やっぱりジョージアよりグルジアの方がいいなぁ! 『みかんの丘』&『とうもろこしの島』短評



北欧バルト三国のエストニア(往った)とコーカサスのジョージア(トルコから往こうとして逆戻りになるから諦めた)。
一見関係の薄そうな両国にこんなつながりがあったとは。こういう世界の知らないことを知れるから映画は素敵。
ゆえにそれだけで観る前からある程度満足はしていたけどさらには中身もこんな素晴らしいなんてトクした気分。
舞台は、1989年に始まりグルジアがソ連から独立したことで激化して、今もなお火種がくすぶるアブハジア紛争
エストニアより移住して、みかん栽培を営む老人とその友人が、負傷した敵同士の兵士2人を看病することに…。
仄かなユーモアさえ交えたまるでエルマンノ・オルミにオタール・イオセリアーニを足したような達観した語り口と、
じっくり撮られた美しい映像で描かれるのは民族や宗教が違うというだけでいつまでも殺し合う人間の愚かさ…。
家の中では停戦合意が保たれるというその着想が面白く、世界の縮図を丸ごとわし掴みしたような作劇が見事。
後半では、その和平が破られるような悲劇が起きるけど、映画はさらにラストでささやかな人間的希望を見せる。
それを理想主義と嘲る者に映画を語る資格なんてない。芸術はどんな時も希望を謳うものなのだ。ひと言傑作!

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独ソに散々やられたエストニアだからこそ仲介?

『みかんの丘』(2013年・エストニア=ジョージア/カラー/87分)
【監督】ザザ・ウルシャゼ
【出演】レムビット・ウルフサク、エルモ・ニュガネン、ミヘイル・メスヒ、ギオルギ・ナカシゼ、ライヴォ・トラス
【配給】ハーク
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】岩波ホール(神保町)
【鑑賞料金】1,400円(映画サービスデー)

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コチラも背景はアブハジア紛争。今度はアブハジアとジョージアの境目を流れる、エングリ川なる大河の中洲で、
毎年とうもろこしを育てている老人とその年頃の孫娘が傷ついたジョージア兵を双方の捜索から匿うという物語。
本作もテーマは明快だけどしかしコチラは 『みかんの丘』 に較べるとどこか浮世離れした寓話性が強めな作風。
そして娘の思春期ゆえの危うさみたいなものがセリフを極力排した静かな物語に仄かな緊張感を与えている…。
だから娘の兵士に対する感情が後半で何か途轍もない悲劇につながるのでは?と思いつつ観ていたんだけど、
しかし厳しい自然はそんな人間の何もかもを一瞬で流し去ってしまう…命の尊さを逆に思い知らさんとばかりに。
クライマックスの洪水はまるで北欧の巨匠ヤン・トロエルがハリウッドで撮った 『ハリケーン』 を思わせる迫力だ。
とはいえ、全体の輪郭を少しボカしすぎな印象もある本作より個人的には 『みかんの丘』 の方が好みだろうか?
というより実はうっかり開映時間を平日のそれと勘違いし冒頭の約10分を観逃してしまった…。なんという不覚!
それにしても、やはりあの時国名がグルジアの内に往けばよかった。グルジアの方がカッコいいと思うんだけど。

『とうもろこしの島』
(2014年・ジョージア=ドイツ=フランス=チェコ=カザフスタン=ハンガリー/カラー/100分)
【監督】ギオルギ・オヴァシュヴィリ
【出演】イリアス・サルマン、マリアム・ブトゥリシュヴィリ、イラクリ・サムシア、タマル・レヴェント
【配給】同上
【5段階評価】★★★☆☆
【鑑賞劇場】同上
【鑑賞料金】同上