たゆたう愛は“ハコヘル”の中に… 「加藤彰 たゆたう愛」鑑賞6作品総括

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昨年の秋に1990年代に量産されていた東映のいわゆる“Vシネマ”を集めた同じくラピュタのレイトショー企画で、
今回、大々的にフィーチャーされた加藤彰監督の 『F.ヘルス嬢日記』 を観たんだけどあれは本当に面白かった。
金山一彦演じる電気工の青年が真弓倫子演じるヘルス嬢に本気で惚れて店に通い詰めるというお話なんだが、
何を隠そう(隠してないけど)ボクもその昔ヘルス嬢にベタ惚れして店に通い倒すどころか1万いくらも払いながら、
話だけして帰るなんて純な(バカな)真似を繰り返した経験があるので映画を観ながら心で「わかるわ~」の連呼。
切ないラストも胸に沁みる真弓の裸より金山のキレイなお尻にびっくりな実に珠玉の90年代ロマンポルノだった。
そんな加藤彰監督の特集なので愉しみに通いながら時にDVDにも頼りつつラインナップ全作品を観たんだけど、
う~ん。ハッキリ言って今回の12作品すべてを観るなら 『F.ヘルス嬢日記』 1本を観た方が有意義かもな…とは。

カルトなサスペンスものの 『愛獣 赤い唇』 やレンタルで観ちゃった谷ナオミと高橋明主演の男女主従逆転劇で、
後半突然スプラッターになるかと思えばラストがまるで 『悪魔のいけにえ』 みたいな 『奴隷妻』 はよかったけど、
いわゆる代表作とされる 『恋狂い』 『OL日記 牝猫の情事』 なんかは下記の★2個の作品同様ボクには微妙…。
『学生妻 しのび泣き』 『女教師 童貞狩り』 『女子大生の告白 赤い誘惑者』 に至っては金返してって気分だった。
ただし、最後の最後に観た 『OL日記 濡れた札束』 のみはそれらとまるで同じ監督とは思えぬほど別格の出来。
観てないけど昨年の話題作 『紙の月』 よりきっと面白いのではないかと思うような実録犯罪メロドラマの傑作で、
ようやく 『F.ヘルス嬢日記』 とつながるような1本と出逢えどうにか溜飲も下がったって感じの今回の特集だった。
来年復活する新生ロマンポルノでも今や都内には乏しい昔ながらのハコヘルを舞台にした作品を創ってほしい。

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「加藤彰 たゆたう愛」
[2月28日(土)-5月29日(金)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
【鑑賞料金】800円(会員)

『艶説 お富与三郎』(1972年・日本/カラー/35mm/73分)
【監督】加藤 彰( 『恋狂い』 『学生妻 しのび泣き』 『OL日記 牝猫の情事』 『秘本 袖と袖』 『新妻地獄』 『奴隷妻』 )
【出演】続圭子、五條博、山科ゆり、木夏衛、中原功二、中平哲仟、浜口竜哉
【製作】日活
【5段階評価】★★☆☆☆
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【寸評】
うーん…。
有名な歌舞伎の演目が元ネタらしいけど全体的に締まりが悪くどこで盛り上がればいいんだかわからない内に終わってしまった。
もっとこう、滾らせてくれよな。(中邑真輔)
でも、キスする時の「口吸って」というヒロインの科白はよかった!
そういうのもっとちょうだい。


『愛に濡れたわたし』(1973年・日本/カラー/35mm/75分)
【監督】加藤 彰
【出演】宮下順子、青木リナ、中川梨絵、石津康彦、高橋明、長弘、花村みどり、あべ聖
【製作】日活
【5段階評価】★★☆☆☆
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【寸評】
なんだこれは!?
タイトルはいかにもしっとり系メロドラマって感じだけどその実かなりの珍作。
そらプリントもキレイなハズだ。
雨の夜に出逢った妻を捜す男との幸せを夢見る宮下順子の妄想が2人で農業を営んでいるというシチュエーションてあたりでもう珍作決定。
「あなた~! お昼よ~!」と弁当持って走り出したと思ったらコケる件で噴きそうになったんだけどみんな静かに観ていたので口押さえた。
中川梨絵のキャラもよくわからず。
ロマンポルノってホント玉石混淆だよなぁ。
まぁだから観ちゃうんだけど。
また変な映画を観てしまった…。


