今年の目玉はエストニア映画のこれ! 『ケルトゥ/愛は盲目』ほか@「EUフィルムデーズ2014」

画像

ボクにとって「EUフィルムデーズ」の魅力といえば、それはなんといっても普段はなかなかお目にかかれない、
ブルガリアやルーマニア、旧ユーゴ諸国やらバルト三国の映画が観られるという、その1点に尽きるんだけど、
しかし期待に反し、そういう国に限って大使館にお金がないのか英語字幕はあっても日本語字幕がないため、
観たくても諦めるよりないというそうした状況がここ何年かつづいている。で、今年もまたボクが本当に観たい、
ルーマニアとリトアニアとスロヴァキアの映画には日本語字幕がないようであ~んいけずと思っていたんだが、
なんと今年は、毎回、同じ状況のブルガリアとエストニアの映画にはしっかり字幕が付いたらしく、それで俄然、
いつにもまして行くのが愉しみになったってしだい。だってフランスやイタリア映画なんてどこでも観れるでしょ。
というワケで今年のEUフィルムデーズ。初日に観たのはちゃんと字幕が付いたブルガリア映画 『アドリアナ』!



…とまぁ勢い勇んで観たのはいいんだけど、しかし想像していたのとは少し違い、正直感想はもう一つだった。
映画は1938年に気まぐれに若いパイロットを誘惑してその恋人を自殺に追い込んだという過去のある女性が、
70年後の現在になってある若い娘にその罪を告白したら、なんとその子は、自殺した女性の孫だった、しかも、
その出逢いそのものも、死んだ女性の妹による計画だったという話で、そんなストーリーだからボクはてっきり、
本作を女の復讐ものだとばかり思っていたんだけど、映画はメロドラマを見せるばかりで、一向にそうとならず、
さらにはそこへブルガリアの今と昔との違いや、現代におけるまた一つ別の話を盛り込んでもう何がなんだか。
役者はいいし見栄えも派手だけにもう少々ヒロイン2人の心理的カケヒキをスリリングに見せてほしかったなと。
それに2008年のアドリアナはどう考えたって100歳に近いハズなのに、まったくそう見えなかったのも少し残念。

画像



でもまぁブルガリア好きだし(贔屓)、期せずして舞台挨拶やティーチインもあったのですごくトクした気分だった。
次に日を跨いで観たのがポルトガル映画の 『バロン』。まぁポルトガル映画だって珍しいと言っちゃ珍しいけど、
しかし最近はそうでもないからさほど気にしちゃいなかったものの唯一モノクロで異彩を放っていたので観たら、
いやこれは凄い1本だった。原作は、1942年に発表された恐怖小説らしいんだけど、モノクロで繰り広げられる、
ある男がバロンという独裁者が支配する村へ迷い込み経験する怪異譚は暗喩的ダイアローグのオンパレード。
ひょっとしたらスペイン内戦に対する何か含蓄があるのかもしれんけどハッキリいって内容はチンプンカンプン。
しかし、異様な緊張感漲るゴシック・ホラーの映像には一種抗い難い映画的魔力があってフシギと退屈はせず、
『サラゴサの写本』『砂時計』 なんかも想い出してボクは本作、嫌いじゃなかった。ポルトガルも変な国だよ。

画像



そして最後につい昨日観たのが、もしかしたら今回一の注目作かものエストニア映画、『ケルトゥ/愛は盲目』。
なんで今回一かといえば去年のミニシアターブッチ切りの大ヒット作 『クロワッサンで朝食を』 の監督作だから。
で、バルト三国は毎年愉しみにしているとは言いつつ印象で自分好みじゃないかななんて思っていたんだけど、
とんでもない、めちゃめちゃいい映画だったこれ。ケルトゥはヒロインの名で、彼女が夏至祭の晩突然姿を消す。
おそらく自閉症なのか、少し問題を抱えている彼女を家族は心配して捜すが、なんと彼女は女好きでアル中の、
ヴィッルと一夜を過ごしていた。問題児のヴィッルは村人から散々詰られるが果たしてその夜何があったのか?
解説にはそこがキモとして徐々に明かされるミステリーみたいに書いてあるんだけど、そこは意外とすぐわかり、
後半はむしろ、小さくとも力強い、愛の物語になってゆく。(公開は未定だけど以降ネタバレしますのでご注意を)

画像
たとえばこの写真だと確かにミステリーっぽく見えるよネ。

途中まではドラマがかなり不安定で(技術的に不安定という意味じゃないよ)、DVなどヘビーな問題も出てくるし、
もしかしたらとんでもなく絶望的な結末が待っているんじゃないかと思って、ヒヤヒヤしながら観ていたんだけど、
ラストは決して100%のハッピーエンドではないもののだからこそ確かな希望を謳う愛の賛歌となって涙腺決壊。
『クロワッサンで朝食を』 も閉鎖的な世界で生きてきた1人の女性の魂の解放を綴る話だったけど本作も同じで、
かつコチラでは退屈な人生を酒と女で埋め続けてきた1人の男の魂の成長物語にもなっているから、余計感動。
ボクなんかはラストに、『小さな恋のメロディ』 を彷彿としたくらい。主題歌や挿入歌も素敵だしホントによかった。
去年はラトビア映画の 『ドリーム・チーム1935』 がいちばんよかったけど今年はこれ! バルト三国は来てるネ!
来年のEUフィルムデーズも愉しみ! だからお願い!ルーマニアやリトアニア映画にも、字幕を付けてください!

画像
仕事で主演女優さんの話まで聴けなかったのが残念っ!

「EUフィルムデーズ2014」[5月30日(金)‐6月22日(水)]@東京国立近代美術館フィルムセンター(京橋)
『アドリアナ』(2012年・ブルガリア/DCP/119分)
【監督】ペタル・ポプズラテフ
【出演】Jeanette Spassova、Irmena Chichikova、Zahary Baharov
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】520円(一般)

『バロン』(2011年・ポルトガル/DCP/90分)
【監督】エドガル・ペラ
【出演】Marina Albuquerque、Marcos Barbosa、Vítor Correia
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】同上

『ケルトゥ/愛は盲目』(2013年・エストニア/DCP/97分)
【監督】イルマル・ラーグ( 『クロワッサンで朝食を』 )
【出演】ウルスラ・ラタセップ、Jüri Lumiste、Mait Malmsten
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞料金】同上

【弊ブログ内EUフィルムデーズ関連記事一覧】
EUフィルムデーズ2009
EUフィルムデーズ2010
EUフィルムデーズ2012
EUフィルムデーズ2013①
EUフィルムデーズ2013②