フミキとパルとエレファント? 『罵詈雑言』&『腹腹時計』@第2回渡辺文樹映画祭

またしても渡辺文樹にシビレた。そして今回は、あまりにコアな会場と、高円寺の街の人々の優しさにもシビレた!
映画は右翼を怒らせるようなものばかりだし、今日も今日とて公安が近くで入場者をチェックしているなど(監督談)、
物々しい話題が常につきまとうのに、どーして渡辺文樹の上映会に行くと、こうも心がホッコリとしてしまうんだろう。
まぁ柳下さんとかのオカゲで、とくに最近はボクみたいな思想等云々よりコアな映画をただコアに楽しみたいという、
フツーの映画好きも増えたから、という要因もあるだろうけど、とにかく文樹上映会には、ならではの温かみがある。
というワケで、第2回って…いったい第1回はいつやってたんだ!という、まさに驚愕の「第2回渡辺文樹映画祭」に、
このもはや身の危険を感じるような寒空の中自転車漕いで行ってきた! 会場は高円寺の南口にある油野美術館。
…もちろん場所は知らない。だからHPの地図じゃなく地図帳をコピーして出かけた(スマフォとか持ってないモンで)。

だけど場所が見つからない。なぜ住所も記載されてるHPの地図をプリントせず地図帳をコピーしたんだオレは!と、
自分のアナログぶりに辟易しつつ、しかし迷っていても仕方ないので自転車をそこらに放置し若い男性に訊ねると、
やはり「ゆの美術館…?聞いたことないですねぇ」との返事。でも、わからなきゃわからないとそれだけでいいのに、
彼は、住所はわかりますか?せめて番地は?と早く家に入りたかろうに訊き返してくれる…あったかい。充分です。
次に文具店で、お喋りに夢中のオバちゃんたちに訊くと、やっぱりわからないけど隣の酒屋さんは地元の人だから、
きっと知っているハズだと教えてくれた。さすがパル通り近辺! そして隣の酒屋さんへ行き訊ねると、若い女性が、
すぐにパソコンで調べてくれ、住所を読み上げると、「あぁ、きっとあのビルね。口で言うより連れてった方が早いワ」
と3人いた内の最年長の女性(地元の人)がワザワザ案内してくれなるほどそこには5、6人程度の列ができていた!

なんだ! ピンクエレファントの裏じゃんよ! ここ、前からイッてみたいと思ってたんだよね! いつかここで遊んだら、
帰りにお酒買います…と心で思いながら女性にお礼を言って列に並ぶと、路上に出ている長机に監督の娘さんが、
せっせとDVDやパンフを並べていてそこに奥さんが「すみませーん!」と猛ダッシュで帰ってきてようやく入場開始!
外から見ても絶対に美術館なんてわからないしだいたい看板すら出ていない。そして狭い入口から2階に上ると…、
サラに狭っ! 美術館つーか、ここギャラリーやん! コンクリート打ちっ放しの冷え冷えとした真っ白い部屋の1/3を、
スクリーンと映写機が占め、あとはイスが15脚並んでもうイッパイ。トイレも元が和式なのをムリヤリ洋式にしてるし、
いいなぁ~高円寺いいなぁ~やっぱり渡辺文樹いいなぁ~と体は芯まで冷えていたけど心はすっかりとあったまり、
するとボクを含め変わり者の13人の観客を前におなじみの監督の前口上よりいよいよ映画はスタートしたのでした。

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思えば監督第4作の 『罵詈雑言』 こそ、ボクと渡辺文樹のファースト・コンタクト。しかし当時(’96年)は愛知在住で、
会場もわかんなきゃあまりにポスターが怪しすぎ、観に行くまでには至らなかった。それがこうして、めぐりめぐって、
高円寺パル通り近くで観るフシギ……。そして映画はある意味今こそ観るべき内容なのだから本当にこれゾ因縁!
原発を擁す福島県のとある村。美しい女教員の家の汲み取り式便所の便槽である青年の腐乱死体が発見される。
遡ってある村じゃ、あわやチェルノブイリという原発事故が起きつつあり、運転停止を求めるも拒否された責任者は、
上野駅で抗議のために飛び込み自殺。便槽で発見された青年ナオと、その責任者は、同じ現場で働く同僚だった。
そしてナオは原発誘致の是非を問うた村長選挙で働いた後に死に、女教員とは恋愛関係にあった。それから数年、
ナオの変死事件を偶然知った渡辺文樹監督は、その死に疑問を抱き、真相を究明すべく、徹底取材を敢行する…!!

