非行少年たちのアルカトラズを舞台にした北欧版『網走番外地』! 『孤島の王』



ノルウェーは、世界でいちばん囚人に優しい国らしいけど、去年の7月に起きたあの前代未聞のテロ事件のように、
なんの罪もない人を77人も殺した悪魔のような人間にまで優しくするんだろうか? 今後の裁判の行方が気になる。
で、映画に出てくる首都オスロの南にあるバストイ島の矯正施設は現在ではバストイ刑務所になっているそうだが、
鉄格子はなく、TVもパソコンも利用でき、島内の外出も自由なら休暇制度まであるんだという。もはや“リゾート”だ。
ノルウェー映画 『孤島の王』 は、そんなバストイ島が、かつて非行少年のアルカトラズだった頃の実話をモトにした、
緊迫感溢れる実録収容所ドラマ。元々は、矯正施設だった頃も最初は健全な更生施設という感じだったらしいけど、
それがいつの間にか、体罰や虐待など、理不尽な暴力が渦巻く地獄の収容所みたくなっていったということみたい。
映画が描くのは、ある日そんな地獄に送られてきた1人の少年の許されざる理不尽に対する孤独な抵抗の物語―。

で、映画の前半は、確かに少年たち同士の裏切りとか、冷酷な大人たちによる暴力の実態などが描かれながらも、
どことなく描写が控えめで、これはもしや、抑圧だけじゃ人間は立ち直れないということを生真面目に描いただけの、
ただの北欧的教育映画なのか?って感じなんだけど、それが、後半の暴動のシーンから急に画面が色めき出すと、
映画は俄然“男のドラマ”となり、クライマックスでは凄まじい映画的カタルシスを体感させてくれる―。そう、これは、
これまで創られた多くの収容所映画の名作たちと同じく、自由への渇望や“飼い慣らされた羊”で終わるぐらいなら、
命ギリギリ太く短く生きたいという男のロマンや友情を熱く描いた、北欧版 『網走番外地』。予想だにしない終盤の、
本当の主人公がわかる瞬間に男泣きは必至! こんな映画を見せてくれるなんてやるぜノルウェー! 熱いゾ北欧!
とにかくテロ裁判の行方も気になるけど、最近とみに面白いノルウェー映画の今後に期待を抱かせてくれる傑作だ。

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今度は北欧版 『残酷女刑務所』 を創ってほしい!

『孤島の王』(2010年・ノルウェー=フランス=スウェーデン=ポーランド/シネスコ/カラー/ドルビー/117分)
【監督】マリウス・ホルスト
【出演】ステラン・スカルスガルド、クリストッフェル・ヨーネル、ベンヤミン・ヘールスター、トロン・ニルセン
【配給】アルシネテラン
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ヒューマントラストシネマ有楽町1
【鑑賞料金】1,300円(TCG会員)