イタリアだけにデ“アゴスティ”~ニ♪ 「イタリア映画界の異端児 アゴスティの世界」



文化や情報の発信地といえばなんでもかんでも東京といっていた時代も今やもう昔の話。“地方発”という言葉が、
新時代のキーワードにもなっている昨今、そんな状況は“映画興行”の世界においても決して例外じゃないみたい。
というワケで、去年のGWだったか、帰省するし時間が空いたらシネマテークで何か観ようと思って事前に調べると、
コチラじゃ聞いたことのない特集名があったので、はて、こんなの東京でやったかな?と大いにソソられたんだけど、
なるほど。その時の特集が、今回のコレだったんだ(けっきょく、その時は観に行かなかった)。「アゴスティの世界」
恥ずかしながらシルヴァーノ・アゴスティなんて聞いたことのない監督だし、主催の“大阪ドーナツクラブ”というのも、
今回初めて存じ上げたんだけど、なんでも日本で未公開のイタリア映画を自主配給している、有志の団体だという。
ノーザンライツが目指すことをやってみえるワケだ。とにかく西日本の各地で好評を博した企画がついに東京進出!



できれば6プログラムすべて観たいところなんだけど、予算の都合もあって先の日曜に観てきたのは以下の3作品。
正直期待していたほどグッとくるものは残念ながらなかったんだけど、まぁそれも観てみなきゃわかんないことだし、
バウスシアターもいい感じの客入り具合でユッタリくつろぎながら観ることができたので行って損はなかったかなと。
1本目に観た 『ふたつめの影』 は、フランコ・バザーリアという、なんでもイタリアの精神医療を改革したと言われる、
ある伝説的精神科医が、最初はまるで“『チチカット・フォーリーズ』”みたいだった精神病院をどう変えていったかを、
ドキュメンタリー色を織り交ぜながら描いた良心的医療ドラマ。イタリアが精神医療先進国だとは初めて知ったけど、
そういえば夏にやってた、『人生、ここにあり!』 も同じような話だった(未見だけど)。そしてその裏に描かれるのは、
けっきょく、個よりも全体が尊重される息苦しい社会の縮図。マジメすぎてパンチはないけどいい映画だと思います。

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2本目は 『クワルティエーレ 愛の渦』。クワルティエーレとは“地区”という意味で、監督が実際に住んでいるらしい、
ローマのバチカン市国に近い界隈を舞台に、若年期、青年期、壮年期、老年期という人生の4つの段階のドラマが、
四季に合わせて綴られてゆく。で、デジタル素材による上映とはいえ映像には奥行きがあってメチャクチャ美しいし、
語られるドラマも、レイプから発展する恋や、ゲイカップルの破滅、はたまた童貞ホームレスがついに女を抱くという、
異形の愛を描いたものばかりで、こうやって書くと、凄く面白そうな映画に感じるんだけど…思いっくそ寝てしまった。
モトからかなり眠たかったという事情もあるんだが、愛に伴う孤独や喪失感を描いたいかにも文芸調のメロドラマは、
どれだけ内容が奇抜でも退屈で、またそこでエンニオ・モリコーネの音楽が耳に優しいモンだからついウトウト……。
ハッ!と目が醒めて横を向くとボクの列の人はみな目を閉じていた。だけど、キェシロフスキ好きにはおススメだよ!



そして3本目が 『人間大砲』。なんか梶原一騎みたいなタイトルだな(←もうこういう変な発想をしてしまう時点で…)。
毎晩、サーカスで“人間大砲”として打ち上げられる“砲弾男”が、火付け係の女と恋をする。そして彼は、夜ごとに、
「ホラホラ、今夜もオレの“極太大砲”でオマエの小筒を大きくしてやる」と迫るんだけど…というのはもちろんウソで、
恋をしたものの女にもう1人いい男がいるらしいと知った彼は、傷心のあまりになぜか自分の人生を振り返り始める。
そしてそんな恋物語にこれまたなぜかエイゼンシュテインやタルコフスキーからの引用が散りばめられるという感じ。
またしてもモリコーネの優雅なスコアが心地好く響いて、ともすれば上の作品以上に寝ちゃいそうな1本なんだけど、
フシギとこれは寝なかったし、僅かな差とはいえ3本の中ではこれがいちばん楽しめた。まぁ火付け係のヒロインが、
美人で巨乳だったからだけどネ♪ 映画の引用がすべてわかる、そしてこういう映画を楽しめる大人になりたいです。

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でも、大砲の中のシーンはホントにいいなって思いました。

もしかするとこのシルヴァーノ・アゴスティという作家の真髄を知るなら、本当は上述の3本以上に、『快楽の園』 や、
『カーネーションの卵』 という映画を観なければならないような気がするんだけど、都合が合わないものは仕方ない。
“大阪ドーナツクラブ”かぁ~。シアターNとかは行かない、頭よさげで優秀な人ばっかり集まってるんだろうな。ふぅ。
イタリア映画といえば最近ならボクはやっぱり 『ゴモラ』 だけど、タマにはこういう映画も観ないとね。よければぜひ。

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「イタリア映画界の異端児 アゴスティの世界」[12月3日(土)-16日(金)]
【主催】吉祥寺アゴスティ映画祭実行委員会
【鑑賞劇場】吉祥寺バウスシアター3
【鑑賞料金】3,500円(3回券)

『ふたつめの影』(2000年・イタリア/カラー/84分)
【監督】シルヴァーノ・アゴスティ
【出演】レーモ・ジローネ、ヴィクトリア・ジニー、ゴリツィアとトリエステの旧精神病院入院患者およそ200名
【5段階評価】★★★☆☆

『クワルティエーレ 愛の渦』(1987年・イタリア/カラー/81分)
【監督】シルヴァーノ・アゴスティ
【出演】パオラ・アゴスティ、ロレンツォ・ネグリ、ニーノ・マンゾーネ
【5段階評価】★★1/2☆☆

『人間大砲』(1995年・イタリア/カラー/86分)
【監督】シルヴァーノ・アゴスティ
【出演】ブルーノ・ヴォルコヴィッチ、パオラ・アゴスティ、ジュリア・ボスキ
【5段階評価】★★★☆☆