黒いリボンと、白く濁る村 『白いリボン』&『黒く濁る村』

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1.『レクイエム・フォー・ドリーム』(’00・アメリカ/ダーレン・アロノフスキー)
2.『ザ・ロード』(’09・アメリカ/ジョン・ヒルコート)
3.『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(’00・デンマーク=ドイツ/ラース・フォン・トリアー)
4.『アンジェラの灰』(’99・アメリカ=アイルランド/アラン・パーカー)
5.『ミスト』(’07・アメリカ/フランク・ダラボン)
6.『プレシャス』(’09・アメリカ/リー・ダニエルズ)
7.『日蔭のふたり』(’96・イギリス/マイケル・ウィンターボトム)
8.『ドクトル・ジバゴ』(’65・アメリカ=イタリア/デヴィッド・リーン)
9.『ヴェラ・ドレイク』(’04・イギリス=フランス=ニュージーランド/マイク・リー)
10.『ソフィーの選択』(’82・アメリカ/アラン・J・パクラ)
11.『リリア 4-ever』(’02・スウェーデン/ルーカス・ムーディソン)【日本劇場未公開】
12.『ケス』(’69・イギリス/ケン・ローチ)
13.『エレファント・マン』(’80・アメリカ=イギリス/デヴィッド・リンチ)
14.『風が吹くとき』(’86・イギリス/ジミー・T・ムラカミ)
15.『ホテル・ルワンダ』(’04・イギリス=イタリア=南アフリカ/テリー・ジョージ)
16.『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(’08・アメリカ=イギリス/サム・メンデス)
17.『火垂るの墓』(’88・日本/高畑 勲)
18.『砂と霧の家』(’03・アメリカ/バディム・パールマン)
19.『Scum』(’79・イギリス/アラン・クラーク)【日本劇場未公開】
20.『ナイロビの蜂』(’05・イギリス/フェルナンド・メイレレス)
21.『黄色い老犬』(’57・アメリカ/ロバート・スティーブンソン)
22.『ミリオンダラー・ベイビー』(’04・アメリカ/クリント・イーストウッド)
23.『キリング・フィールド』(’84・イギリス/ローランド・ジョフィ)
24.『パッション』(’04・アメリカ/メル・ギブソン)
25.『カッコーの巣の上で』(’75・アメリカ/ミロス・フォアマン)
26.『Dead Man’s Shoes』(’04・イギリス/シェーン・メドウズ)【日本劇場未公開】
27.『叫びとささやき』(’72・スウェーデン/イングマール・ベルイマン)
28.『チャイナタウン』(’74・アメリカ/ロマン・ポランスキー)
29.『リービング・ラスベガス』(’95・アメリカ=フランス=イギリス/マイク・フィギス)
30.『縞模様のパジャマの少年』(’08・イギリス=アメリカ/マーク・ハーマン)

↑これ、いったいなんの映画ランキングだかわかるだろうか? 先日映画祭スタッフの女性が教えてくれたんだが、
これは、イギリスの映画雑誌「TOTAL FILM」(そんな雑誌あるんだ)が選んだ、「気がめいる陰鬱な映画ベスト30」
調べるとその他にもイロイロと面白いランキングをやっている雑誌みたいなんだけど、日本では名作との誉れ高い、
『火垂るの墓』 がアジア圏から唯一ランクインしているのが興味深いところで、堂々1位の 『レクイエム~』 などは、
同じくイギリスのエンパイア誌が選んだ「落ち込む映画ベスト10」でもブッチ切りの1位だったっていうんだから相当。
もちろんボクも日本で公開された2001年の夏に観ており、観終わった後で確かにグッタリした憶えがあるんだけど、
しかしそれは、映画の内容より当時、女関係でかなりゴタゴタしていたから。あ~オカゲで嫌なこと想い出したワイ。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 の気が滅入るは至極納得なものの、後は個人的には気が滅入るというほどでもない。

