ドニーとイグレシアでグラン・ノーチェ! 「第12回ラテンビート映画祭」



もう最高すぎる! 映画のタイトルに“最高”と付いているくらいだし監督がなんといったって去年の大傑作の1本、
『スガラムルディの魔女』 のボク的にはヨーロッパ最大の巨匠にして“スペインの無敵監督”(艦隊とかけてます)、
アレックス・デ・ラ・イグレシア監督待望の新作なのでなんの心配もなく観に行ったら、ま~面白いのなんのって!
どうしてこう、毎回毎回こんな誰も予想のつかないような実に面白い話を考えつき映画にすることができるのか!?
しかもデビュー作の 『ハイル・ミュタンテ!電撃XX作戦』 から20年作風とテンションがまったくもって変わらない!
今ドキこれだけ有名なら一度は“泣き”に走りそうなものをまずソッチに行かないところがこの監督の素晴らしさ!
今回の舞台は大晦日番組を収録中のスタジオで、そこへ失業中の主人公ホセがエキストラとしてやって来るが、
スタジオに集まっているのは魔女、じゃなく腹にいろんな欲望や思惑を抱えたクセの強い人間たちばかりだった。

とにかくそのまるでロバート・アルトマンかと思うような群像劇の捌き方がお見事でそれだけでも愉しいんだけど、
描かれる側も側で、男をみんな不幸にする美女や精子を狙われている若手歌手や裏の顔が超ヒドい大物歌手、
そしてその命を狙う息子と作詞家のコンビという具合にメインから脇に至るまで破天荒な濃いぃキャラが勢揃い。
そんな“アルトマンがまるで鈴木則文化した”ような喜怒哀楽の物語はそれこそ“トラック野郎”10本分の濃厚さ!
オマケに外では失業者たちによるデモが暴動へと発展しているってんだからいったいどうやって話を畳むのか?
お祭騒ぎの大団円からラストは正直力技なんてレベルじゃないほど強引だけどいいじゃないの愉しいんだから!
歌ありダンスありエロあり(グロなし)の1時間40分はまさに映画的快感の坩堝でラストは最高にハッピー!(か?)
日本人でもこんなに愉しいんだからスペイン人にとってはご馳走みたいな映画なんだろう。ホントに面白かった!

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スペイン人なら誰でも知ってる懐メロ歌手だそう。

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今回もエロ美しい監督の奥様カロリーナ・バング。

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こんな疫病神ならウェルカム!!(ブランカ・スアレス)



というワケで、今年のラテンビート映画祭じゃイグレシアを併せて3本の映画を観たんだけど、2本目に観たのは、
なんとその名を聞くのも久々なピーター・グリーナウェイ監督の最新作 『エイゼンシュテイン・イン・グアナファト』。
どうしてイギリスの(変態)芸術派監督の新作がラテンビートで!?と思ったら舞台がメキシコだったからなんだけど、
本作はかのセルゲイ・エイゼンシュテインが 『メキシコ万歳』 を撮影せんと訪れていたメキシコのグアナファトで、
しかし映画などそっちのけで現地ガイドの男とヤりまくっていたという実話か否か知らないがとにかくそんな話を、
相変わらず唯一無二の映像美と 『ZOO』 を彷彿とさすようなチ○コまたチ○コの連続で描いた愛と肉欲の物語。
いやもういくら故人だからって性器もとい世紀の大監督の身の下話をこんな赤裸々に描いて大丈夫なのか?と、
笑えつつもあまり好みの味ではない肉料理を延々喰わされるような気分にもなってかなり胃もたれしてしまった。

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エイゼンシュテインがゲイだったとは知らなんだ。



そして胃もたれも収まらない内につづけて観たのがもうすぐ始まる東京国際映画祭でも上映される 『土と影』―。
く、暗い…。肉料理の後は薄いシンプルな味付けの芋のスープでも呑み続けたような…じゃあちょうどよかった?
映画は、サトウキビ畑が延々広がるコロンビアの貧しい村に1人の初老の男性が、しかも17年ぶりに帰ってきて、
重い病に伏す息子や愛らしい孫のために少しずつ少しずつ家族との距離を縮めながら家を再興しようとする話。
と書くと一見わかりやすい感動系のドラマに思えるかもだけど、物語に起伏はほとんどなく映像はかなり硬質で、
砂利道をトラックが駆け抜け砂煙がもーもーと舞い上がるたび、コチラは思わず目を細め息を詰めてしまうほど。
正直、97分はかなり持久力勝負って感じなんだがしかし世界のどこかの一隅に確実に存在する人間のドラマを、
ただ真っすぐに見つめんとするその視線は極めて誠実で暗いし重いししんどいんだけど好感度はフシギと高め。

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カンヌ国際映画祭カメラドール受賞作だそうです。

前日と同じ時刻に観た 『グラン・ノーチェ!』 と違い全然愉しくないんだけどこういう“生きる”ってなんだろう?と、
しみじみ思わせてくれるような映画も時にゃ大切だということでラテン映画の豊かさと懐深さをあらためて知った、
そんな、今年のラテンビートだった。でも 『グラン・ノーチェ!』 は愉しかったなぁ~ホント心の底から愉しかった!
直前にドニー・イェン主演の 『カンフー・ジャングル』 を観てそれもまた実に“愛”のある映画でよかったんだけど、
大好きなドニーとイグレシアのオカゲで最高にグラン・ノーチェ(大いなる夜)な週末だった。やっぱ映画は愛よ愛!!

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「第12回ラテンビート映画祭」[10月8日(木)-12日(月・祝)]@新宿バルト9
『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(2015年・スペイン/カラー/100分)
【監督】アレックス・デ・ラ・イグレシア( 『ハイル・ミュタンテ!電撃XX作戦』 『ビースト 獣の日』 『みんなのしあわせ』 )
【出演】ラファエル、ペポン・ニエト、カロリーナ・バング、ブランカ・スアレス
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞料金】1,500円(一律)

『エイゼンシュテイン・イン・グアナファト』(2014年・オランダ=メキシコ=フィンランド=ベルギー/カラー/105分)
【監督】ピーター・グリーナウェイ( 『ZOO』 『建築家の腹』 『コックと泥棒、その妻と愛人』 『レンブラントの夜警』 )
【出演】エルマ・バック、ルイス・アルベルティ、マヤ・サパタ
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】同上

『土と影』(2015年・コロンビア=フランス=オランダ=チリ=ブラジル/カラー/97分)
【監督】セサル・アウグスト・アセベド
【出演】アイメル・レアル、イルダ・ルイス、マルレイダ・ソト
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞料金】同上

【弊ブログ内アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品記事一覧】
『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』(2002年)
『気狂いピエロの決闘』(2010年)
『刺さった男』(2012年)
『スガラムルディの魔女』(2013年)

【弊ブログ内ラテンビート映画祭記事一覧】
第7回ラテンビート映画祭(2010年)
第8回ラテンビート映画祭(2011年)
第10回ラテンビート映画祭(2013年)