社会の膿はテロではなく芸術で出せ! 「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2016」

画像
「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2016」
[2016年9月22日(木・祝)-9月24日(土)、10月10日(月・祝)、10月13日(木)-10月15日(土)]
【鑑賞劇場】アテネ・フランセ文化センター(御茶ノ水)
【鑑賞料金】1,200円(一般)

画像

3年に一度ドイツのどっかで開かれているという「世界演劇祭」を記録したファスビンダー唯一のドキュメンタリー。
だからか、会場はす~ごい人でここ数年つづいているファスビンダーの人気再燃もここに極まれりといった様相。
肝心の映画も14に分かれたその各章の題を最初に全部言っちゃうのでどれが何章か皆目わからないんだけど、
いかにも80年代っぽいシュールな演劇がテンポよくつづくから思っていたよりずっと愉しく観られた。てか笑えた。
とくに舞踏会風な恰好をした複数の男女が踊りまくるパフォーマンスは今そのまま演ってもけっこうウケると思う。
剝身の男女がヒトラーを茶化す上になにしろエゲつないマネをするパフォもシュリンゲンズィーフっぽくて面白い。
ファスビンダーが映像にカブせつつ朗読するアントナン・アルトーの「演劇とその分身」はひと言難解なんだけど、
「演劇は集団の膿を出す」という言葉だけはすべての“創作”に言えることみたいに思え印象に残った。憶えとこ。

『シアター・イン・トランス』(1981年・西ドイツ/カラー/91分)
【監督】ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー( 『出稼ぎ野郎』 『何故R氏は発作的に人を殺したか?』 )
【5段階評価】★★★★☆
****************************************************************************************************
画像

ダメだ。手強かった。ファスビンダーおなじみの面子(シグラにキアー!)がたくさん登場しユーモアも満載なのに、
いかに意識を集中しようと思ってもできなかった。(トイレの落書きを章の頭にテロップで出すとかなんじゃソレ?)
上映後の解説トークである程度内容は補完できたからいいけど、もっとゆったりとした鑑賞体勢で観たかったな。
目先のスリルだけを求めて革命の理念なきテロを起こそうと企む若者たちを揶揄したファスビンダーらしい作品。
劇中、何度もつけっ放しのTVが出てくるんだけどそれは現代社会には刺激の強い音や鋭利な光が溢れていて、
静かに生きている者にとりそれらはもはやテロみたいなものであるという隠喩らしい。なんか凄い説得力がある。
けっきょくオチもよくわからなかったがつまり社会の膿はテロじゃなく芸術で出せということで納得することにした。
でもファスビンダーは性悪な男だったから彼に苦しめられた男女にとっては彼の存在こそテロだった気もするが。

『第三世代』(1979年・西ドイツ/カラー/110分)
【監督】ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー( 『キュスタース小母さんの昇天』 『少しの愛だけでも』 『ケレル』 )
【出演】フォルカー・シュペンクラー、ビュル・オジェ
【5段階評価】★★★☆☆
****************************************************************************************************
画像

本作、4年前に「ファスビンダーと美しきヒロインたち」という特集でも 『ローラ』 とかと一緒に上映してるんだけど、
よくリリアン・ギッシュみたいに被虐的な美しさがあるワケでもなければ 『道』 みたくラストで泣けるワケでもない、
痩せぎすの鶏ガラみたいな女性(失礼)がひたすら男にいじめられるだけの映画をそんな題名で上映したもんだ。
いやぁーこれゾまさに“淵に立つ”ヒロインを描かせたら右に出る者のないファスビンダーらしいヒド面白い傑作!
先の特集の解説には「エキセントリックなメロドラマ」や「心理サスペンス」だなんて書いてあるけど物は言いよう。
要はファスビンダーの分身のような男が、やや年齢のいった世間知らずのお嬢さんをさも愉しげにいじめ抜く話。
彼女が日焼けが痛くて伏せている時や猫が死んで泣いている時こそ抱かれるなんて場面鬼畜すぎて逆に爆笑。
そしてそんな彼女をコチラも全然不憫と思えないのがまたヒドい。ほんとファスビンダーって最低だ。(オマエもだ)

『マルタ』(1975年・西ドイツ/カラー/112分)
【監督】ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー( 『シナのルーレット』 『マリア・ブラウンの結婚』 『リリー・マルレーン』 )
【出演】マーギット・カーステンゼン、カールハインツ・ベーム
【5段階評価】★★★★☆

【弊ブログ内ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督関連記事一覧】
「特集 ドイツ映画史縦断1919-1980」(2005年)
「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2008」(2008年)
『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(1971-72年)(2008年)
「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督 没後30年 ファスビンダーと美しきヒロインたち」(2012-13年)
「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2014」(2014年)
「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2015」(2015年)
『あやつり糸の世界』(1973年)(2016年)