30本中観ているのは20本だけど、『ミスト』 なんて大好きな1本だし、『ケス』 とか 『ミリオンダラー・ベイビー』 とか、
『カッコーの巣の上で』 なんてフツーに映画史上の名作で、仮に、イーストウッドで気が滅入る1本というのだったら、
それは 『ミリオンダラー~』 よりもムシロ、『ミスティック・リバー』 じゃないかと? 『チェンジリング』 とかね(大傑作)。
『叫びとささやき』 も未見だとはいえ、ベルイマンだったらボクはブッチ切りで遺作になった 『サラバンド』 だと思うし。
まぁ気が滅入るとか言われるのは、要は裏を返せばそれだけ作品の完成度も高くて惹き込まれるということだから、
選ばれた映画や作家にしてみたら、ある意味、それも光栄ってなことになるのかもしれないし、逆にそう言われると、
観たくなる人だって当然いると思うので、なんにしろ選ばれるのはいいコトだと思う(?)。ただボクはこの選定に対し、
ど~しても一つ納得がいかない。それはなぜかと問われれば、そう、ここにはあの世界で最も不快な映画を撮る男、

ボクの大嫌いなミヒャエル・ハネケの映画が、ただの1本もランクインしていないからだ!

まだ3本ほど観ていないとはいえ、劇場デビュー作の 『セブンス・コンチネント』 から 『ファニーゲーム U.S.A.』 まで、
コイツの映画は、みんな気が滅入るだけの映画だし、まぁ 『ファニーゲーム』 なんてただアホな映画だからともかく、
『ピアニスト』 くらいは10位以内に入って当然だと思う。どーして誰も選ばないワケ? 単にしょーもない映画だから?
まぁ気が滅入るというよりは本当に不快な映画だから、微妙に主旨が違ってそれで入らなかったのかもしれんけど、
なにしろ、ハネケの映画は嫌い。ギャスパー・ノエはもう、どこからも見捨てられている感じだから別にいいんだけど、
ハネケなんてただの変質者のクセにプロデュース能力も高くて世界的にも評価されているから余計にハラ立たしい。
…なのに、観てしまった。それほど嫌いなら観なきゃいいのに、観てしまった。まぁ嫌いなヤツほど実は好きなのか、
嫌いなヤツの言動ほど気にしてしまうという感じでけっきょく観に行ったんだけど、結果はやっぱり…だった。チ~ん。



というワケで、ただ役者を替えアメリカで撮ったというだけでショットも何もかも同じなら、それはもうリメイクどころか、
創作でもなんでもないと思い 『ファニーゲームU.S.A.』 は観なかったので個人的には 『隠された記憶』 以来になる、
(一応)鬼才ミヒャエル・ハネケ監督最新作、『白いリボン』 は、第一次世界大戦前夜の、北ドイツの村を舞台にした、
スタイル的には、『隠された記憶』 同様のミステリー。その村は大地主の男爵家が幅を利かせている村で、ある日、
外から帰って来たドクターが何者かの仕掛けた罠によって落馬したことで、村にだんだん不穏な空気が漂い始める。
それからというもの、小作人の妻が転落死したり、男爵家のキャベツ畑が荒らされたり、その子息がリンチされたり、
謎の事件が次々と起こって、村人たちはしだいに疑心暗鬼に苛まれてゆく。そしてその一方で村をまとめる牧師は、
子供たちを厳しい戒律の下に日々抑圧していた。思春期を迎えて“ある行為”をした子供はベッドに縛り付けられる。

で、ドクターを落馬させたのは誰なのか? 火をつけたのは? 子息をリンチしたのは? そして、ドクターの女である、
家政婦の知的障害の息子を酷い目に遭わせたのは?と、観ている方としてはそれらの謎がしだいに明かされると、
期待しながら2時間半近い長尺をじっと耐え忍ぶというワケなんだけど、けっきょく、というのかやっぱり、というのか、
事件を起こした犯人も、明確な動機も何一つわからないまま、第一次大戦が始まって、「犯人は“この中”にいる…」
みたいな暗示だけを残してスゥ~っと終わってゆくという……。なんかもう、ハラが立つというよりやり切れない……。
確かに今回のこのモノクロ映像には映画好きとして心くすぐられるものがあるし、創りはちゃんとしているだろうから、
その不明瞭な感覚こそを世界中に漂う現代の不穏な空気と重ね合わせて解釈すりゃいいのかもしれないんだけど、
それにしたってアンタ2時間半も見せられてこのヤマもオチもない「だからどーした?」って話はいったいなんなのよ?

