時代は再びインディーズ!? 凋落のハリウッドに“帝国”の逆襲! 『コーマン帝国』



『金星人地球を征服』(1956/製作・監督/★★★)
『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1960/製作・監督・共同脚本[無記名]/★★★★)
『恐怖の振子』(1961/製作・監督/★★★★)
『ヤングレーサー』(1963/製作・監督/★★★)
『ワイルド・エンジェル』(1966/製作・監督/★★★★)
『白昼の幻想』(1967/製作・監督/★★★)
『残酷女刑務所』(1971/製作総指揮[無記名]/★★★)
『レッド・バロン』(1971/監督/★★★)
『残虐全裸女収容所』(1972/製作総指揮/★★★★)
『コックファイター』(1974/製作/★★★★)
『ビッグ・バッド・ママ』(1974/製作/★★★★)
『ゴッドファーザー PARTⅡ』(1974/出演/★★★★★)
『デス・レース2000年』(1975/製作/★★★★)
『デルス・ウザーラ』(1976/プレゼンター[1976年全米再公開時]・★★★)
『バニシング IN TURBO』(1977/製作総指揮/★★★★)
『ピラニア』(1978/製作総指揮/★★★★★)
『ロックンロール・ハイスクール』(1979/製作総指揮/★★★★)
『銀河鉄道999』(1979/製作総指揮[アメリカ版のみ]/★★★★★)
『ハウリング』(1981/出演[無記名]・謝辞/★★★★)
『ギャラクシー・オブ・テラー/恐怖の惑星』(1981/製作/★★★)
『羊たちの沈黙』(1991/出演/★★★★)
『レザボア・ドッグス』(1992/謝辞/★★★★)
『ジム・キャリーはMr.ダマー』(1994/謝辞/★★★)
『アポロ13』(1995/出演/★★★)
『KYOKO』(1996/製作総指揮/★★)
『カップルズ』(1996/謝辞/★★★★★)
『スクリーム3』(2000/出演/★★★)
『ルーニー・テューンズ パック・イン・アクション』(2003/出演/★★★)
『クライシス・オブ・アメリカ』(2004/出演/★★★★)
『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007/謝辞/★★★★★)
『サーチャーズ2.0』(2007/製作総指揮・出演/★★★★)
『デス・レース』(2008/製作総指揮/★★)

そして本作、『コーマン帝国』。とにかく、ロジャー・コーマンがクレジットされている映画をできる限り網羅したという、
映画評論家・江戸木純氏による超労作、「史上最大のコーマン映画目録全460本」があまりに素晴らしかったので、
ついつい久しぶりにパンフレットまで買ってしまったんだけど、思えば、ボクがロジャー・コーマンを知ったキッカケは、
『ロボジー』 の矢口史靖監督の出世作、『裸足のピクニック』 を観た時に買った新聞紙みたいなパンフレットの中で、
“映画好きが読むべき本”として、江戸木氏の「地獄のシネバトル」と、オーケン「グミ・チョコレート・パイン グミ編」
そして、コーマンの「私はいかに100本の映画をつくり、しかも1セントも損をしなかったか」をススメていたからだった。
それぞれ学生時代に買ったこの3冊は今でも折りに触れて読み返すし(コーマンの本なんてなんと初版だモンね!)、
映画を観る上、映画を知る上、そして映画についてこうして物を書く上でどれっだけ影響を受けているかわからない。

と、鼻息荒く言うワリに、じゃあ自分はどれだけコーマン映画を観ているのだろうとその目録の中から数えてみたら、
本作を入れて33本と実に大したことはなくボクの“コーマン度”はたったの7%程度だということがわかったんだけど、
(因みに、↑の★はボクの個人的な評価。★5つが満点。ただし、かなり“甘め”につけているものも多い。ご愛嬌で)
しかし本作を観たら460本全部観たくなるのは間違いないし、それぐらいこの 『コーマン帝国』 は(久々にいい邦題)、
“早く!安く!そして儲ける!”をモットーに、これまで信じられないほどの数の映画を創り、そしてそれだけじゃなく、
マーティン・スコセッシやフランシス・フォード・コッポラやジョナサン・デミやロン・ハワードといった大物監督たちから、
ジャック・ニコルソン、ロバート・デ・ニーロ、ピーター・フォンダなど、アメリカ映画を代表する名優たちをも育て上げた、
ロジャー・コーマンというこの先二度とは現れないであろう稀代の映画人の魅力を余すところなく捉えていて面白い。

映画には↑に列挙した監督や俳優たちがワンサカと出てきてコーマンについてそれぞれ熱く語ってくれるんだけど、
彼の愛妻家ぶりがわかるような場面等もあって(奥さんのジュリーも映画製作者)時に微笑ましい気持にもなれるし、
多くの映画人に祝福されながらアカデミー賞で栄誉賞を受賞する時のシーンには思わず目頭が熱くなってしまう―。
まさかこんなタイトルの映画で泣くとは思わなかった。ともすればかなりマニアックで、人を選ぶ内容でありながらも、
本作が決してトンがっておらず、どこかやわらかな空気に包まれているのは、これが名のあるオスカー監督じゃなく、
ボクと同じように自伝を読んでコーマンを知ったというまだ30代そこそこの若く美人な監督によるものだからだと思う。
そこがまた、ただケチだから新人を使ってきたというワケじゃなく、人の本質を見抜き、人種問題やフェミニズムなど、
メジャーが扱いにくい題材に常に目をつけてきた、賢人コーマンらしいところなのだ( 『イントルーダー』 が観たい!)。

ボクは今、北欧映画祭というものに携わっており、そして来年の第3回へ向けて、近々動き始めるところなんだけど、
本や映画を通してコーマンの理念に触れると、何も金をかけて新作を上映したり、人目を惹く大作をやることだけが、
映画祭じゃないという想いが本当に心の底から湧いてくる。忘れられた旧作を今までにない別の視点で紹介したり、
よしんば金がなく、配給会社から安く借りられる映画しか揃えられなかったとしても、それを、誰も思いつけぬような、
“斬新な揃え方”で見せるじゃなく“魅せる”ことだって立派な映画祭の在り方ではないかとしみじみ思えてくるのだ。
(因みにコーマンが初めて立ち上げた製作配給会社でいちばん最初に配給した海外映画は実はベルイマンだった!!)
要するにコーマンの考え方って、映画だけじゃなしに、あらゆる仕事や人生の捉え方にも通じる話だと思うんだよネ。
とにかく! 真のハリウッドを築いたといっても過言ではない大巨人の笑えて泣ける生き様に、映画と、人生を学べ!

画像
『コーマン帝国』(2011年・アメリカ/カラー/ビスタ/デジタル/91分)
【監督】アレックス・ステイプルトン
【出演】ロジャー・コーマン、ジュリー・コーマン、ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、マーティン・スコセッシ
【配給】ビーズインターナショナル
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館3
【鑑賞料金】1,500円(劇場鑑賞券)