『愛獣 赤い唇』(1981年・日本/カラー/35mm/68分)
【監督】加藤 彰
【出演】泉じゅん、高原リカ、大高範子、井上博一、大江徹、松風敏勝、関川慎二
【製作】にっかつ
【5段階評価】★★★★☆
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【寸評】
これは好き!
本特集でようやく素直に面白いと言える映画観た。
6人の男女が一度は封印した殺人が元でじりじりと堕ちてゆく。
泉じゅん、えぇ女じゃ~。
しかも予想外の美巨乳の上に男に錐を突き付ける様のイカすこと!
男に犯られそうになったらヘアピンを耳に突っ込め!
仲間の1人が自分を貶めた男もろともホテルの窓を突き破るシーンもいい!
そして本作は歌舞伎町を中心とした新宿も魅力。
いい女がポツネンと佇む歌舞伎町のなんと絵になること。
こういう風情はもう映画の中でしか観られないのだなぁ…。
歌舞伎町にゴジラ? ふーん。


『女教師 童貞狩り』(1976年・日本/カラー/35mm/74分)
【監督】加藤 彰
【出演】渡辺外久子、秋津令子、田島はるか、南郷俊介、清水国雄、三上剛、中台祥浩
【製作】日活
【5段階評価】★★☆☆☆
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【寸評】
同じタイトルで検索すると夏目ナナが出てくる。
…夏目ナナに狩られたかったぁ~!(狩られたかった…Orz)
と、この女優さんを観て思う男もかつてはいたんだろうか。
スキー場で裸で縄跳びしたり、リフトに乗ったりまでして頑張っているのに…。
なにしろ、つまんない映画だったんだけど、
しかし今や重宝がられている日活ロマンポルノも滂沱のゴミの山の上にこそ成り立っていると思うとこういう駄作こそ愛しいと思ったり、いや別に思わなかったり。


『女子大生の告白 赤い誘惑者』(1980年・日本/カラー/35mm/69分)
【監督】加藤 彰
【出演】紀ノ山涼子、山口美也子、岡尚美、朝霧友香、吉川遊土、佐竹一男、高橋明、藤井智憲、大河内稔
【製作】にっかつ
【5段階評価】★★☆☆☆
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【寸評】
奔放な女子大生の性の話かと思ったら最後はなぜかジャーロみたいな血生臭い展開に…。
現役女子大生が脚本を書き主演した作品らしいけどとりあえずいろいろやってみたかった?
ラストで野っぱらに置き去りにされる猫ちゃん(超可愛い!)が観客の心象を代弁するまたしてもケッタイな映画だった。
でも、現役女子大生が脚本を書いて主演するなんて新生日活ロマンポルノでもそういうことやればいいと思う。


『OL日記 濡れた札束』(1974年・日本/カラー/35mm/76分)
【監督】加藤 彰
【出演】中島葵、絵沢萠子、堂下かずき、浜口竜哉、賀川修嗣、高橋明、堺美紀子、叶今日子
【製作】日活
【5段階評価】★★★★☆
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【寸評】
おっとコチラも奇しくも伊地智啓。
さすが特集の大トリだけあってこれはよかった!
少々歳のいった女性銀行員が若いカレシのために横領を働く実録ドラマ。
構成に少し戸惑うけどヒロインの内面をじっくり描いていて濡れ場もいいしなにより主演女優のズブズブ感が凄い。
“ザ・昭和”を堪能。