よくよく考えたら(考えなくても)『隠された記憶』 と似たような話だし、こうした村からファシズムが生まれて、やがて、
ナチが生まれたとか今サラ言われたってサ、もう、そんなとこで映画を停止させていい時代じゃないと思うんだよね。
いつまでも体の好い問題提起みたいなことばっかやってないで言いたいことズバッと言えよ!(ないんだろうけど…)
だいたい、被虐の対象か幼い対象の二極だけだから全然子供を描けていないし、語り部である変な髪型の先生と、
子供たちの関係がフワッフワだから、ドラマにも何もなっていない。けっきょくあとはもう、ドクターが女に対してドSで、
自分の娘にもイタズラしているとかそんなエピソードが出てくるだけで、やっぱり、ハネケはハネケだなって感じだし、
そのクセこれまでの作品に較べると“不快指数が低め”だからほんと~にただ煮え切らなくてツマラないだけだった。
まぁどんな映画でもヒットするのはいいことだけど、だからってこういう外見だけの映画をモテ囃すのはもうやめよっ?

実はこの映画、こないだの日曜日に観るつもりで席もネット予約で押さえていたんだけど(初めてネット予約やった)、
昼間、臨時で仕事をしていたら、またゾロ頭痛が起きて(実は頭痛持ちなんです)、案の定それが昂じてゲロ吐いて、
その日はなんともならずに(チケットもパー)けっきょく観たのは昨日のサービスデーだった。ネット手数料も合わせて、
払った金額3000円…ミヒャエル・ハネケに3000円……。どんだけハネケ好きなんだよ俺……。気が滅入りしました。
…と、なんとなくオチがついたと自分をなだめてもう1本。『白いリボン』 も村が舞台の映画ということで同じく村映画、
先の東京国際映画祭でも紹介された、現在公開中の韓国映画、その名も、『黒く濁る村』。これまたミステリーだし、
コチラは気取ったヨーロッパ映画と違い韓国映画だから、きっとモリモリゴリゴリ見せてくれると期待してたんだけど、
なんと、これも全然面白くなかった……。こないだのフィルメックスで観た2本といい、最近韓国映画もハズレばっか。



物語は、主人公が長い間音信を絶っていた父の死を知って生前彼が暮らしていた村を訪れるんだけど、その村は、
かつてある宗教団体の教祖だった父を逮捕しようとしたもののそのカリスマ的な魅力に惹かれて意を返し、自分と、
人生を生き直さんと考えている人間を集めた“理想の村”を作ろうと持ち掛けてきた元刑事とともに父が作った村で、
しかしそのワリには自分によそよそしく父の死についても堅く口を閉ざす村人らの態度に違和感を覚えた主人公が、
父の死の真相と、村の秘密を探るべく動き出すと、人が次々と死に始めて…というもの。これまた尺が、2時間半と、
気を持たすワリにはけっきょく大した秘密などなく、主人公と父親の関係とか父親と元刑事の30年以上の確執とか、
はたまた村そのものの歴史とか、そういうホントに描かれるべき部分をこの映画はチットモ描いていないモンだから、
オチが来ても「あ?」という感じで、サラにもう一つ謎めいたラストにしても勝手にやってろ!としか思わないっていう。

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村といえば、やっぱり 『丑三つの村』 だよね!

テッキリ何かのミステリー小説が原作だと思っていたら、ウェブで連載されていたマンガだと…観なけりゃよかった。
『白いリボン』 が2時間25分、『黒く濁る村』 が2時間41分、計5時間6分も観て、この満足度の低さ…やってられん。
しかしまぁ、こういう徒労感があるから、素敵な映画に出逢った時の歓びもひとしおなんだよね…って慰めになるか!!
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ところで、話は戻って冒頭に挙げた気が滅入る映画30本の11位、そして落ち込む映画では堂々9位にランクインの、
スウェーデン映画 『リリア 4-ever』。実は、ボクたちの映画祭がウリにしている映画なんです。平気なんでしょうか!?
ボクもすでに観ており、確かにどヘビーな映画なんだけど、しかしそれ以上に心打たれる、切なく美しい映画だから、
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 がダメな人でも多分大丈夫! 因みにチラシの解説はボクが書いてまーす。読んでネ!


悲劇のヒロインを演じるオクスナ・アキンシナがカワイ~の♪

『白いリボン』
銀座テアトルシネマ にて公開中 ]
『黒く濁る村』
シネマスクエアとうきゅう(新宿)、シアターN渋谷 ほかにて公開中 ]