ローシャはブラジルのサム・ペキンパーだった!? 『黒い神と白い悪魔』&『アントニオ・ダス・モルテス』



グラウベル・ローシャ特集もなんとかラストの1本までたどり着いた。初めのウチはあんまり入っていなかったけど、
通うウチにどんどん人が増えていって、代表作だからか 『アントニオ・ダス・モルテス』 はケッコウな客入りだった。
今回、こうしてベスト・セレクションと題された5作品を観て、果たして、ローシャの何を理解できたかと訊かれれば、
難解だし、政治的だしでハッキリいって何一つ理解できたような気はしないんだけど(6000円も使ったのになぁ…)、
ただ、1本1本観てゆくと、やっぱりこの人も優れた作家や思想家という以上に1人のドが付くシネフィルというのか、
『バラベント』 はエイゼンシュテインの影響が濃いというし 『狂乱の大地』 はまんまヌーヴェル・ヴァーグのようだし、
『アントニオ・ダス・モルテス』 に至ってはまるでサム・ペキンパーの男臭い西部劇を観るようで(あくまで見た感じ)、
そうしたあたりにボンヤリ親近感を抱けないワケでもなかった(というより、そうムリにでも思わなきゃ観てらんない)。

というワケでグラウベル・ローシャ最後の2本は、かつて日本でも劇場公開されVHSならソフトにもなっているコチラ、
『黒い神と白い悪魔』 と 『アントニオ・ダス・モルテス』―。いずれともそれぞれ独立した映画なんだけど、一方じゃ、
共通項の多い対のような2作品でもあり、どちらにも“カンガセイロ”というその昔ブラジルの原野に実在した義賊と、
“アントニオ・ダス・モルテス”というこれまたホントにいたらしい政府お抱えのカンガセイロ専門の殺し屋が出てくる。
『黒い神と白い悪魔』 は、領主を誤って殺してしまった貧農の男が、妻と一緒に逃げ、邪教の黒人教祖にすがるも、
子供を生贄にさせられた上にそこに死神アントニオが現れて教祖を信者もろとも抹殺。生き残った夫婦は山に逃げ、
今度は件のカンガセイロに助けを求めるんだけど、そこにもアントニオがやってきてやっぱりカンガセイロを討ち取り、
夫婦はどこまでも逃げ続けるという…要は貧乏人は誰に頼ったってけっきょく救われないよという途轍もなく嫌な話。

『アントニオ・ダス・モルテス』 は、若い聖女の元に集う民衆のバックにカンガセイロがいることを知った警察署長が、
やはりアントニオを雇って差し向け、殺し屋はカンガセイロに深手を負わすんだが、町を支配する地主の姿勢を知り、
聖女と話すウチにいつしかアントニオは自分は狙う相手を間違えているんじゃないのかと悩み出すというストーリー。
『黒い神~』 では極悪非道な死神だったアントニオが悩んだ末に農民を解放さすということでコチラには救いがあり、
ボクはこれ、話だけ聞くと「デビルマン」みたいだなと思ったんだけどどうだろう? なにしろ語り口は難解で複雑だし、
どれをとっても1回観ただけでは何を描いているのかも何が言いたいのかもまったくわからなくて、ローシャ特集5本、
合わせて555分(9時間15分!)、自分にとっては久々に、本当に久々に観るのも“書くのも”苛酷な映画体験だった。
でも、面白いツマラないだけが映画じゃない。こういう自分に試練を課すような体験もまた映画を観る醍醐味なのだ。

「グラウベル・ローシャ・ベスト・セレクション」[6月18日(土)-7月15日(金)]
【配給】日本スカイウェイ/アダンソニア
【鑑賞劇場】ユーロスペース1(渋谷)
【鑑賞料金】1,200円(会員料金)

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『黒い神と白い悪魔』(1964年・ブラジル映画/モノクロ/118分・完全版)
【監督】グラウベル・ローシャ( 『バラベント』 『大地の時代』 『狂乱の時代』 )
【出演】ジェラルド・デル・ヘイ、イオナー・マガリャーエス、オトン・バストス、ドス・ウミルデス、リジオ・シルバ
【5段階評価】★★★☆☆

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『アントニオ・ダス・モルテス』(1969年・ブラジル/カラー/100分)
【監督】グラウベル・ローシャ
【出演】マウリシオ・ド・バッレ、ウーゴ・カルバナ、オデーデ・ラーラ、オトン・バストス、ジョフレ・ソアレス
【5段階評価】★★★1/2☆