名画を観たきゃキノハウスへおいで! 「ボリス・バルネット傑作選」&「オタール・イオセリアーニ映画祭」

ドイツ語で“映画の家”という意味らしい“KINOHAUS(キノハウス)”とは、3館のミニシアターと映画美学校が入った、
渋谷区円山町にある映画館ビルの名称。1階にはカフェもある。いよいよ、シネコンも淘汰される時代になってきて、
ソロソロ映画も本気でヤバいと言われる中(ずっと前から言われているけど)、各国の映画祭をにぎわせた作品から、
邦画のクラシックやカルト作、はたまたワン・ビンのような先鋭にいまだ知られざる作家のマニアックなプログラムと、
ここに通っていればマズは大丈夫みたいな、今日びの日本の映画文化最後の砦といった雰囲気になってきている。
で! 3階の老舗ミニシアター、ユーロスペースでは、今週末からいよいよボクたちの北欧映画を集めた自主映画祭、
「トーキョーノーザンライツフェスティバル」が開かれるということで、別に合わせたつもりはないけれどくしくも最近は、
ボクもキノハウスで名画を愉しむ時間がつづいている。それらともども、ノーザンライツも一つ御贔屓にお願いします。

画像

日曜に観たのが、ユーロスペースでやってる「映画の貴公子 ボリス・バルネット傑作選」から 『レスラーと道化師』。
ソ連の作家バルネットといえば、娯楽物の名手。本作はレスリングがサーカスの見世物だったという時代を背景に、
あるレスラーと道化師のいくたびもの出逢いと別れを、サーカスの舞台裏の悲喜交々を交えて描いた人情ドラマ―。
バルネット晩年の映画で、なんでもコンスタンチン・ユージンという監督が急逝したのを引き継いで撮った作品らしく、
だからなのか少なくともボクが知ってる古い作品に較べるとチョッピリ雰囲気も違うんだけど、人間味豊かな演出や、
キャラクター造形の妙はやっぱり見事。息子を亡くしても、役人を茶化して街を追われても舞台を諦めない道化師と、
名誉よりも義理人情に生きる、まさしく「曲がったことは大嫌い。は~ら~だたいぞうです」を地で行くようなレスラー。
2人の芸人人生はあたかもたけしの名曲「浅草キッド」のロシア民謡風(か?)。フィルムの褪色加減にも味があった。

画像

つづく月曜に今度は2階のオーディトリウム渋谷で観たのが、近く最新作 『汽車はふたたび故郷へ』 が公開される、
グルジア出身の名匠オタール・イオセリアーニ監督の代表作 『群盗、第七章』。ずいぶん前から観たかった作品だ。
でも、これを、たとえば他のイオセリアーニ作品(とくにここ10年くらいの)と同じ感覚で期待して観に行くと、やられる。
解説には明るく“人間賛歌”なんて書いてあるけど、監督の故郷グルジアを舞台に、中世の王政時代、旧ソ連時代、
内戦時代、そして現代のパリを自由自在に行き来する一見ハチャメチャな歴史劇の根底にソコハカ漂っているのは、
いつの時代も変わらない、野蛮で愚かな人間への諦め……。飄々としているので時折りクスっとは笑えるんだけど、
喩えば、『ここに幸あり』 みたいな雰囲気は…ない。しかし、それでも人は生きてゆくしかないというラストの感傷が、
堪らず胸をしめつけるんだ。全然テイストは違うけどある意味タル・ベーラの 『ニーチェの馬』 と同種の傑作だと思う。

****************************************************************************************

は~やっぱり映画館の暗闇で名画を観るのは心地がえぇのォ~。まぁ時々空調の風がモロ体に当たって寒いとか、
最近オシッコが近くなって落ち着かないとか日によりイロイロあるんだけど。それも含めて映画はやっぱり映画館だ。
というワケで、古い名画、巨匠の名作を観たかったらとりあえずキノハウスに来ればなんか観られるんじゃないかと。
そして、北欧映画のカルト作や、巨匠の名画を観たくなったら、ぜひ、今週末からのボクらの映画祭に来てください!

「映画の貴公子 ボリス・バルネット傑作選」[1月21日(土)-2月10日(金)]@ユーロスペース(渋谷)
『レスラーと道化師』(1957年・ソ連/トーキー/カラー/100分)
【監督】ボリス・バルネット( 『帽子箱を持った少女』 『国境の町』 『青い青い海』 『諜報員』 )
【出演】スタニスラフ・チェカン、アレクサンドル・ミハイロフ、イヤ・アレーピナ
【配給】エスパース・サロウ
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】1,000円(会員)

「オタール・イオセリアーニ映画祭2012」[2月4日(土)-10日(金)]@オーディトリウム渋谷
『群盗、第七章』(1996年・フランス=スイス=イタリア=ロシア=グルジア/カラー/122分)
【監督】オタール・イオセリアーニ( 『歌うつぐみがおりました』 『田園詩』 『素敵な歌と舟はゆく』 『月曜日に乾杯!』 )
【出演】アミラン・アミナラシヴィリ、ダト・ゴジベダシヴィリ、ギオ・ジンツァーゼ、ニノ・オルジョニキーゼ
【配給】ビターズ・エンド
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】1,200円( 『汽車はふたたび故郷へ』 の前売券提示で)

「トーキョーノーザンライツフェスティバル2012」
[2月11日(土・祝)-17日(金)]@渋谷ユーロスペース&アップリンク