という、実在の事件をモチーフに、ドラマとドキュメンタリーがトグロを巻くように混在し、そして役者が素人同然ゆえ、
いったいどこまでがガチでどこからがフェイクかがまるでわからないくらい現実と虚構がパワフルに同居した本作は、
まさに“ゆきゆきて、原発”といった感じの異形なる“モキュメンタリー”。でも、モキュメンタリーとはいえ話は原発だ。
ここにいかがわしく描かれる内容はまるで“来る今”を予見していたかのようにボクらの心に重たくのしかかってくる。
選挙に関わったことでその裏を知った青年を、東電と自民党と地元住民が結託し、闇に葬ったという凶暴な解釈は、
’96年当時に観たら単なる妄想だったかもしれないけど今となればどこか現実的で原発版の“カモッラ”みたいだし、
そこにツマラない片田舎で鬱屈と性欲や嫉妬を持て余す若者たちの暴走が絡んでくる展開はまるで“サウダージ”。
確かに稚拙だけど、なんのなんの、『ゆきゆきて、神軍』 にも負けない、生々しいパワーと“ヤマっ気”が漲っている。

画像

そして休憩を挟んで次に観た、『腹腹時計』 は、これまた主人公を自ら演じる監督が今度は天皇暗殺を企むという、
凄まじい内容であるために、かつては上映のたんびに街宣車がやって来たという 『天皇伝説』 以上の話なんだが、
しかし冷静に観ればこれは70年代のアメリカ映画をも彷彿とさせる生粋たる娯楽アクションの王道的な傑作である。
天皇暗殺といったって、本当に殺意があるなら映画の中ならやれるのに、けっきょくそこまではやらないワケだから、
やっぱりこれは極めて過激なテーマを軸にした純粋な“娯楽映画”として観るのが正解なんだ。本当に面白かった!
“腹腹時計”というのは、時限爆弾の隠語であるらしく、70年代に本当に天皇暗殺を実行しようとした極左テロ組織、
東アジア反日武装戦線の“狼”が、爆弾の製法やゲリラ戦法のイロハを書いて地下で出した、“テロ教則本”のこと。
これは狼の意志を(勝手に)継いだテロリスト渡辺が、福島へお忍びで静養に来た昭和天皇を暗殺しようとする物語。

で、何が凄いと言って本作の凄いところは、街中でのアクション・シーンを何もかもゲリラ撮影でやっているところで、
そりゃもちろん金がかかっている本格的なアクション映画と同じ質のものを想像してもらっちゃコッチも困るんだけど、
しかし反面、ゲリラ撮影だからこそ醸し出される行きあたりバッタリな臨場感は映画の緊張感として巧く活きていて、
時折り「オォ!」と唸ってしまうし、大団円の電車を借り切って(?)の一大アクションには思わず手に汗握ってしまう!
今やもしかしたら定番になりつつある“文樹節アクション”の萌芽がきっとこの作品なんだろうが、しかしつい最近の、
『天皇伝説』 や 『金正日』 よりコチラの方が若干上手に撮れていたような気がするのは果たしてボクだけだろうか?
どうやってあれだけ集めたのかエキストラがヤタラじぃさんばかりなところも蜷川幸雄の先を行っているようで凄いし、
青春映画みたいな要素もあり本当に実の詰まった1本だった。やや長髪の印象がある監督の短髪もなんだか新鮮。

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今回の映画祭は、連日トークショーもあり、昨日はなんと柳下さんとの対談だったから、ぜひ聴きたかったんだけど、
仕事があったので 『腹腹時計』 が終わるとボクは後ろ髪を引かれるような気持で会場を後にした。でもその代わり、
2本の間の休憩中に監督と少しだけだけどフランクな雰囲気で会話ができたので今回はそれで満足することにした。
帰りしなに、「来週、また来ます!」と監督に告げると、うれしそうに見送ってくれ、受付で奥さんとも少しだけお話し、
陽もトップリと暮れて外はいよいよどーかと思う寒さだったけど、ボクはホッコリした気分で仕事に向かったのである。
は~仕事じゃなければパル通りでメシ喰ってピンクエレファント行って酒買って帰るのになぁ~。高円寺はいい街だ。

「第2回渡辺文樹映画祭」[12月1日(木)-7日(水)]@油野美術館 東京分室(高円寺)
『罵詈雑言』(1994年・日本/カラー/ビスタ/114分)
【監督】渡辺文樹( 『ノモンハン』 『天皇伝説 血のリレー』 『金正日』 )
【出演】渡辺文樹、佐々木龍、石黒修、須藤タケ子、田中源太郎、比佐昭作 、沢村マリ、三村征三、行之内博
【5段階評価】★★★1/2☆

『腹腹時計』(1999年・日本/カラー/97分)
【監督】渡辺文樹
【出演】渡辺文樹、糸井リエコ、八巻マサオ、花城清英、行之内博
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】1,000円(各作品)