“薬草”だけに効能が後からジワジワ効いてくる良作 『グッド・ハーブ』



アロエといえば今はもうヨーグルトを食べる時にお目にかかるくらいだけど、子供の頃は母親がいつも育てていて、
蚊に喰われたと言っちゃ「アロエを塗れ」、歯が痛いと言っちゃ「アロエを噛め」と切って与えられていたモンだった。
実際、アロエがそんな虫刺されや歯痛にどれほど効いていたのかは今となってはあんまり憶えていないんだけど、
しかし効いていたとしたらそれはアロエの効能以上にお袋に与えられたという“安心感”こそだったような気がする。
塗るとヌルヌルするし噛むと苦いしで昔はアロエを薬だと思っていたんだが、別に薬草ってワケではないんだよね?
で、この映画はそれっぽいタイトル通り“薬草”がキーワードになっている話。現在、ヒッソリ公開中のメキシコ映画、
『グッド・ハーブ』 はあるシングル・マザーの女性と古来の薬草を研究しているその母との絆を描いた物語。ただし、
これが薬草の蘊蓄を絡めたよくある癒し系な母娘モノだと思ったら大間違い。ラストで急に劇薬みたくなったりする。

とはいえ本作はメキシコ映画によくある貧困や犯罪や不法移民などハードな内容をテーマにしたものじゃないから、
劇薬と言っても意味は少々異なるんだけど、しかし大都市として一方じゃ洗練されてもいるメキシコシティを舞台に、
二世代にわたる、それぞれ独立したメキシコ女性の生き方と、アルツハイマーという今日的な題材を扱った物語は、
いかにも女性監督らしい“癒し”的なセンスに充ちているため、あのラストに、ボクは本当に面喰らってしまったのだ。
鑑賞後もずいぶん戸惑い、これはつまり現実の辛さに薬草だの迷信だのはけっきょく効かないという意味なのかと、
打ちのめされるような感じだったんだけど、しかしよくよく考えるに、もしも今、現実に身内の介護で悩んでいる人が、
そういう話を映画で観るとしたら、いかにも愛が大切と言わんばかりの、体のよい理想的介護を謳ったりするよりは、
むしろ、こういうラストの方が、想いが浄化されるような気がして癒されるんじゃないのかと、そんな風に思えたんだ。

そして、結末を迎えて初めて理解できる冒頭の件も実に意味深いものがあるし、パッと見はいかにも癒し系ながら、
その奥に、メキシコ社会の問題点がしっかり見え隠れしていて、マリア・ノバロなんて初めて名前を聞く監督だけど、
色彩感覚はいいし、音楽の使い方なんかもセンス抜群で国内外で高く評価されているのも頷けるという感じだった。
決してダークな面を強調したりしないメキシコシティのリアルな街並みも新鮮で、メキシコ、いつか行ってみたいなァ。
ヒロインの人物設定は多分昔でいえばヒッピーのようなものだと思うんだけど、なんと映画館で逆ナンした若い男を、
家に連れ込むなんて件も出てくるし、さすがラテンの女性は違うなァ…とボクはますますメキシコに憧れるのである!
(まぁそういう奔放な生き方をしてきたゆえに現実と向き合えずああいう結末を選んだという解釈もできるんだけど…)
とにかく、ハードなイニャリトゥだけがメキシコ映画じゃない! 地味でもこういう映画を観逃さないのが“通”なんだな。

画像
後々よく調べたらアロエはやっぱり薬草でした

『グッド・ハーブ』(2010年・メキシコ/HD/カラー/Dolby Digital SRD/120分)
【監督】マリア・ノバロ
【出演】ウルスラ・プルネダ、オフェリア・メディーナ、アナ・オフェリア・ムルギア
【配給】Action Inc.
【5段階評価】★★★1/2☆
【鑑賞劇場】シネマート新宿2
【鑑賞料金】1,300円(前売券)