“たからぶね”に乗ってピンク映画の大河(歴史)をめぐる! 「ゆきてかえらぬ 渡辺護 官能の映画旅」

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「ゆきてかえらぬ 渡辺護 官能の映画旅」
[2016年7月23日(土)-11月14日(月)]@ラピュタ阿佐ヶ谷
【鑑賞料金】800円(会員)

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『あばずれ』(1965年・扇映画/白黒/60分) ※16mm短縮版
【監督】渡辺護( 『紅壺』 『おんな地獄唄 尺八弁天』 『(秘)湯の町 夜のひとで』 『少女縄化粧』 『聖処女縛り』 )
【脚本】吉田貴彰(吉田義昭)
【撮影】生田洋(竹野治夫)
【出演】飛鳥公子、左京未知子、黒木純一郎、千田啓介
【5段階評価】★★★☆☆
3年前に亡くなったピンク映画の大巨匠・渡辺護監督の回顧上映、1本目はなんと2年前にプリントが見つかった、
激レアのデビュー作! 17歳のうぶな少女が、まんまと継母の座につき父親をたぶらかして財産を搾り取った上、
自分を誘拐・輪姦までさせた女とその愛人に復讐する話。まさしくこれも“何が彼女をそうさせたか”系女性映画。
もう、こういった作品は“面白い映画が観たい”というよりは“レアな映画が観たい”というスイッチで観に行くから、
別につまらなければつまらないでも全然構わなかったんだけどこれが意外に面白いからいいものを拾った気分。
そりゃ監督自身が仰っている通り演出や芝居は拙かったりするけれど復讐ものとしてはけっこう話がハードだし、
父親が自殺し1ヵ月後にはタフな娼婦となって男を手玉に取る飛鳥公子演じるヒロインの表情もたくましくていい。
さすが、東日本初上映と謳うだけあって3日間満席! 11月までつづく大特集、コチラも気合を入れて臨まないと。

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『女子大生の抵抗』(1966年・扇映画/白黒/70分) ※16mm
【監督】渡辺護
【脚本】奈加圭司(石森史郎)
【撮影】船橋登(遠藤精一)
【出演】谷口朱里、野上正義、可能かづ子、林美樹
【5段階評価】★★★★☆
なんでまたこんなタイトルに。これ女子大生が抵抗する話じゃなくて欲望に抵抗できない奥さんの話じゃないの!
もはや東映・山下耕作将軍の 『強盗放火殺人囚』 並みに題名と内容がかけ離れていてでもそこが憎めず最高。
そして、映画自体も渡辺護監督にしては珍しい(か?)SMでもサスペンスでもない直球のメロドラマで新鮮だった。
ラディゲの「肉体の悪魔」を翻案した(もちろん読んだことはない)鎌倉を舞台に描かれる青年と人妻の禁断の恋。
男の黒い劣情を煽るためのピンク映画にもかかわらずまるで大手邦画会社の文芸ドラマでも観たような後味で、
“ピンク映画の劇団ひとり”、ガミさん(野上正義)も基本的にはいつもと同じく女の敵同然のヤリ○んの役なのに、
ストレートにイケメンに描かれ恋に悩むマジメ青年チックな印象。(カノジョがいながらその友だちともヤるのに!)
適度な色気を醸す谷口朱里も美人すぎないあたりがリアルでよかったし“人妻映画”としてもグーだと思います!

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渡辺護自伝的ドキュメンタリー 第一部
『糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護 前編』(2012年/カラー/60分)
【監督】井川耕一郎( 『色道四十八手 たからぶね』 )
【撮影】松本岳大
【出演】渡辺護
【5段階評価】★★★☆☆
昭和6年(1931)生まれ。そうか、渡辺監督は親父と歳が同じだったんだ…。(しかも監督は3月19日、親父は10日)
ピンク映画の巨匠が、自らの生い立ちを縦横無尽に語り倒す60分。実に才能豊かで憧れだったお兄さんのこと、
醒めた目で見ていた戦争のこと、そして、親友の影響で左翼運動に傾倒し、やがて組織を嫌いになる青年時代。
おコタに入って身ぶり手ぶりを交えながら話しているだけなのにまるで昭和の風景が目に見えてくるかのよう…。
夜の女性の娘さんて意味だったのかな? 懐いていたコが自分に五銭を握らせ、「さよなら」と去っていった話や、
結核で死んだお兄さんの部屋にいるとお兄さんの影をフと感じたという話が映画の1シーンみたく目に浮かんだ。
戦争の話にしてもお兄さんの話にしてもどこかしら“終わり”というものにロマンチシズムを見てるようなあたりが、
決して詳しくはないが渡辺作品の根幹のような気がしてある意味終戦記念日に観るに相応しい映画だと思った。

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『谷ナオミ 縛る!』(1977年・新東宝/カラー/60分)
【監督】渡辺護
【脚本】高橋伴明
【撮影】柳田友春
【出演】谷ナオミ、下元史朗、鶴岡八郎
【5段階評価】★★★★☆
上述 『女子大生の抵抗』 が珍しくメロドラマだと思ったら、渡辺監督は元々SMものはやりたくなかった人みたい。
そこで谷ナオミでSM映画を…という新東宝の要求を“緊縛=しがらみや時代の抑圧に縛られる女性像の象徴”、
という映画的テーマに解釈変換して本作を創ったら大ヒット。これぞプロの仕事! まさしく近江商人の三方よし!
超ドSな能面師の夫に抑圧されている女性と彼女に恋心を抱いているやはり夫と同じく能面師の弟の悲恋物語。
ボクみたくSMにまるで興味のない人間の劣情をもしっかり煽るカラミが満載な上に、ドラマも濃密で観応え抜群。
そして本作がヒットしたものの日活が谷を他社に出さなくなったためそれで創られたのが次作、『少女を縛る!』。
谷がダメなら、次は少女で!という今ならまず炎上しそうな発想の是非はともかく、映画は廓に売られた少女が、
緊縛に開眼して(を“運命を受け入れて”に解釈変換)たくましくなってゆくという話。面白そう。いつか観てみたい。

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『変態SEX 私とろける』(1980年・現代映像企画/カラー/66分)
【監督】渡辺護
【脚本】渡辺護、吉田義昭
【撮影】久我剛
【出演】夏麗子、杉佳代子、佐野和宏、津崎公平
【5段階評価】★★★☆☆
企画のアタマに観た渡辺護監督のデビュー作 『あばずれ』 の 『少女縄化粧』 につづく3度目のセルフ・リメイク!
ということで内容は同じくビッチな性悪後妻に父を自死に追いやられ自身も純潔を奪われた少女の妖艶復讐譚。
時代設定を変えつつさらには緊縛ものにした 『少女縄化粧』 と違い何もかも拙かった若き日の作品をそのまま、
養ってきた腕と進化した性愛表現でしっかりリメイクしてやろうという気概に溢れてか全体的にキチッとした印象。
しかしそれが“アダ”にも感じられ、舞台を大阪に変えているのに描写がテキトーな上、小慣れてしまっている分、
物語の内面が置き去りにされているような気もし肝心の復讐ものとしては前2作ほど胸にグッとこないのが残念。
変身以降の“女の影”を見事体現するヒロインの夏麗子が思いのほか魅力的だったからその想いはひとしお…。
でも、ピンク四天王よりずっと前の佐野監督が観れたのはよかった。渡辺監督の分も、まだまだ頑張ってほしい。