ぴ○のクソ高い手数料にもめげず今年はフィルメックス六番勝負! 「第14回東京フィルメックス」

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もう世の中何が鬼ってチケットぴあの発券手数料ぐらい鬼なものはないんだけど、しかしそんなこと言ってらんない。
古今東西世界の映画が、いにしえの名画がボクを待っている!ってなもんで今年も「東京フィルメックス」に出かけ、
新旧併せ6本を観てきた。(しかしたかが映画でチケット1枚につき手数料、自分の場合315円って…。鬼! 鬼畜!)
まず1本目は、今年生誕100周年を記念した松竹の名匠・中村登監督特集から 『我が家は楽し』。いい映画だった。
貧しいながらも怖ろしいほど仲睦まじい笠智衆と山田五十鈴の一家が、いろんなトラブル災難に見舞われながらも、
善人ゆえに、最後はちゃんと報われるという話。いい映画といいつつボクが書くとなんか皮肉っぽい感じになるけど、
今ならマイク・リーの映画みたいでその報われ方がささやかで嫌味がなく、リズム感もいいから乗って観れてしまう。
家族のあり様が少しファンタジーっぽく見えるという点も含め、クリスマスに観るとさらに心温まりそうな、そんな1本。

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前半の家族仲良し描写はほとんどサイコ・ホラーの域に近い?



2本目は唯一のコンペ作品鑑賞。グルジア映画の 『花咲くころ』。正直にいうと、夜勤明けに観に行ったもんだから、
途中のそれもかなり肝心と思われるところでウッツラ舟を漕いでしまったんだけど、これもなかなかいい映画だった。
舞台は、ソ連崩壊後に独立を達成したものの内戦による政情不安で荒れていた1990年代初頭のグルジアの首都、
トビリシ。学校も面白くなければ家にも問題を抱えている2人の少女が、ある日、一丁のピストルを手にしたことから、
それまでとは明らかに異なる日常に惑わされゆくという物語。独立後という時代設定がちょっと狙いすぎな感じだし、
その背景と2人の青春模様がうまくリンクしているようにも実のところあんまり見えなかったんだけど、その代わりに、
演じる少女たちが自然体で素晴らしく、悲しい結末になるのかと思ったら微かな希望を見せるラストへとつながって、
結果、悪くなかったかなと。因みに本作が今年のコンペ部門グランプリ。偶然観たのがグランプリとはトクした気分?

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トビリシの街の寂れた風情も旅情を大いに煽ってくれます。

3本目は、ジャン・ルノワールや、マルセル・カルネ、ジュリアン・デュヴィヴィエと同じ世代の映画監督でありながら、
日本じゃあまり知られていない(そして当然、ボクも知らなかった)フランスのジャン・グレミヨンを取り上げた特集より、
1942年の 『高原の情熱』。なんだけど、これがまぁ~個人的には奇妙な映画で変に印象が残るカルトな1本だった。
ドラマそのものは今じゃよくある話で、元はパリ・オペラ座のバレリーナであった女性が営む高原のホテルを舞台に、
数人の男女が繰り広げる愛憎劇を見せるといったものなんだけど、なにしろ登場人物が男も女もまるで共感できず、
だから話がどうでもよくなり、こんな映画早く終わんないかなぁと飽き飽きしながら観ていたら、ラストの15分で突然、
車は崖から落ちるワ、ヒロインを救うため彼女を愛する男はロープウェイに飛び移るワ、悪役は谷底へ転落するワと、
恋愛物からアクション活劇に様変わり。グレミヨンて単に映画小僧では!?って感じで最後には好感を持ってしまった。

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自動車が崖から落ちるシーンのミニチュアが素敵!



4本目に観たのは、今回のフィルメックスで、いっちばん観たかった映画、カンボジアのリティー・パニュ監督最新作、
『THE MISSING PICTURE』。凄かった…完全に打ちのめされた。かつてのいわゆる悪名高きポル・ポト政権の頃に、
カンボジアではいっさいの映画や音楽等が禁じられ多くの映像が廃棄処分になったそうなんだけど、本作は、自身、
辛い収容所生活を経験し、両親はじめ多くの親族を亡くしたパニュ監督が自らの体験や今に至る想いを語りながら、
わずかに残った映像と、なんと丹精込めて作られた土人形を配したジオラマの数々で当時のカンボジアを再現した、
つまり、究極のプライベート・フィルムにして比類なき芸術作品。ボク自身、かつてカンボジアを旅行した経験があり、
ポル・ポト政権の爪痕もこの目で見たのでそれでさらに感情移入したという部分も大きいんだけど、映画は、そんな、
一介の旅行者の感慨を越えて、惨い記憶は、当事者にとっては決して過去とはならないことを痛烈に教えてくれる。

