ないクライマックスの展開と相まって、
リッキーのオカゲで3人がヤットで本物の家族になるという部分に説得力を感じられなかったのが残念なんだけども、
まぁ90分と(手頃だ!)なんだかワケもわからぬウチに惹き込まれて、素直に心温まるいい話だと最後には思ったし、
翼の生える過程をヤケにグロぉく見せるところにオゾン本来のバッド・テイストを感じるなどして、味のある1本だった。
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というワケで、“家族”について考えるフランス映画二本立。やっぱり 『リッキー』 のような映画をタマに観てしまうと、
あ~自分も子供ほしかったなぁ…なんてチョッピリ思ったりする。オイラも昔は“天からの授かり物”だったのかねぇ?
それが38年も経ったらこんなに身も心も汚れちゃって…(恥)。やっぱり今はまだ“翼の生えた”赤ちゃんよりちゃんと、
“毛の生えた”天使みたいな女のコの方がいいモンな…また書いてしまった。姪っ子に嫌われるのも時間の問題だ。

『クリスマス・ストーリー』
恵比寿ガーデンシネマ にて公開中 ]
『Ricky リッキー』
ル・シネマ(渋谷) にて公開中 ]