そしてキアロスタミはつづく… 『シーリーン』&『10話』@「キアロスタミ全仕事」

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「キアロスタミ全仕事」[2016年10月19日(水)‐27日(木)]@ユーロスペース(渋谷)
【鑑賞料金】1,100円(会員)

『シーリーン』
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いやもう案の定寝ちゃったがそれは夜勤明けにつき寝てなかったからで、聞きしに勝るとんでもない映画だった。
題名の“シーリーン”とは12世紀に実在したイランの詩人ニザーミーによる悲恋ものの古典叙事詩の名だそうで、
本作はなんと、その映画化を客席で鑑賞している114人の女優の顔をひたすら映すだけという究極の実験映画。
とはいえいかにも確かにみな映画を観ているっぽいけどどう観てもそれはそういう態(てい)でつまり全部お芝居。
泣きの場面らしいところじゃ誰もが涙するんだけどでも聴こえてくる映画の音がそんな高尚には全然聴こえない。
でも、そんな女優の顔だけで90分を保たそうってんだからその発想には驚くばかりだし(しかも114人てアンタ!)、
イラン映画にはお国柄いろんな縛りがあるというのは知られた話だけど、逆にそのオカゲでこんなにブッ飛んだ、
前衛的作品を名のある巨匠が創っちゃうワケで創作においての自由とは何かを心底考えさせられる。寝たけど。

『シーリーン』(2009年・イラン/カラー/92分)
【監督】アッバス・キアロスタミ( 『トラベラー』 『友だちのうちはどこ?』 『ホームワーク』 『クローズ・アップ』 )
【出演】ニキ・カリミ、ゴルシフテ・ファラハニ、ジュリエット・ビノシュ
【5段階評価】★★★☆☆

『10話』
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凄いなぁ。これがドキュメンタリーではなく“ドラマ”だなんてそれでは普段観ているドラマはいったいなんなのか?
DV撮影がもたらしたフットワークの軽さがキアロスタミ監督独特の作風にマッチするのは当然の理だと思うけど、
なにより、その映像的な部分に引っ張られることなく語られるものこそがちゃんと面白いからつい見入ってしまう。
イランの首都テヘラン。1人の女性の運転する車に(タクシーかと思ってたけど違った)彼女の息子や妹や友だち、
見ず知らずの老婆や娼婦や結婚を間近に控えて悩む女性が次々乗り込んできては、様々な会話を繰り広げる。
舞台設定だけなら誰だってマネできそうだけど、それが映画として面白くなるかは否かはやはりセンスと作家性。
饒舌な会話からちゃんと人物それぞれのドラマが浮かび上がりやがてそれがイラン社会の今へと結び付くのだ。
漆黒の車内で繰り広げられる娼婦とのエピソードはまるでサスペンスの雰囲気で初めて垣間見るイランの姿…。
逆に息子(役)アミンくんのエピソードは笑いの連続でこれぞイラン映画の真骨頂! ホンっトに面白かった。傑作。
追悼ってこともあるだろうけど平日でも満席だったし、本当にキアロスタミ監督は偉大でした。あらためて合掌…。

『10話』(2002年・フランス=イラン/カラー/94分)
【監督】アッバス・キアロスタミ( 『そして人生はつづく』 『オリーブの林をぬけて』 『桜桃の味』 『風が吹くまま』 )
【出演】マニア・アクバリ、アミン・マヘル
【5段階評価】★★★★☆