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土人形の温かみが余計に歴史の悲劇を浮き立たせる…。

中でも印象的だったのが、おそらく、人間性を排された収容所生活において監督を人間たらしめていたに違いない、
そして今なお胸かきむしられる想い出であろうポル・ポト以前の、まだ平和だった頃のカンボジアを再現した部分で、
そこには豊かな音楽や映画などの文化を享受した庶民の暮らしがあり、それゆえにトーンを暗くした収容所生活や、
奴隷のような農作業を描いた部分との対比が際立っていかにあの時代が地獄だったかを観客にも痛感させるのだ。
とくに去年の東京国際映画祭で、まさしくポル・ポト以前に創られ、廃棄を免れた稀少なカンボジア映画を観たので、
その記憶と本作の語らんとするところがガッチリ相まってもう観ている途中から胸がいっぱい。以前から同じ題材で、
作品を創り続けている監督の「これを伝え続けなければならない」という使命感がひしひしと伝わってホント感動的!
歴史の重さと、映画の凄さを心から実感できる実に素晴らしい上映だった。この1本で今年のフィルメックスは満足!





そして残る最終日には、イラン政府によって映画製作を禁じられているジャファル・パナヒ監督がコッソリ撮った(?)、
『閉ざされたカーテン』 と、台湾のツァイ・ミンリャン監督が4年前の引退宣言を“撤回して”撮った実にらしい最新作、
『ピクニック』 をつづけて観たんだけど…ウーん。正直作家の個性をある程度理解していればこそ観られるとはいえ、
個人的なことをいうとせっかくの3ヵ月ぶりの休みに観るような映画じゃなく、観終えてただ芯から疲れただけだった。
(というより、前日に観た上述の 『THE MISSING PICTURE』 にあまりにも感動しすぎて灰と化していたと言うべきか)
とくに、『ピクニック』 はどこを切ってもツァイ・ミンリャンでその昔ながらのスタイルの徹しぶりは確かに凄いんだけど、
反面喩えばボクをかつて台北という街に憧れさせた“青臭い翳”のようなものは感じられず、いかにも大人が撮った、
大人の映画って感じで何か満足度は稀薄。まぁ仕方ないが。リー・カンションの“顔”が相変わらずいいだけに残念。
でもまぁ、予想外にミンリャンの舞台挨拶も拝めたし、また引退予言(?)を撤回して撮るんなら次回作もぜひ観たい。
ということで、今年のフィルメックスはなかなかバラエティに富んでいたんだじゃないでしょうか? ただ、ぴあは憎し!

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『閉ざされた~』 は評価はともかく発想は面白かったです。

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ミンリャンの長廻しにくっきりデジタル画像は合わない。

「第14回東京フィルメックス」[11月23日(土・祝)-12月1日(日)@有楽町朝日ホールTOHOシネマズ日劇
『我が家は楽し』(1951年・日本/白黒/91分)
【監督】中村 登( 『集金旅行』 )
【出演】笠智衆、山田五十鈴、高峰秀子、岸惠子、佐田啓二
【製作】松竹
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】1,000円(限定早割)

『花咲くころ』(2013年・グルジア=ドイツ=フランス/カラー/102分)
【監督】ナナ・エクチミシヴィリ、ジーモン・グロス
【出演】Lika Babluani、Mariam Bokeria、Zurab Gogaladze
【5段階評価】★★★1/2☆
【鑑賞料金】1,000円(限定早割)

『高原の情熱』(1942年・フランス/モノクロ/105分)
【監督】ジャン・グレミヨン
【出演】マドレーヌ・ルノー、ピエール・ブラッスール、マドレーヌ・ロバンソン
【5段階評価】★★★1/2☆
【鑑賞料金】1,300円(前売券)

『THE MISSING PICTURE』(2013年・カンボジア=フランス/カラー/95分)
【監督】リティー・パニュ( 『戦争の後の美しい夕べ』 『紙は余燼〈よじん〉を包めない』 『飼育』 )
【配給】アステア
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞料金】1,300円(前売券)

『閉ざされたカーテン』(2013年・イラン/カラー/106分)
【監督】ジャファル・パナヒ( 『白い風船』 『オフサイド・ガールズ』 )、カンボジヤ・パルトヴィ
【出演】カンボジヤ・パルトヴィ、Maryam Moqadam、ジャファル・パナヒ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】1,300円(前売券)

『ピクニック』(2013年・台湾/カラー/138分)
【監督】ツァイ・ミンリャン( 『愛情萬歳』 『河』 『Hole』 『楽日』 『西瓜』 『黒い瞳のオペラ』 『ヴィザージュ』 )
【出演】リー・カンション
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】1,300円(前売券)

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