淵どころかこれこそ日本映画のド真ん中に立つ、事件級の傑作! 『淵に立つ』



凄い…凄すぎる。非の打ちどころがないだなんて容易に言うもんじゃないけどホントにないんだもの仕方がない。
こんな淡々としてるのに昂奮しすぎて息切れがしばらく止まらなくなるなんてとんでもない映画を観てしまった…。
ある平凡な家族の前に1人の男が現れたことでそれまでの日常が歪んでゆくというヘタをしたら退屈そうな話が、
こんなストレートに面白い超一級のサスペンスにして、胸を揺さぶられる超緻密な人間ドラマになってしまうとは。
今日びの赤裸々な映画よろしく過激な性愛描写や血がドバドバ流れるような暴力描写があるワケでもないのに、
一つ一つの場面に尋常ならざる緊張感が張り詰め、映画的磁力に溢れて一瞬たりとも目を離すことができない。
まるでカラーなんだけど昔の白黒の北欧映画や、『狩人の夜』 でも観たかと思うような後味悪くも抗い難い余韻。
今年の日本映画は確かに好調だけどここまでの映画的快感に酔える作品はまったく久しぶりという気がする…。

『クリーピー』 の香川照之さえ越える浅野忠信がなにしろ怪演で前半は彼の一挙手一投足に心を掴まれっ放し。
そして一気に時間が経つ後半も彼演じる八坂の“影”が物語を支配するかのような雰囲気で進むのがまた凄い。
ほかの役者も概ね好演ながら筒井真理子はとくによく彼女演じる章江は個人的に“人妻オブ・ザ・イヤー”決定!
とにかく、『クリーピー』 や 『葛城事件』『ヒメアノ~ル』 以上にヘビーな話をある種の寓話性を漂わせながら、
赤裸々な場面をなしに描いて“何にすがればいいのかわからない”この社会の絶望感を表現しているのが偉い。
深田晃司監督の映画は初めて観たがこの人はきっと映画を徹底的に勉強した努力型の天才ではないかと思う。
ギャーギャー叫んでワンワン泣いてそれで“怒○”とか言ってるどこゾの邦画はこれを前に顔を赤らめるがよい!
単に面白い上に“業”について考えさせられるこれをベストに入れないなどもはや考えられないレベルの傑作だ。

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百聞は一見。とにかく観ないと始まらないタイプ。

『淵に立つ』(2016年・日本=フランス/カラー/ヨーロピアン・ヴィスタ/DCP/119分)
【監督】深田晃司
【出演】浅野忠信、筒井真理子、太賀、三浦貴大、篠川桃音、真広佳奈、古舘寛治
【配給】エレファントハウスカルチャヴィル
【5段階評価】★★★★★
【鑑賞劇場】角川シネマ新宿
【鑑賞料金】1,000円(TCG会員ハッピーチューズデー)